夢喰い人

夢喰い人

　お前さんは夢を喰える力を知っているだろうか。何、悪夢を見るからそんな力があるなら喰ってほしいだと？　それはやめておいたほうがいい。その理由はな＿＿。

　とある男が悪夢に苦しんでいた。もうこんな夢ばかり見たくないと彼は願った。夢を喰べる聖獣たるバクに祈った。

「もう嫌だ！　いつもいつも俺ばかり悪夢を見る。眠れない。眠れない！　寝るのが怖い。俺は眠りたいんだ！」

　悲痛な声は、祈りは届いた。そして男は力を得た。夢を喰らう力。

　だが、その力を使った男は後悔した。悪夢もないが、良い夢もない。真っ暗で、独りぼっち。しかも力を止めることはできない。導き出される答えは唯一つ。

　もう二度と、夢を見ることはできない。

　最初はそれで良かったが、だんだん寝ることが辛くなってきていた。眠りが浅いのか深いのかまったくわからないが、恐らくは浅いのだろう。寝不足なのだと思う。くっきりとしたクマはもう取れない。質の良い眠りは二度とない。

　なぜそんなことを知っているか？　その答えは簡単だ。お前さんも薄々勘づいてるんじゃないのかい？

　だってこれは、俺の話だからな。