第3話 誰にも頼んでない
「クソッ!!!全然見つからねぇよ。坊っちゃんの我儘にもつきあってらんね。俺は降りる」
「馬鹿!!!!何言ってんだ。殺されるぞ。」
「殺す?あぁ上等だ。どのみち見つかったところであのワルキューレだ。生きてる保証なんてねぇしな!やめだやめ」
大雨が降る中公園で私は外で休む。使ったバイクは色を変えナンバーも変えた。一度見られた以上バレるリスクは避けたい。
スマホをなるべく使わないようにしたのでどれくらいだったか私は分からない。雨宿りと休憩を兼ね遊具で休んでたらクソガキがまだ探していた。
私はもうあの家に帰れない。
金と武器を揃えた家に行きたいところだが。
おまけに警察にまで手を回し警察官まで私を探す始末。夜は交通規制もかけ針の筵だ。
この騒動は世間一般にまで周知される羽目になった。
休憩を終え移動しようとしたら後ろから
バキッと音がした。
振り向けば過去の依頼人がそこにいた。
「お前は」
「しっ。静かに。今声を出したら見つかります。」
女は私の口に指を当てた
「じゃあ俺も降りる。命かけてまで人の捜索とか俺も割に合わないからな」
「おっ!まじか!!麻雀でも打ちに行きますか」
男たちが車で走り去るまで私は遊具の中でじっとしていた。
それを確認しこの前の依頼人が話し始めた
「貴方がテレビで放送されたとき、今度は私の番だって思った」
「誰も頼んでない」
「頼んでなくてもやるよ。それが感謝と恩返しじゃないかな」
「感謝と恩返し…ねぇ」
深いため息をつきポケットにしまってあった電子タバコを出し吸う
「それはご立派だと思うがお前忘れたか?あの時約束しただろ。次会ったら」
「殺せる状況だと思います?今貴方は追われてる身。見つかったら即殺されてもおかしくないと思いますよ。お相手さんは銃持っていたし」
この女の言ってることは間違ってはない。
さっきも居場所を教えればいいものをそれをしなかった。私に対する感謝とやらからでた行動だから
「私が匿いますから行きましょう。」
手を差し出されそれを掴んではいけないと頭では分かっていたが私は掴んでしまった。
駐車場まで移動しいかにもな自家用車に私も乗った。運転しろと言われたので私は運転席側に座った。
「私は衣笠。
「改めて一ノ瀬。一ノ瀬葵。17歳敬語は使わなくていい」
「一ノ瀬さん私より1個下なんですね!名前も分かってこれでもう私達友達ですね!」
ほんとは早生まれだから同級生だ、今後揉めるのはダルいので説明を一応しとく。
あと友達の基準が低すぎだなとは思った
「誕生日が早生まれなだけ。だから衣笠さんとは同級生」
「何月?」
「3月」
「何日?」
「3日。3月3日」
「えぇ!ひな祭りが誕生日って可愛い。羨ましいな。私なんて2月24日だよー。私と誕生日近いね!私の誕生日なんて何もないから一ノ瀬さんがすごく可愛く感じるよー」
確かにぱっと出てくるのは寺内正毅が殺された2.24事件。可愛いとは違う。なら別の角度に話を持っていく
「アマリリス」
「え?」
「だから誕生花はアマリリス」
「すごーい。誕生花まで知ってるって博識だねー!意味は意味は?」
食いつきがすごいな衣笠千理は。
「意味はおしゃべり」
「ええー。そんなことないよー。お父さんとお母さんのほうがおしゃべりだったよー。いつも近所で笑いものにされたもん。」
元気な声が低くなる。
そう【だった】過去形にされるということは御両親はまだ妹さんのことを引きづっているのが伺える。
千理の中では1つ区切りをつけられていたとしても御両親は遺恨があると思った。
自分の腹を痛めて産んだ娘が性的暴行され口封じに殺され犯人はあくまで行方不明だ。その心の傷は私にも測れない。
「これから世話になるし妹さんに挨拶させてくれ」
「え?」
「お姉さんは面白いし強い人って妹さんにも教えてあげないと。名前は?」
「奏。奏者の奏でかなで」
「かなでちゃんか。いい名前だ。」
「…ありがとう…ございます。」
鼻をすすり嗚咽が車内に響く。
黙ってポケットのハンカチを渡し私は目的地まで運転した
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