第4話 壊れた家族

「ここで止めてください」


閑散とした住宅街で私は車を止めた。

車内にも音が響くくらい強い雨が降ってるのがわかる。一軒家の標識には英語で衣笠と書いてあり彼女の住処なのがわかる。ここが高級住宅街なのは各家庭の車のブランドから分かった

1千万円をポンと出せた理由も分かった


「ここが私の家です。降りていいですよ」


車から降り私はまた濡れる。玄関を開け中に入る。靴箱の上には千理だけでなく妹の奏含めた仲の良い四人家族の写真が飾ってあった。

千理は見られたくないのか急いで写真立てを裏返しにした。


「お邪魔します。」

「汚いけどゆっくりしてください。私についてきてください」


案内されたのはリビング。千理に無関心なのか娘が帰ってきても一言もなく目も合わせようとしない教育を放棄したように思った。

おまけに私みたいなのを家に上げてこの両親には疑問点しかない


「ただいま。パパ ママ 夕飯は食べた?」

「まだ」

「お風呂は」

「入ってる」

「そう。じゃあ夕飯ぱぱっと作るね。一ノ瀬さんごめんなさい!リビングの隣の部屋で待ってて下さい!夕飯一緒に作るね」

「いい。一緒に作ろ?」


この家庭は…家族は壊れてる。次女が死にショックを受けるのは理解できる

健気に励まそうとする千理が哀れに思う

郷に入れば郷に従え。千理の言う感謝と恩返しを私なりに実行に移そう。壊れてるが再生できないわけではない。この衣笠家には少し喝を入れてやろう


「そう?じゃあ野菜切ってもらっていいですか?」

「いいよ。それと一ノ瀬さんじゃない、あおいでいいあとタメ語」

「いいの?」

「感謝と恩返しなんでしょ?」 

「はい…うん!!」 


作ってる明るい声ではなく素から出る明るい声で返事をした。

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