春刹-嵐風

 「春なんて大嫌い」

 私はそう言った。

 「え~私は好きだよ。春」

 「…」

 「だって、暖かいし風気持ちいじゃん♪」

 突拍子もなく、私はいつもサボっている屋上になぜか知らない女が居た。

 「アンタ誰よ」

 「ん?私はヨモギ」

 そう言うと、

 「君さ~、な~んでそんなフェンスの外に居るの?危ないからさ、こっちおいでよ♪」

 「私、春嫌いなの。花粉症とか体調悪くなったりとか。ナニ,生ぬるすぎて風が…嫌。」

 「ふ~ん~♪そう言うこと。なら、何でそこでズット立ってたのかな?よっとい」

 「ちょっ、アンタ死ぬ気!?」

 「それ、貴方にも同じこと言えると思うよ。とりあえずさ…学校抜け出そうか♪」

 「え?ちょっ、ま。痛い。」

 「(笑)スウィーツ食べに行こ~♪」

 「ッハ!?」

 それが、ヨモギとの出会い

 

 そして、ある日

 「ねぇねぇ、何で春嫌いだっけ?」

 「それは…私は」

 「ん~、そうじゃなくてさ。それ、逃げる理由探してるだけだと思うんだよ。本当は嫌いじゃ無いんじゃない?」

 「…」

 「黙りか…残念残念~♪サテー、こちカモン~」

 ???

 「これから、花火も紅葉狩りも修学旅行も雪遊びもできる。そうしたら、春また来るじゃん。お花見しようよ」

 「んぇ?」

 「私の我が儘、付き合ってこれるかな~♪」

 「それ、誰に言ってると思うの?あんま調子乗んなよ。私が付き合えなかったことって有るか?」

 「ん~♪覚えてない✨」

 「「(笑)」」

 「じゃあさ、今度有っち行こう」

 「え?待ってよー」

 それからヨモギとは沢山思い出を作った

 学生らしいことを沢山

 先生に注意されることも多くは成ったけど

 まぁ、少し人生が明るくなった気がした


 「ねぇ、ヨモギ。アンタさ…」

 「ん?どしたー?」

 「何で春好きなの?」

 「私は…綺麗に咲く花が大好きなんだ。でも桜が散るのはちょっと寂しいかな」

 少しだけ寂しげな表情をしたヨモギは

 「さっさ~、じゃあ次行くか。あ!ほらー!!あそこにショッピングモールだー!!行こう~♪」

 なんて呑気なことを行ってきて


 そして、春になりました

 ヨモギの言っていた暖かい日差しと風

 私を包んだみたい

 今日もいつものようにヨモギを待っていると、ふとあの時のようにフェンスの外に出たくなった。

 そして、下を見てみると…

 「ナニ,アレ…」

 そこには私の大嫌いな奴らが居て

 「ねぇ、なんでヨモギが」

 彼女は地面に居た。

 正確には、地面に倒れていた。

 「ねぇ、私にさ…言ったよねヨモギ。お花見しようよって春好きにさせるって。なのに、なんで…」

 全てにおいての虚無と脱力感

 あぁ、まただ。あの時とまるで変わらない。

 「ヨモギ。ヨモギのことは大好きだよ。でも、私にはさ…。やっぱり私、春なんて大嫌い。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る