第2話 ある日の午後

 翌日…


 聡は昼の休憩時間にクラスメートの山村一雄を屋上に誘う。


 「何だよ、せっかくの休憩時間にこんな場所に来させて……くだらない用だったら、明日の給食のデザートのプリンを貰うからな!」


 そんな彼の会話を聞き逃すかのように聡は一雄に話し掛ける。


 「夏休みって……もう出かける予定とかは決まってる?」


 「いいや……俺の家は、いつも両親は家に居て出掛け無いんだよ」


 一雄は溜息交じりに答える。


 「なあ……じゃあ、予定が無ければちょっと、相談に乗ってくれ無いか?」


 「ん……何だ?」


 「実はさ……」


 2人だけの秘密会議を始めようとした時だった。


 「あー!サト兄何してるのー?」


 2人だけの秘密会議を始めた瞬間、大声で現れたのは芽衣だった。その側には学級委員長の前島優菜の姿もあった。


 「やっぱりここに居たのね聡君と一雄君」


 (厄介なヤツが現れたな……) 


 聡は小声で一雄に話す。


 「どうも……厄介者で悪かったわね」


 数十メートル離れた位置からでも他人の悪口を聞き取った優菜は、勝ち誇った様な笑みで聡を見た。


 「相変わらず、何て言う地獄耳なんだ?」


 「優菜ちゃんは、地獄耳だけで無く千里眼もあるのよ。だってサト兄の居場所を教えてくれたんだもん」


 「聡……諦めろ、この学級委員長に狙われたら最後、俺達は逃げる事さえ不可能だ」


 彼等の言葉を聞いて優菜は溜息を吐く。


 「もう……その辺にしてもらえ無いかしら?だんだん私が化け物呼ばわりされて困るのだけど……」


 彼女は頰に手を当てながら首を横に降る。


 それを聞いた芽衣が聡の側に来た。


 「ところでサト兄、ここで何してたのよ?」


 「秘密の会議さ、女子達には関係無い事だよ」


 それを聞いた芽衣は頰を膨らまして「む〜自分達ばっかりずるい……」と、ふて腐る。


 それを見ていた優菜が芽依の肩を掴んだ。


 「行きましょう芽衣ちゃん」


 「え……でも」


 「良いから」


 そう言いながら優菜が屋上のドアの向こう側に向かう時、彼女が芽衣の耳元で何か話していた。


 厄介者と小煩いのが消えたと思った聡は一雄に話し掛ける。


 「実はさ、裕太が去年キャンプ場でUFOを見たって話してたの覚えているかな?」

それを聞いた一雄が首を傾げる。


 「そんな話あったかなぁ?」


 一雄の様子を見た聡は、多分……こうなると思って裕太が撮った写真を取り出して彼に見せる。


 「このキャンプ場だよ」


 「ああ……結構UFOの目撃情報があると言われる場所ね」


 「そうだよ、で……相談だけど。キャンプ場に一緒に行こう!」


 「別に良いけど…まさか2人だけで行くの?」


 「そう、2人だけだよ」


「大丈夫かな……2人だけで?」


 一雄は少し困惑した表情で言う。


 2人が話し合っていると、休憩終了のチャイムが鳴り響く。


 「今日学校が終わったら、家に来て予定を立てよう」


 聡は一雄に言いながら校舎の階段を掛けて走って教室に戻る。


 その日の授業が終わると、聡は急いで帰宅準備をする。


 聡と一雄が教室を出ようとした時だった、同じクラスの梅木沙希に「ねえ〜…」と、声を掛けられた。


 「な……なにサキちゃん?」


 急いで帰ろうとした聡は足止めされて少し焦った気分だった。


 (珍しいな……サキちゃんから声を掛けて来るなんて……)


 普段は大人しく、こちらから何か行動しないと、向こうから声を掛けるなんて滅多に無かった。


 「一緒に帰ろう」


 「はい?」


 彼女の家は聡の帰宅路から離れた位置だった。


 「と……途中までね」


 「ありがと」


 そう言って2人は歩いて帰る。


 「ねえ、聡と一雄って、夏休みは何するのぉ……?」


 「と、特に何も考えて無いな…」


 2人は愛想笑いしながら答える。


 「ふう……ん」


 その返事の仕方は、少し嘲笑う様にも思えた。のんびりでマイペースな女子に声を掛けられた2人は、それから数十分間も彼女ののんびりとした会話に付き添われながら歩いて帰る。


 別れ道がようやく見えて来て、聡は咲希と別れて急いで家に帰る。


 帰宅した後一雄が聡の家に来る約束をした。聡は家に帰って来て玄関のドアを開ける。


 「ただいま〜」


 玄関に入り靴を脱ぎ捨て廊下に上がった時だった。


 (ん……?)


 聡は玄関に並べてある靴の数が多い事に気付き、確認しに戻ると…そこには何処か見慣れた可愛いらしい靴があった。


 (これって……もしかして?)


 「おかえり〜」


 リビングの方から聞き覚えのある声が聞こえた、聡は1番関わりたく無い女子生徒がリビングに居ると思って向かうと…そこにはニヤニヤした表情で聡の帰りを待っていた前島優菜の姿があった。「お帰り聡君、随分と遅かったわね……何処に行ってたの?」


 優菜は嫌味を込めて言う。


 「何だよ……」


 「あら?その反応だと私の存在に気付いて無かったみたいね」


 (チッ……)


 「ちょっとアンタ!今舌打ちをしたでしょう!」


 「してないよ」


 優菜は聡に顔を近づけて睨む。


 「嘘を言わないでよ」


 「だからしてないって!」


 2人の会話を見ていた芽衣が2人の間に割って入った。


 「ちょっとー、さっきからうるさいよサト兄」


 芽衣の介入に優菜が溜息をつきながら言う。


 「はぁ〜……これは聡君が芽衣ちゃんや私に隠してる事があるからこうなるのよ?」


 「な……無いよ」


 「嘘ね!絶対にあるわよ!」


 優菜は断言した。


 「何だよ……2人で僕を虐める為に来たのか?大体、何で君が今日に限って家に来るのさ!」


 「だって昼休み何も教えてくれ無かったからね……多分何か隠していると思ってね、ちょっと作戦を立てて見たのよ、協力者もいたけどね」


 「協力者?」


 その時、彼は……珍しく彼に声を掛けて来た梅木沙希の事を思い出す。


 まさか……!自分の行動に対して既に2重にも3重にも包囲網を張っていた少女に彼は呆れた表情をする。


 (全てコイツの仕掛けた作戦だったとは……!)


 聡は少し歯痒い思いをさせられる。


 聡は観念した口調で言う。


 「……わかったよ、教えるから」


 結局、2人にバレてしまった聡は夏休み中一緒にキャンプ場に行く事になった事を話した。それを聞いた2人は大喜びだった。


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