第13話 一ノ瀬湊翔

「クソッ!!!!ふざけんな!!!あんたと冗談言い合う暇はないんだ。私は時間がないんだ。冗談はその顔だけにしてくれないか?その腐った眼だけにしてくれ!弟は…死んだんだ事故で」


膝立ちになり床に八つ当たりしながら私は訴えた。幽香は服を整えた。私を施術台に乗せ私の問いに答える


「では弟の死体を君は見たのか?」

「それは…」

「見てないだろ。」

「損壊が酷いって」

「それでも出てくるものはあるだろう。遺体安置室に行かなかった君のミスだ。」


幽香は煙草の火をZippoでつけて一息ついてさらに話した


「葵くんはもう成人を迎えるねー。何があったかこの私から教えよう。15年前に葵君は売られたんだよ。ヴィルヘルム・シュタール教授にね。

葵君も知ってるだろ?実験をする為ならば自らの身体を使うイカれた男を。」

「私が殺したけどあのサイコパスがなに?」

「事故は偶然に起きた。それは変わらないが弟はどうだ?意識不明の重体。君を迎えに行こうとした彼は事故を聞き実験を行うにはいいカモがいるとは思わなかい?失敗してもキミが控えてるわけだしね」


煙草を吸い終り灰皿に捨てた


「だが、実験は失敗し目覚めることはなかったんだよ湊翔君は。だから彼は君に実験を移行して失敗を成功しようとしたが、同じ事を2度やってもそれは失敗のまま。実験チームを再編成し私が引継いだんだ。彼は全ての骨、脳をチタン合金とaiに変えた実験だが私は違う。実験内容は君の施したものにしたんだ。葵君のワガママを聞くのを建前にして私は成功確率をあげたいからね。」


私に施した実験に関わるものはヴィルヘルムを含めもうこの世にはいない。私が出かけるとき、お留守番をしているといっていたから…私が我儘なんか言ったせいで3歳の無邪気に笑った湊翔は犠牲になったんだ。

千理、私は悪魔だよ。天使の代償は尊い幼き生命なんだから。


「それでなんで今。この世界から消えて3年経った私が狙われてるんだ。」

「ヴィルヘルム教授を殺したからに他にないだろ」


幽香は私の膝にギブスをし包帯で巻く

これでよしという合図なのか

幽香は膝を軽く叩いた


「少し待ちたまえ。葵君は今からこれを使って生活だ。風呂につかるときは私のお世話になってる入浴剤を使うといい。治療に効果的だからね」


押し入れから出てきたのは車椅子。

ご丁寧に車椅子にはグリップに袋がかかっておりzipロックに封をしてある入浴剤が入っていた。松葉杖も車椅子に掛かって用意されており

名前もひらがなであおい君と書かれ言われなくても分かる。私は歩かない・動かさない事を告げられると察した。


「とりあえず無理に歩かないが治療だ。歩けばその分自分が苦しくなるだけだからね。3ヶ月様子を見よう」

「どこに雲隠れしてその間どうしろと?」

「君がお金を蓄えてるところがべつにあるのをわたしはしっているよ?私は君のことなら知らないことはない。何でも知っているからねー。」

「湊翔に知られてる可能性は?」

「ないとはいいきれないねぇいまのところは。さぁさお迎えが来たみたいだ。君との雑談はほんと楽しい!時間が短く感じるよ」


幽香は私を抱っこし車椅子に乗せた

モニターが机にあり車から師匠と千理が降りたのが映ってた


「礼は言わない。湊翔の事は私だけでどうにかする。」

「君はいつも私の期待を超えてきたからねぇ。天使の皮をかぶった悪魔なのか堕天使なのか見届けよう!その為なら協力ならしようではないか!お金以外ならね」

「実験対象だから?」

「それもあるが私個人の趣味だよ、葵君」

「世話になった」

聞こえるか聞こえないかの声で幽香は言う


「世間一般ではそれはお礼だよ葵君」


あえて無視し私はなれない車椅子を押し開き戸を開けジムを去る。

私は千理と師匠を守る為千理を連れ故郷であるドイツへ行くことにした。

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