花がらつみ

或る日

「もう辛いの。ねぇエミカ。どうか私を許して…。私はもう壊れてしまったの。あなたとの幸せを願ったあの時にはもう戻ることができないの。」

「やめて、そんなこと言わないで。あの時には戻れないかもしれないけど、未来は切り開けるのよ。」

「ごめんね。」

フェンスを飛び越えビルの屋上から飛び降りた。だが、エミカがその手を掴みアイムはその手にぶら下がっている。

「ねぇ、手を離して。私を楽にさせて。私はあなたみたいな社交性もないしなんの取り柄もないの!!未来なんてとても考えられない…」

「バカじゃないの?私はあなたに惚れたのよ!何にも取り柄がないなんて言わないで!」

「ありがと…でもね、もういいの。十分幸せだった。生まれ変わったりまた二人で、普通の恋をしようね。」

「いやよ。あなたがいない世界なんて考えられない。あなたがどうしてもって言うなら、わたしもいく!あなた一人なんて許さない」

「なんで?!あなたには生きてちゃんとした恋をして欲しいの。」

「いやよ。ちゃんとって?普通って何よ?私たちにとっての普通は普通じゃないの?普通だと思ったらだめなの?」

「だめ。もう離して…。」

エミカはギュッとアイムのことを近寄せ、アイムの頬の涙を拭き取りアイムを上へ投げた。

上へ投げられたアイムはビルの屋上に着地。アイムを上へ投げた反動でエミカがビルから落ちた。

「いやゃゃぁぁ」

アイムの声が春の青空いっぱいに響いてるのを聴きエミカは安心したかのように、寂しくなったかのように優しく切なく微笑み

「アイム、愛してる!あなたをわすれない…。」

それと同時に地面に固いものが落ちる鈍い音がした。

急いで下へ降りたアイムはぐしゃぐしゃになったエミカの優しく微笑んでいる顔を見て涙を流しながら力一杯抱きしめた。狭いこのまちでアイムの声。小さいが皆の心に響き渡るような儚い声が響き渡っていた。


愛してるよ、エミカ…。


この世界は時に息苦しい。

でもね、生きていたらのびのびと羽を伸ばして暮らせるような素敵な場所をきっと見つけることができると思うの。だからね。君には生きてほしいの。


この世界は騒がしすぎる。他人のことなんて見ないで、聞かないで、構わないで、自分たちだけの世界でいい。幸せを手放さずに前へ進め。

エミカとアイムのあのビルの下には白や黄色のチューリップが咲いていた。


そして、君と私の世界が終わった。

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あさがお @nikoranpo

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