春刹-貴花

 「おはよ~♪」

 「おはよー、ヨモギ~」

 「あ!ヨモギちゃんオハー」

 いつも通りの生活

 いつも通りの空気

 そして、…いつもと少し違うサボり方


 私は医者から年内に死ぬと宣告された。

 こんなのめんどくさい。

 花の女子高生とか、笑わせてくれるわ。

 そんなことを思いつつ、屋上に一人。

 静かなのも良いよね。

 毎日のように『ヨモギ様~』なんてまどろっこしい。

 カースト制なんてゴミかよ。

 早く本性出せってのバーカ。


 「春なんて大嫌い」

 彼女は、確かにそう言った。

 こんな子見たことない。

 そして、いつの間にフェンスの外に!?

 「え~私は好きだよ。春」

 「…」

 「だって、暖かいし風気持ちいじゃん♪」

 突拍子もなく、私は飄々と話してみた。

 「アンタ誰よ」

 「ん?私はヨモギ」

 何か言いたそうな眼差しを向けてくる彼女に

 「君さ~、な~んでそんなフェンスの外に居るの?危ないからさ、こっちおいでよ♪」

 「私、春嫌いなの。花粉症とか体調悪くなったりとか。ナニ,生ぬるすぎて風が…嫌。」

 正直今は、彼女に同感だよ。でもね、

 「ふ~ん~♪そう言うこと。なら、何でそこでズット立ってたのかな?よっとい」

 あえて、同じとこに立つと

 「ちょっ、アンタ死ぬ気!?」

 心配してくれるんだ。優しいじゃん。

 「それ、貴方にも同じこと言えると思うよ。とりあえずさ…学校抜け出そうか♪」

 こんなくどいとこよりも、美味しいとこに行きたくなった。

 「え?ちょっ、ま。痛い。」

 「(笑)スウィーツ食べに行こ~♪」

 「ッハ!?」

 それが、彼女との出会い

 

 そして、ある日

 私はあの人同じ質問をした

 「ねぇねぇ、何で春嫌いだっけ?」

 「それは…私は」

 何か引っ掛かる

 「ん~、そうじゃなくてさ。それ、逃げる理由探してるだけだと思うんだよ。本当は嫌いじゃ無いんじゃない?」

 「…」

 さすがに言いづらいよね…

 「黙りか…残念残念~♪サテー、こちカモン~」

 意味も分からず近寄ってきた彼女の肩に手を置き

 「これから、花火も紅葉狩りも修学旅行も雪遊びもできる。そうしたら、春また来るじゃん。お花見しようよ」

 「んぇ?」

 「私の我が儘、付き合ってこれるかな~♪」

 「それ、誰に言ってると思うの?あんま調子乗んなよ。私が付き合えなかったことって有るか?」

 「ん~♪覚えてない✨」

 「「(笑)」」

 「じゃあさ、今度有っち行こう」

 「え?待ってよー」

 これは、私なりの挑発と願いだった

 それから彼女とは沢山思い出を作った

 学生らしいことを沢山

 先生に注意されることも多くは成ったけど

 まぁ、少し素直に生きてるような気がした


 「ねぇ、ヨモギ。アンタさ…」

 「ん?どしたー?」

 「何で春好きなの?」

 「私は…綺麗に咲く花が大好きなんだ。でも桜が散るのはちょっと寂しいかな」

 少しだけ私の感情を察しちゃったかな?

 「さっさ~、じゃあ次行くか。あ!ほらー!!あそこにショッピングモールだー!!行こう~♪」

 なんて呑気なことを言ってこの場を切り抜けた


 冬のある日私はクラス内で彼女についての情報を集め始めた。

 そう言うと、意外すぎる答えが帰ってきた。

 「ヨモギ様~、その人今年の転校生みたいでしたよ~。それも家とかの事情は分かりませんが…兎に角彼女に近付くと虐めに逢う噂があるみたいで…」

 なるほど、だからか。

 「その虐めている生徒の目星はつく?」

 「はい、最近面倒後とを起こしている生徒のピックアップは既に」


 そして、春になりました

 彼女と私の嫌いな…

 彼女の笑顔は私を包んだみたいに明るくしてくれた

 だから、もうあの子には苦しい思いをさせたくない

 今日もいつものように屋上に行き一呼吸

 「行ってきます」

 外に出て彼女を虐めていた子を全員呼び出した

 「ヨモギ様~一体どうなさったのですか?」

 「皆さん、おはようございます。本日はお伝えしたいことがあり集めました。それでは質問です。私の友人を虐めた方出てきてください。」

 その子達を見るなり可笑しな決めつけが始まった

 「ッフ…実に滑稽よ。皆さん。イイエ,雌豚屑野郎共」

 「何を仰っているのですか?ヨモギ様…」

 「主犯各が…なにアホ面してんだ?」

 そうしたら面白いことに、屑の正確が一変。

 それ意外にも…まぁ色々とあさはらしだな…

 つくづく愚かだと思ったよ。

 あぁ、あの子は今どこで何してるんだろう。

 私は地面に力尽きて倒れてしまった。

 「お花見しようよって春好きにさせるって。なのに、ごめんね…」

 全てにおいての虚無と脱力感

 あぁ、まただ。あの時とまるで変わらない。

 『ヨモギ。ヨモギのこと大好きだよ。やっぱり私、春なんか大嫌い』


 最後に聞こえた声は、彼女の悲痛な声と囁かな風だった。

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