ドライフラワー
それからたくさんの月日が流れ、私たちの関係は親、親戚、近所などに知れ渡った。
周りの目はどんどん汚れものを見るようになり街を歩くだけ、実家に帰るだけで視線が痛い。近所の人には、嫌がらせをされ、私たちにはこの家しか居場所がない。
色鮮やかで美しかった世界は、モノクロで美しさは彼女しかない。
まだ、この世界が色鮮やかだった頃美しさを懐かしみながら、お気に入りだったこの丘で、一人壊れた街を眺めていた。
この世界がおかしいのか、私たちが間違っているのか…
モノクロのこの世界が終わらないから。私たちは、この世界に閉じ込められている。
白と黒で何の美しさを感じないこの世界の中でたった一人。私を温めて、色付けてくれる。月も、星も、太陽でさえも私たちを陰とするこの世界で唯一の光。
「ねぇ、明日も一緒に居てくれる?私が耐えられなくなってもそばにいてくれる?」
「ええ、もちろんよ。」
「私が、近くにいなくてもあなたのその美しい歌声を響かせてくれる?」
彼女はその問いに答えなかった。
私たちの世界が壊れたから、イベントごと、お祝い事をしなくなった。私たちの季節はあってもないようなものだ。
灰色で色彩のないこの世界でただ生きづらいだけのこの地球。
私は、心がどんどん壊れていった。君は私と一緒でどこかおかしくなっていた。でも、お互いそんなことに気づかない。気づかないでいた。
この暗闇が明けないから、私は君の声しか救いがないから、どんどんあなたに溺れて沈んでゆく。君もまた私と同じ。
「私たちが私たちでなくなってる。本当に怖い。でもね、貴方がいるから。貴方の声が聞こえるから。私はまだ…。」
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