共通点
「――で、ここいらで、どうやら盗難が相次いでいるようだと」
事務所に戻り、魚沼は虎松に昼の出来事を話した。
「そう。でも盗まれた当の本人は、何が盗まれたのか思い出せないようなの」
「それって単に物忘れとかじゃないですか?」
「果物屋の人はまだ40代くらいの人だったわよ?物忘れにしては早すぎない?」
虎松はうーん、と腕を組みながら天井を見つめた。
「あっ、でも防犯カメラがあるじゃないですか!お店なら犯行現場を確認出来ますよね?」
思いついたように言う虎松に対し魚沼は残念そうな顔をした。
「それがね――」
店や街頭にあった防犯カメラは砂嵐状態で確認出来なかったようだ。
「マジかよ……」
とりあえず盗難として、それぞれの被害内容を整理する必要がある。
「ええと、それで実際に交番に相談があったのは――」
「果物屋と花屋、あと車が盗まれたって人が……」
「車なんてナンバーで探せるんじゃないんですか?」
「ナンバーだけでなくて、どんな種の何色のどれくらいの大きさか、とかが忘れちゃったみたいね」
「なるほど。でも、確実に盗まれたと本人たちは言っていて、事実困ってはいるんですよね?」
「そうね……」
「名前と果物と花と車……」
虎松は白紙にペンで書いていく。
共通点、共通点……。けれど、そう書き出したところで共通点はなかなか導き出せない。
「あ、そうそう。果物と花はごっそり無くなったみたいよ」
思い出したように魚沼は言った。
「ごっそり??」
量が関係している?しかし、名前に量は関係ない。大きさもやはり名前には関係ない。水越の名前の件とその他の盗難は違うのだろうか。
「ちなみに盗難が発覚したのは2週間くらい前から」
魚沼の話では、最初に盗まれたのが花、次が車、そして果物は今日ということだった。
水越の名前は車のあとに盗まれている。
いずれも時間帯はバラバラで、日中だったり、夕方だったりしている。早朝や夜といった人気のいない時間帯でもない。
「あっ」
虎松は思い立った。
「えっ、なんか分かった?」
「魚姐さん、被害に遭ったのはここら辺って言ってましたよね?」
「うん、そう、ここの近所。ささやか通りの果物屋と花屋。盗まれた車も通りの駐車場に停めてあったみたい」
「で、水越ちゃんもここを通る中学生」
「犯人はここの通りをよく利用する人なんじゃないですか?」
「そうか……、確かにそうね。犯人はここの通りにあるものをターゲットにしているのかも」
「ただ――」
魚沼は言いかけてやめた。しかし、虎松は魚沼の言いたいことが分かった。ここの通りは老若男女多くの人が利用する。犯人をさらに絞るのは中々難しい。
「昼夜バラバラだと複数人の犯行の可能性もあるわね」
「複数人か……。これは厄介なことになりそうですね」
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