第4話 朝・上映前のトーストセット

 朝の喫茶店。

 髙橋大輝の前に並べられたのは、トーストセット。

 バターが溶けている厚切りのトーストに、サラダとスクランブルエッグとソーセージがワンプレートになっている。

 ドリンクは紅茶を選んだ。

 向かい合う、大学の同期、川口莉子の前には大輝のそれよりちょっとだけお高いフレンチトーストセット。

 フレンチトーストに、ヨーグルトとフルーツの盛り合わせ。

 ドリンクはグレープフルーツジュースだ。


「なかなかいい値段がしたなぁ」


 手を合わせながら、思わず大輝は声を漏らした。


「その分、量もあるでしょ」

「うん。上映中に眠くならないかが、心配になってきてる」


 トーストをちぎって、口に入れる。

 バタートーストは思った以上にふっくらしていて、驚いた。

 続いて、スクランブルエッグとソーセージ。

 卵のふんわり感と、シャキッとしたソーセージの噛み応えがいい。


「豪快に食べるわねぇ」


 一方、莉子の食事はゆっくりだ。

 フレンチトーストと、フルーツ、ヨーグルトがバランス良く減っていく。


「ご飯は美味しく食べるに限るよ。というか、川口さんのも結構量あるみたいに見えるけど」


 大輝が指摘する。

 大輝のモーニングと莉子のモーニング、ボリューム的には変わりないように見えた。


「こっちはフルーツとヨーグルトで嵩が増えてるから、見かけよりは軽いのよ。何、欲しいの?」

「いや、さすがにそれは遠慮しとく。これで充分だし、足りなきゃ昼にまた食べればいいし」


 フルーツが欲しいかと言われれば欲しいが、さすがにそれは卑しいだろうと大輝は断った。

 そう、また後で食べればいいのだ。

 ほぼほぼモーニングを食べ終わりながら、大輝はそう結論づけた。


「学食で」

「安くて美味しいからね」


 莉子の言葉に、大輝は頷いた。

 特にカツ丼。

 学食のおばちゃんの。出す速度もすごいのだ。


「そして次の講義で寝る」

「そうしたいところなんだけどなー」


 今日の講義、全部おっかねえ人ばかりなのだ。

 などと考えていると、莉子もいつの間にか食べ終わり、グレープフルーツジュースを飲み干していた。


「そろそろ時間ね」

「少し早くない?」


 大輝も、紅茶を飲み干した。

 ここ、紅茶も美味しいな、と大輝は思った。

 今度来た時は、ミルクティーを注文してみよう。


「私、予告も楽しむ派なのよ。移動時間を計算に入れると今ぐらいから映画館に向かうので正解」

「なるほど。勉強になるなあ」


 バッグを肩に掛けてレジに向かう莉子の後を、大輝は追った。

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