泣かない2人
しばらくの間教室はお葬式のような静けさがまとわりつき愛生は触れてはいけない存在のようになった。
だが2ヶ月も経つと教室は何事もなかったかのように賑やかな雰囲気が戻り笑顔も増えた。そう僕以外は。
僕はいつまで経っても愛生に会いたくて仕方なかった。愛生があの日言った「学校行った時全部話すから。」この言葉だけを信じて自分から会いにいくことはしなかったしメッセージも送らなかった。もしかすると愛生からすれば見放された、薄情なやつ、だとかそんな印象を受けさせたかもしれないとも思ったが愛生の言葉を信じない方が薄情だと思い会いには行かなかった。
今日もいつも通りの学校を終え愛生のことを考えて歩いていた。
「ナツ」
たった二文字でわかった。この優しくて暖かい声は、、、
「愛生」
髪は長く伸び目には気力がなくなっていた。頬もこけていてその様はまるであの日の僕みたいだった。
2ヶ月前の無邪気な笑顔は消えグラデーションがかった唇は青紫色に変色し乾燥していた。
「僕学校に行くよ。明日。その時聞いてくれる?」
活気のない愛生の声を聞いて僕は涙が溢れそうだった。溢れそうな涙をグッと堪えて
「待ってるから。ちゃんと聞くよ。でもその前に顔どうにかしないとじゃない?」
なんて明るく振る舞ってみた。
「家、こいよ。」
愛生は静かに頷き家に来た。ご飯を食べさせ髪を切り、お風呂に入れて世間話をしてみた。この2ヶ月間の話も聞いた。毎日のように警察が来た話。s愛生の表情は特に変わることはなかったがお世話しただけあって見た目は少しだけ変わった。
「もう20:30だ。愛生家に帰ろう。送っていくよ。」
外は既に日は落ち暗くなっていた。今の愛生を1人で返すのは危険だと思い送ると提案したが、家に泊めた方が良かったかもしれない。
「わかった。ありがとう。」
案外あっさり愛生に受け入れられて少し寂しさも感じた。愛生の家までの道のりは静かで木々の音がうるさく聞こえるほどだった。
「また明日ね。迎え来ようか?」
枯れきった愛生の家の前で問いてみた。
「大丈夫。いつも通りにして欲しい。ナツ。本当にありがとう。」
静かに頷き2人は解散して僕は家に帰った。この夜は妙にむずむずして眠れなかった。この気持ちが収まらないから前髪を切ってみた。久しぶりに目が前髪で隠れていない状態に少し違和感を覚えながら眠った。
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