依頼内容

「えっとー……」


 両膝をきちんと揃えてソファーに座る少女を前に、虎松は戸惑った。

 依頼内容はなんだろうか。何を調べるのだろうか。親の不倫、警察に言えない類の犯罪、それともパパ活絡みか。

 学則通りの格好をした、いかにも純粋そうな少女を目にして、そんな考えが虎松の頭の中をぐるぐると駆け巡る。


「あなた、ここがどんな場所が分かって来たのよね?」

 どう質問していいか分からず悶々としている虎松を横目に魚沼が切り出した。

 魚沼の問いに少女はコクンと頷く。


「探しもの……。いや、人を探している?」

 少女は首を振る。

「ご両親の仲が最近怪しい、とか?」

 またも少女は首を横に振る。

「ご両親のどちらかが失踪した……!」

「違います」

 今度はキッパリと声を出して答えた。

「じゃあ友達が失踪した?」

「それも違います」

「じゃあ一体――」

「何でも……」

「ん?」

「悩み事、何でもお受けいたします……」

「えっと??」

「魚姐さん、外の看板ですよ」

 虎松がさとすように言う。

「あっ、あぁ」

 魚沼はポンと手を叩いた。

「ここは何でも引き受けてくれるんですよね……?」

「えぇ、まぁ、大概は」

「ならお願いです!」

 少女は目の前にあるテーブルを両手で強く叩いて言った。


「私の名前、取り返してください!!」

 

「「はあ??」」

魚沼と虎松は同時に声を上げた。

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