第2幕 天使の羽を奪う檻
第14話 帰るべきばしょ
ドアを開けると千理と師匠が目の前にいた
何処にいたの?とか心配したよ!など
想定したと思ったら違った。
「葵ちゃん。何処に行く?」
「ドイツ。シュヴァルツベルグ」
「あの街は何もないよ」
「だからいい。」
今の私は金も武器もないが知恵はある。
あまり行きたくない街ではあるが手段は選んでられない。
「パスポートの手配は私がしよう。私の援助は国内までだ」
「恩に着ます」
「絶対に返しに来いバカ弟子」
師匠は頭を撫でてきた。久しぶりの師匠の手は肌荒れしていた。
「えぇ。その時までくたばんないでください」
「バカ弟子の車椅子くらいは押してやろう」
グリップを掴み師匠は車椅子を押した。
車に乗るため私は立ち上がり、千理が補助をして乗り込んだ。
「大先生。私が運転します。」
「このくらいなんてこともない。天乃原国際空港へ行くぞ」
「千理。シュヴァルツベルグには空港はない。乗継で行く。」
「何時間かかるの?」
「18時間」
「もはや行くまでが旅行だね」
「フリーデンスベルク国際空港まで天乃原国際空港を使う。これが大体12時間。そこからはシュヴァルツベルグは鉄道を使う」
「旅行ではないことは頭に入れろよ?千理」
「ここから天乃原国際空港までは2時間。離陸時間は6時。間に合いそうですか?」
「任せろ」
師匠の運転の元私達は空港へ向かう。
車の窓に雨粒がぽつぽつと音を立てて落ちている。私は窓に白い息を吐き、曇らせながら外を見つめた。雨が窓を打ちつけるたびに、視界はさらににじんでいく。
窓には私の姿が映らない。曇ったガラスには、はっきりと千理だけが映っている。彼女は表情一つ変えずに、私の隣で静かに座っている。その姿はまるで、表の世界に生きる人間のようにクリアだ。
元々戦闘民族であった私に一般人を殺し屋にすることかできるか?了承はしたが私はまだ考える。
彼女は私のもとに来て私に頼み多額の金を払ってでも殺したいと思った男を殺した。
彼女は純粋無垢な女の子。残酷で凄惨な世界に引き込まれてしまったことを、どこかで後悔しているのかもしれない。口では私に恩を返す為というが両親と離れて暮らし無情になり人を殺す事がどれだけ無情にならないといけないか
人を殺す覚悟があるのだろうか?それとも、私が無理にその道へ導こうとしているのか?葵は顔に出さないようにしているが、心の中は千理への不安で胸がいっぱいだ。
彼女を本当にこの世界に引きずり込むべきか?私の頭の中でずっと繰り返し問われた。
突然、いつの間にか寝た千理が私の手を握ってきた。
気づかないが私はものすごい汗をかいていた。千理が大丈夫と言うような事を私にしてきたことで私は優しい子を巻き込む事に罪悪感で胸に痛みが増す。
千理には帰るべき
私が死んでも彼女は帰さないといけないと誓った
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