Epilog
この意識は僕の意識だろうか?
結局のところそれを知る方法なんてのはない。かの有名な「我思う、故に我あり」も存在を保証するだけでその生死を保証してくれる代物ではない。
僕が意識だと思っているもの。例えば、修辞に塗れて繊細ぶったやつをいけ好かないと思うこと、だとかリコーダーの音や夕日にうんざりすること。も誰かから与えられただけのものなのかもしれない。
意識を持っているということ。人間であるということ。意識らしき振る舞いをすること。人間らしき振る舞いをすること。その間に大した差など存在しない。
むしろ意識なんてのはない方がいいのかもしれない。そんなものがあったって苦しいだけなのだから。
「太陽の実在を証明しろ。」
This MaNはそう言ったけれど、それはできやしないし、する必要もない。
けれどもあの時抱いた「嫌だ」という感情。「やめてくれ」という感情は僕の意識から出てきたモノだったように思う。理由なんてない。
◯
さっき僕は「意識の実在なんて知ることができない」と言ったけれど、それは嘘だ。
もし僕が意識を持ったのだとしたら、人間になったのだとしたら、<イデア>が放っておくはずがないのだから。
ほら、足音が聞こえる。
ちり、ちり、と硬い音を立てて神経質そうな一定のリズムで歩く者。かちゃかちゃと忙しなく動くもの。がちり かちり と大股で、いつものことだと言わんばかりの小慣れた憂鬱を表現する者。
それらが合わさって不協和音を奏でている。
今から僕は、生まれて初めて死ぬことができるのかもしれない。
死にっぱなしのゾンビが、生き返って、正しく死ぬ。それは儀式的でもある。
僕は孤独になった。世界で唯一の人間という究極の孤独に。 One of sameの愉悦はもうない。
僕は玄関に落ちているヘッドギアを蹴り払い、錆びついた扉を開けて外に出た。
夜の冷たさが全身を包み込む。
頭の上で偽物の満月が笑っていた。
Do philosophical zombi Dream of .... 谷沢 力 @chikra001
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