プロローグ 3

「よし、さっそく行こうか、祐也。武器は持ってるか?」


 「ああ、うん、あるよ」


 


 背中に抱えていたバッグをゆすって見せる。


 


 「それじゃあ行こうドラゴン退治!」


 「「「おー」」」


 「おー」


 


 やばい、ちょっとずれた。


 


 


 


 気を取り直して向かうのは学校の近くにあるダンジョンの隠し部屋だという。


 そこで見つけた卵がドラゴン種のものではないかと結論づけた彼らとともに俺はダンジョン第一階層の隠し部屋に向かっていた。


 


 どうにも彼、的場君のハーレムメンバーはその主を信頼しているらしく彼の決定には異を唱えないような集団らしい。


 曰く、


 


 「「「的場君の言ったことで、間違いがあったことなんてないもん!」」」


 


 だそうだ。


 その的場君が間違ったから俺が時間遡行するはめになったんですけどね、お客さん。


 そんなことを口にするわけにもいかないので、取り合えず話を合わせておいた。


 


 「なーなー伊藤って、裏口入学なのか?」


 


 じょ、女子に話しかけられた!


 じゃなかった、どうやら俺は疑われているらしい、赤髪の少女、藤堂が口にしたのは俺の噂のことだろう。


 実際、基礎異能すら使えないのに異能学園の入学試験に合格なんてできるわけがない、というのは理にかなった考えである。


 


 「俺の異能の……直感は割といろんなことがわかるんだよ、そのおかげだな」


 「ふーん、そういうもんか」


 


 いまいち納得できないといった様子の藤堂はじろじろと無遠慮に俺を観察していた。


 


 「ちょっと。そんなこと言っちゃダメだよゆーちゃん」


 


 亜麻色の髪の少女、山野が藤堂をいさめる。


 ゆーちゃん、というのは藤堂のニックネームだろうか?


 だめだ……下の名前がわからんから予想の立てようがない。


 


 「役に立つなら何でもいい……」


 


 青髪の少女、リースが口にしたのはどこまでも冷たい一言だった


 


 「おいおい、そんなこと言うなって祐也は俺たちの仲間なんだぞ」


 


 さわやかに言って見せた的場君がきらりと光る歯を見せつけて言った。


 


 


 そんなこんなで俺たちは隠し部屋の前に到達した、安全だったダンジョン一階層に比べてここからはドラゴンの、モンスターの王の領域。


 だれかがごくりと生唾を飲み込んだ音が聞こえた。


 


 「よし、祐也、まずはお手並み拝見と行こうか。この扉の先は安全か?」


 


 直観の異能を持つものは多くが盗賊職に就く。


 その理由はまさに、危険を直観で察知できるからだ。


 だからこそ彼らはダンジョンのトラップを排除したり、スニーキングミッションに抜擢されるのだ、


 だが残念ながら俺の異能ではそんなことわかるはずもない、なにせまだ『一回目』なのだから。


 


 だからこそこう口にするのだ。


 


 「ああ、大丈夫だ。危険は感じない。まだドラゴンは卵からかえってないみたいだ」


 


 わざとらしくならないように丁寧に言葉を選べば、ほら。


 


 「よし、それじゃあいくぞ!」


 


 的場君が気合を入れながら隠し部屋の扉を開き、そして……


 


 


 


 俺たちは一人残らず灼熱の炎に包まれた。

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