第2話 蓮獄あすは

 さて次に紹介するのは、蓮獄家の五女、蓮獄あすは。

 

 僕と同い年の高校二年生で十六歳。在籍している高校も同じ。

 というか、小学校と中学校も同じ。

 家が隣同士で同じ学区なのだから、自宅から一番近い公立の学校をお互い選んだだけなので、当然の帰結ではあるのだけれど、ふと振り返ると、これまであすはとはずっと一緒にいるような気がする。

 登下校もほとんど一緒だったし、学校でもよく行動を共にしていたので、共有してきた時間は他の姉妹と比べても随一だろう。

 世間一般的に定義される幼馴染というカテゴリに最もフィットする存在である。


 正直他の姉妹の上の方の三人とは年齢的にも少し離れているので、より身近な関係性としては、れいあちゃん以降の面々が、よりその側面が近い。

 特に同い年のあすはは尚更だ。

 影響も、感化も、理解も、より深い間柄だろう。


 そんなあすはだけれど、他の姉妹と比べると、幾分か大人しい性格をしている。

 本人は「自分だけ影が薄い気がする」と言っていたこともあったけれど、それは彼女の人間性が真っ当に優れているからだ──なんて表現すると他の皆に失礼だけれど、それが一番伝わりやすい表現な気がする。


 なんというか、アクの強めな蓮獄家の中の一粒の清涼剤──そんな感じだろうか。


 勉学に励み、中学生の頃から部活動で始めたテニスを現在も続けていて、数多い友人に囲まれて、愛想もいいし器量もいい。

 僕だって、学校生活やプライベートにおいて、あすはには世話になりっぱなしだ。

 驕る事なく周囲の人達を尊重し、誰かのために一生懸命頑張れる、蓮獄あすはとはそんな少女だ。

 

 他の姉妹同様に容姿も優れているのだから、勿論同世代の男子からの人気は高い。

 誰にでも分け隔てなく接するあすはに好意を抱く者は数知れず。

 これはあすは自身は気が付いていないかもしれないけれど、彼女はボディタッチがやたらと多い。

 無自覚でやっているようなのでタチが悪い。簡単に人の手を握ったり、頭を撫でたり、その接触はお年頃の男子には、ちょいと刺激が強すぎる。

 猛毒に等しい。

 そんなあすはと幼馴染ということで特段に距離の近かった僕は悪目立ちしていて、周囲の男性陣からは針のむしろであり、反感を買うことも結構あった。

 それが鬱陶しくなり、数年前には学校内であすはを意図的に避けたこともあったけれど、あすははお構いなしで普段通り接してくるし、無駄な徒労で終わった。

 まぁ思春期真っ只中な当時の僕からすれば、特定の女子と過剰に仲が良いというのは気恥ずかしくてたまらなかったのものだが、まぁそれも若さ故仕方がなかった。

 軽率な振る舞いは控えるよう、あすはにはそれとなく伝えてはいるが、人懐っこい本人の気性からして、改善は望めないかもしれない。


 最近はれいあちゃんと同じくお洒落にご執心らしく、薄く茶色がかった胸先辺りまで伸びた髪を、トップを短めに切り整えて襟足を長めにした“ウルフカット”という髪形でここしばらくは通している。

 興味本位で訊いてみたところ、その髪型にしたのは「ウルフという響きがなんかカッコいいから」とのこと。

 実にあすはらしい短絡的な理由だった。

 人柄はウルフというか、コーギーみたいな感じだが。

 

 ここまで蓮獄あすはのことを語ってきたけれど、最後に特筆すべき点として、その抜群のスタイルについて触れておかざるおえない。

 これは避けては通れない。仕方がないことだ。

 彼女は現在、蓮獄家で最も豊満な胸部に成長を遂げている。

 細かく言及するのは避けるけれど、簡潔に記すならば、まさに発育の暴力。

 仮にこの世界観が萌え系四コマ漫画だったなら、枠外の人物紹介欄に『蓮獄家の五女で巨乳』と掲載されていることだろう。

 しかもかつて“持たざる者”であるれいあちゃんの心を大きく掻き乱したあすはのソレは、今現在も成長を続けているようで、まだ可能性を秘めているらしい。

 その成熟の過程を、蓮獄家の面々は温かく見守っている(れいあちゃんを除く)。

 

 あすは本人からすると、肉が付きすぎると体重が増えて気になると、あまり好意的に受け取ってはいないようだけれど、胸部を除けば均整のとれたスタイルなので、その心配は杞憂ではなかろうか。

 しかし本人からすると、甘いものや脂っこいものを控えたりと、陰で努力をしているらしい。

 過度な節制は妹のこるるの逆鱗に触れるだろうから、ほどほどにしておくのが吉。


 次回はそんな、蓮獄家の食卓の主にして孤高の料理番である六女、蓮獄こるるについて語らせてもらうとしよう。


 

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