第3話 キャンプ地へ……

 数日後……


 学校が終業式を終え、明日から夏休みに突入する。


 聡と一雄は学校が終業式の終わった後、昨日優菜達と話し合った予定を話しながら帰宅する。


 「それでキャンプ場には何時出発するの?」


 「まだ決めていないよ」


 2人は歩きながら話し合う。


 「まだ決めて無かったのかよ?で……このキャンプ場に行く事を両親に話しているのか?」


 一雄の問いに聡は首を横に振る。


 「何で話さないの?」


 「え?別に話す必要は無いかな……と、思って」


 「お前な……普通に考えてみろ、今の世の中、子供と連絡が付かなくなっただけで、世間は大騒ぎするんだぞ!その辺の事は事前に準備して無いと、後で怒られるぞ、だから話すべきだと思う」


 一雄は真剣な眼差しで聡を見た。


 「なるほどね……分かったよ。それにしても一雄は……本当に真っ直ぐなヤツだよな……」


 「え?どう言う事だよ?」


 「……何でもないよ!」


 「変なヤツだな」


 一雄は首を傾げて言う。聡は遠くを見詰めて小声で呟く。


 「なあ……1つ聞いても良いか?」


 「え?良いけど……」


 「……裕太がUFOを見た時ってどんな様子だったのか覚えているか?」


 「うん、はっきりと覚えてるよ」


 2人は話しながら家に着く。2人の家は隣同士なので数分の距離だった。しかし……彼等の家の距離は近いようで遠い距離だった。


 2人は家の玄関を開けて中に入った。聡の家は両親と妹の4人家族である。


 「ただいま〜」


 聡が家に入りながら言う。


 「あら?お帰りなさい」


 1階の奥にあるキッチンから母の声が聞こえた。その声を聞いて妹の芽衣はリビングから顔を出す。彼女は兄の帰宅を歓迎した。


 「お帰りサト兄、今日は早かったね」


 「ああ……」


 「それでさ……昨日、サト兄が帰って来るの遅かったからお母さんが心配していたよ」


 芽衣は聡に言う。


 「ああ……ところで母さんちょっと話があるのだけど……」


 「ん?」


 聡は黒色のランドセルをリビングに置いて言う。


 「実は、明日……一雄とキャンプ場に行く約束をしたんだよ」


 「ああ、その事ね……話しはもう聞いているわよ、行ってらっしゃい。斎藤さんにもよろしくね」


 それを聞いた芽衣が嬉しそうに飛び跳ねる。それを見た聡も嬉しくなった。


 「ねえねえ!私も一緒に行って良い?」


 芽衣は聡に聞く、しかし彼はそれを断る。


 「ダメだよ」


 それを聞いた芽衣は拗ねる。


 「何でよ?良いじゃない、私サト兄と一緒に遊びたい!」


 「ダメだ!一雄と2人で行く約束だから……ごめん」


 聡は妹に謝る。


 「もう……!」


 芽衣は頰を膨らませてリビングに戻った。


 聡は自室にへと戻った、その時……母が斎藤と言う名前を言っていたのを思い出す。斎藤……?隣のクラスに斎藤俊と言う男子が居るが、何故……母が彼の事を知っていたのだろう?そもそも彼と聡は、それほど親密な関係では無かった。聡は、それをど深刻にその件に付いては深く考えなかった。


 その後……夕食を食べ終えた後、家族4人はリビングのソファーに座ってテレビを見ていたが、突然父が聡に声が掛かる。


 「聡、明日……何処か行くって?」


 父に聞かれた彼は正直に伝える。


 「うん、明日は友達とキャンプに行く予定なんだ」


 「そう……キャンプ場に行くのは良いけど、テントとか食料は準備出来てる?」


 母の問いに聡は首を振る。


 「持って無いよ」


 それを聞いた父は溜息を吐いた。


 「こら、そんなんでキャンプに行って大丈夫か?今から準備しろ!」


 「……はい」


 聡は父に言われて、渋々と準備の荷造りを始める。その傍らで芽衣がスマホで誰かとチャットしていた。


 翌日…


 駅のホームで聡と一雄は電車を待っていた。親に言われてテント等の一式を担いでの荷物だった。


 「なあ聡、そう言えば……お前さ妹にはどんな風に言ったのだ?」


 「家に居る様に伝えただけだよ……どうしたのさ?」


 「いや……別に……」


 「変だぞ?」


 そう言いながら2人は駅に設置されているベンチに腰掛ける。その向側にいる少女に聡は気付く(妹に似た子だな……)と、その少女がスマホで誰かと会話していた。それを見た聡は、直ぐに相手が芽衣だと気付く。


 「あ、アイツ!……何でここに!それ以上に誰と喋っているんだ?」


 「さあ?誰と喋っているんだろう?」


 すると小柄の少女が彼の側まで走って来た。


 「2人だけでキャンプなんてズルイよ!」


 それを聞いた一雄は妹に言う。


 「お前なぁ〜」


 そう言う彼等の後ろで、「あら?貴方達もお出かけなの?」


 その聞き覚えのある声に気付いた聡が振り返ると、そこには優菜の姿があった。


 「え…何で、学級委員長が…?」


 その時、芽衣が意地悪そうに微笑んでいる姿があった。


 「ま…まさか!?」


 聡が何かに気付いた瞬間、芽衣は「えへへ」と舌を出して笑った。


 「はあ……全く……」


 聡は呆れた口調でつぶやく。


 4人は到着した電車に乗り込み、キャンプ場のある駅へと列車は発進する。



 「ところで、キャンプ地に向かうのは良いけど、それなりの準備はしてあるの?」


 「ま……まあ、用意はしたけど……」


 聡のバックの中には数日分の着替えと……あと、夏休みの宿題、それにゲーム機とスマホ、自分達が一泊する程度の食材だけだった。


 一雄もほぼ同じだった。テントで宿泊と……言うよりも、遠足程度のスナック菓子だけが入って居た。


 そんな中、芽衣は、衣類とお菓子を含んだ食材に、チャッカマン等、キャンプに必要最低限の物が用意されていた。


 「流石ね、用意周到だわ」


 「えへへ……」


 「それに比べて貴方達、宿泊訓練してる筈なのに、それだけで、どうやってキャンプ地で過ごすつもりなの?」


 「行って帰ってくれば良いのでは?」


 その言葉に優菜は溜息を吐いた。


 「あのね……キャンプ地って、何も無い場所で、自分達で自炊したりするのよ。普通なら一泊するだけでも結構大変な思いするんだけらね。大体……目的のUFO見付けるって、私達が現地に行ったからって、異星人達が、そんな都合良く歓迎するように現れる何て思っているの?」


 「まあ……確かに……」


  聡は顔を上に上げながら考え込んだ。


 「多分……貴方達の事だから、そう言う所考えて居ないと思ったから、私が従妹で現在別荘に居る人達に連絡しておいたから、先ずはそちらに向かいましょう」


 「え……!でも、それだと、湖から離れちゃうのでは?」


 「湖から、そう遠く離れて無い場所にあるのよ、子供でも歩いて移動出来る距離よ」


 そう話して居ると、列車は目的の駅へと着いた。彼等は駅に降りて、スマホのマップ画面で優菜の従妹の居る別荘の位置を確認する。別荘付近まではバスが発車してるのを確認して、彼等はバスが到着するのを待っていた。


 優菜は、バスが到着するまでに従妹に連絡を取る。


 「で……従妹は了解してくれたの?」


 「ええ、ちゃんとね。向こうで待っていると言ってくれたわ」


 「でも……別荘に住んでるなら、迎えに来てくれても良いのでは?」

一雄が何気なく言う。


 「向こうだって、色々予定があるのよ、私達は言って見れば客人なのに……こんな離れた位置まで送迎してもらうなんて、少し図々しいとか思わない?最低限の気遣い位は持たなければ……」


 優菜の言葉に一雄は言い返せなくなった。


 ふと……そう思っていると、バスが到着して彼等はバスに乗り込んだ。


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