第2話 兄の元カノと弟の元カノ

 ◇翌日 PM4:30


 緊張しながら自室で一人時間になるのを待っていた。


 すると、玄関の扉が開く音がする。


 あれ?なんで?と思っていたが、すぐに弟と弟の彼女と思われる声が聞こえて、少しだけ安堵する。

いや...本当に意味の分からないことになった...。

確かに...鈴野さんはすごくかわいいし、いい人だっていうのは十分知っている。


 けど、ついこの前まで兄貴の彼女だった人だぞ...?

そんな目で見れるはずもない...。

はぁ...何でこんなことになった...。


 そうして、約束の時間の4:45になった。


 すると、『ピーンポーン』という音が鳴る。


 意を決して深呼吸してから玄関に向かう。


 そのまま、玄関を開けるとそこには少しだけ頬を赤くしている鈴野さんが立っていた。


「...あ...どうも...」


「こんにちは...。話は...聞いてるよね...?」と、首をかしげながら聞かれる。


「...はい」


 そのまま家に招き入れて、一緒に俺の部屋に入る。


 そうして、二人きりの時間が始まった...のだが...。


 無言の鈴野さん。

こういうときは俺のほうから何か話すべきなのだろうか...。


「えっと...その...」と、勢いよく走りだしたものの、完全に見切り発車であり、何を話していいかわからず困る。


「え、映画...見ますか?」


「...うん」


「ジャンルは...何がいいですか?」


「...なんでもいいよ?大志くんが...見たいもので」


「わ、わっかりましたぁ...」


 そのまま、適当にアクション系の作品を選び、再生する。


 気まずい空気であるので、映画であればしゃべる必要もないし、アクションであれば静かになることもないので...。


 そう思って、適当に最近買った映画を再生すると...。

映画が始まって一発目に夜の営みのシーンが始まる。


「あっ!いや!これは意図的にこういうのを再生したわけではなく!」と、慌てて説明するも、その説明の裏で『あっん!//あん!!//』という声が響く。


「ああああああ...」と、少しだけ早送りをすると、「ふふ...」という笑い声が聞こえる。


「あの...」


「ごめんね。いや...慌ててる姿がかわいくて...。ごめんね...黙っちゃって...。私も緊張してたけど...今ので少し解れたよ」と、優しい笑顔でそう言ってくれる。


 そうして、二人で並んで映画を見る。


 なんだか話せそうな雰囲気だったので、「えっと...この俳優は最近向こうで人気の人で...」と、補足情報をお伝えしながら映画を見る。


「そうなんだ。映画詳しいんだね」


「はい!映画好きなので!」と、そこから調子に乗っていらない映画の豆知識などをペラペラと話してしまう。


「それでこの女優は...」と、話している途中でまたいつも通り暴走していることに気づき、「...ご、ごめんなさい。映画見てるのにいっぱいしゃべってしまって...」と反省する。


「ん?いいよ?私は映画より...圭人くんが話している姿を見たいから」


「...//」


 すると、そのタイミングで隣の部屋にいた弟とその彼女の声が漏れてくる。


 壁はそんなに薄いわけではないので、きっと結構大きな声で何かを言い合ってるようだった。


「...何かあったのかしら?」


「...どうですかね?」


 そうして、更に少し経った頃、扉がノックされる。


「...え?」


「兄ちゃん...。ちょっといい?」と、扉越しに弟の声が聞こえてくる。


「...ん?あぁ...えっと...今は...」


「私のことならいいよ。気にしなくて」


 そういわれたのでいったん映画を止めて、部屋を出る。


 すると、弟と弟の彼女がリビングの椅子に腰かけていた。


 弟の彼女。名前は【堰代せきしろ 莉理りり】。

弟と同じ年で現在高校1年生。つまりは俺の二つ下である。

スポーツの強豪校である、杉並高校に通っており、1年生でありながら既にバスケ部のエース級の活躍をしているとか。



【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093084744938870


 見た目はスポーツ少女らしく短髪で少し派手な髪色をしている。

あまり話したことはないが、ぱっと見の印象は天真爛漫で可愛らしい女の子である。


 弟も同じく杉並高校であり、サッカー部であり、1年でレギュラーであり全国にも出場している。

勉強はあまり得意ではないが、かっこいいし、友達が多く、陽キャかつ性格がいいという兄の俺も鼻が高い限りである。


 どちらもスポーツが得意であり、性格的にも見た目的にも最高にマッチしている二人なのだが...。

何やら重苦しい空気が流れていた。


「...えっと...何?」


「...ちょっと...その...なんて言っていいのかわからないんだけど...その...俺たち別れたんだよね。それで...その...その理由が...」


 すると、堰代さんのほうから切り出す。


「...私...お兄さんのことが好きなんです」


「...は?」


 その瞬間、俺の部屋の扉が開き、シーラさんが出てくる。


「え?なんで兄貴の彼女が...」


 修羅場。まさにその言葉通りの状況に陥るのだった。

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