第5話 どんな家族かもう覚えてないよ

「…あはは…なんというか葵ちゃんにも苦手な事があるんだね」


息巻いたわりには無様な結果を晒した。

食卓に並んだものは黒焦げの料理達。

千理にも軽く引かれてる。

いくら感謝と恩返しとはいえども

できない事に挑戦した私の浅はかさを思い知る


「…ごめん。これは捨てるよ後なんか買ってくるよ」

「これはこれで味だからいいよ。捨てるなんて勿体無いよ!葵ちゃんが私の為に苦手な事をしてまで作ったんだよ?食べない選択肢なんてないよ」

「…ほんとにごめん。私も食べるけどご両親達は」

「カップラーメンかな。こっちに来て食べよ?」


カップラーメンをリビングに出し、

食卓の料理達をリビングの隣の部屋に移動させ私達はご飯を食べる

その部屋には仏壇があり、写真には笑顔で茶髪のショートカットの女の子がいた。


「後ろの女の子が奏ちゃん?」

「そう。生きてたら15歳。お姉ちゃんと一緒の学校に行くーが口癖だった。私も楽しみだったんだけどね」

「失礼。」


私は食を終え席から立った。

目的である線香を上げる為だ


「ありがとう。奏も喜んでるよ」

「そう。」

「葵ちゃんは家族はいるの?」

「いない。」

「え?」

「事故で死んだから」

「ご…ごめんなさい。私知らなくて」

「別に…気にしてない。どんな家族かもう覚えてないし」

「兄妹は?」

「弟が1人。顔は忘れて覚えてないけどいたよ。だから生きてる家族がいるなら…生き残ったなら大切にしてほしい。大人も子供も関係なく。たとえ壊れててもね」

「その後は」

「色々。銃を1丁簡単に手に入れるくらいは汚い事をしてきたとだけ言わして」

「そうだよね。うん。」


万が一にそなえ念の為スマホの連絡ツールの交換を私は提案をした


「忘れてたけどさこれlineのID。何かあってもいいように登録しといて。あと電話番号も一応渡しておく」

「いいの?」

「いいよ。このくらい」

「ありがと!葵ちゃん。」


私達は交換しあい早速千理からスタンプが来た

可愛らしい狸のスタンプだった。


「狸好きなの?」

「大好き」

「千理とは正反対」

「そうなの?」

「基本狸は臆病な性格だから千理とは違う」

「物知りだね葵ちゃん」

「伊達にあの仕事してないよ」

「だね。じゃあ私もお風呂行ってくるね」

「いってらっしゃい」


千理はお風呂に行ったので

その間に政治情勢、事件事故のニュースを見る私の行方不明の記事が動画付きであった。

再生するとこの前のクソガキがお涙頂戴子役以上の涙を流しながら

「お姉ちゃん帰って来て」と叫ぶ動画だった 顔写真まで付けられ全国的に私の顔は広まった。私は昼間も夜中も外が出れないと悟った

後ろから声をかけられた


「これが弟さん?」

「だと思う?」

「だよね。」

「そう言えばどうやって探したの?」

「感と山を張っただけだよ。」

「それだけで見つかるもん?」

「私は運だけはいいから」

「運…ねぇ」

「あ!後お風呂空いたから入って入って」

「寝間着は大丈夫だと思うけど下着はごめん。分からなくて」

「わかる方が怖いから気にしないで」

「ボディータオルとバスタオルは脱衣所にあるから使ってね。シャンプーは水色リンスはピンク色ボディーソープは白色だから適当に使ってね」

「何から何までありがとね」

「だってもう友達でしょ?」

「そう?」

「そうだよ!」


脱衣所にはボディータオルとバスタオル、寝間着などキレイに畳んでおり

衣服入れのカゴも分かるとこにあった。

私は全ての服を脱ぎカゴに入れ浴室に入る。

浴室はまだ暖かく私を包み込み歓迎するかのように感じた。風呂給湯器から自動音声で

「お風呂が湧きました」と流れ

沸き直しまで行い私をもてなしてくれた

体と髪を洗い流しお風呂に浸かる

お風呂には入浴剤が入っており

バスタブ全体がラベンダー色に包まれた

その昔、誰から聞いたのか分からないけど

お風呂は命の洗濯というのは分からなくもない

さてここで整理を一度しておいた


1つ あのガキは私の過去を知っている

2つ 警察にまで手を回せるボンボン若しくは裏の世界のもの。もしくは私と似たりよったりのもの

3つ 騒ぎが広がりすぎている。一般人の千理を巻き込まないようにすること


3番目はすでに巻き込んだ以上無理。

私を匿ってくれた以上千理は私と同じ闇へ自ら飛び込んだことと道理である。

帰る道を残すというのが私の役目になるだろう

考え込んでたら目の前に千理がいた。


「葵ちゃん起きてる?寝てない?」

「近い」

「起きててよかった!もぅ駄目だよ?私一人だけじゃないんだから鍵かけないと不用心だよ?湯あたりするから出よ?」

「親は?」

「もう寝てるから」

「そう。」

「出よ!」


千理のあとに続いてお風呂に出た。

バスタオルで体を拭き寝間着を着る


「パンツ…貸して」

「え?」

「だから!パンツ貸して!上はサイズ違うかもしれないけど流石に下を履かないのは心地悪いから」

「そ~だよね。忘れてた!!ごめんね。後出る前に髪を乾かすよ!そのままだと風邪ひくから」


脱衣所のコンセントにドライヤーを刺しクシも使い乾かす。


「女の子なんだからこのくらいしないとね!」

「普通なの?」

「そーだよ!!今までしてこなかったの?」

「うん。したところで私なんて意味ないし」

「意味ないことなんてないよ!だって葵ちゃん可愛いもん。私が抱きしめたいって思うくらい可愛いよ!」

「か!かわいい!?何言ってんのあんた」


思わず声が裏返る。可愛いなんて17年言われたことないし自分のビジュに自信なんてないからだ


「そ…そんな私なんて可愛くなぃ…」


駄目だ、照れるなバカ。相手は女だ落ち着け私


「えぇー??可愛いのにぃー。猫みたいな目とか」

「ツリ目なだけ」

「手入れはしてないけど髪はつやつやしてるしいい匂いだし」

「親譲りなだけ」

「何より御人形さんのように抱きしめたくなるボディーだし」

「ちっこいって言いたいの?」

「あと胸も私よりあるし、後私を天使のように助けてくれたもん」

「胸をさり気なく見るな。後千理が私を見つけただけ。私はただ協力しただけ」

「もぅ!!!私の言ったことを捻くれて返さないでよ」

「怒った。」

「あぁー揶揄ってたの?私のことーもぅ!!!」

「面白いね千理は。ありがとう乾いたし後は自分でやるよ」

「しっかり乾かすんだよ!」

「はーい分かったよ」


入浴剤のおかげもあり、膝まではみられなくてよかった。この手術痕は誰にも見られたくはない。私の呪いだから

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