マッチングアプリで出会った妹を恐怖失禁させる話

「おにぃ、私、これやりたい」


 小学六年生の夏休み、二歳離れた妹とホラー映画を見ていた。たしか学校で肝試しをしていた高校生が悪霊に次々襲われて…… といった感じの映画だったと思う。その映画の中で一人の女の子がロッカーに隠れたが、見つかっておもらししながら死んでしまうというシーンがあった。そのシーンを見ているとき、妹がさっきのセリフをぼそっと呟いた。


「あのさ、”これ”ってどれよ? ロッカーの中に隠れるの? 」


「違う」


「じゃあ、隠れてる人を探すの? 俺、ロッカーに隠れるの嫌だぞ」


「違う」


「じゃあなんだよ! 」


「…… もういい」


 そういって妹は映画に視線を戻した。変なやつ。妹はいつもそうだ。言葉足らずというか、ちゃんと喋ってくれない。こっちが察して世話をしてやらないと何も出来ない。本当に困った妹だ。


「お前さ、ちゃんと言いたいこと言わないとダメだぞ。俺はお前の言いたいことなんとなくわかるけど、他の人がそうだと思っちゃダメだからな」


「わかってるよ」


「はぁ、そういう態度だと彼氏とかできないぞ」


「別にいいよ。クラスの男子とか興味ないし」


 妹は小さな声で「それに…… 」と言った気がする。が、その後何も言葉が続かなかったので、多分気のせいだろう。


『キャアアアアアア』


 うお、びっくりした。そうだったホラー映画を見てるんだった。えっと、なんだ? 男子生徒がいきなり真っ二つになってるぞ。ったく、どういう脚本だよ。上から目線で脚本にいちゃもんをつけたあと、俺は映画鑑賞に戻った。



 妹と一緒にホラー映画を見てから約十年後、俺は大学三年生になっていた。映画研究サークルに入り、どうやれば人をより怖がらせることができるかを毎日研究中だ。


 俺はどうやら人を驚かせたり、怖がらせたりするのが好きらしい。俺の仕掛けで怯えた人の表情を見るとなんとも言えない不思議な気持ちになる。


 思い返せば、小学生の時は女子を廊下で驚かせて嫌われたし、中学生のときも懲りずに同じことをして校長室に呼び出された。もうこれは趣味というより、へきなのだろう。そんな癖を合法的に満たせるホラー映画制作は俺の欲求の数少ないはけ口だった。


ピロン


 お、今の音はこの間インストールした『性癖マッチングアプリ』のメッセージ通知だ。なんでも性癖でマッチングしてくれるから、他のマッチングアプリに比べて別れにくいとか。このアプリなら彼女に「初デートでドッキリ仕掛けるとか信じらんない! 」と言われて別れた俺でも相性バッチリの彼女が出来るはずだ。


 実際、今メッセージをやり取りしている子は『全力で怖がらせてほしい』というドMちゃんだ。メッセージを見る限り、ワッと驚かせるよりも本当に命の危険が迫るように怖がらせてほしいタイプの子だ。さて、どんなメッセージかな?


『ねえ土曜日会お。場所ここね』


 メッセージの後には住所が続く。この住所、近所のレストランじゃん。もしかして今やりとりしてる子も近くに住んでるのかな? なんにせよ会えるのは嬉しい。


 俺はすぐに『OK』とメッセージを送った。一体どんな子が来るんだろう。土曜日が楽しみだ。



(よし、ばっちりだ)


 俺は洗面所の鏡で自分の格好を確認する。ワイシャツにスーツ、胸元には黒のハンカチーフ。どこからどうみても格好いい。アプリ経由で会うだけとはいえ、やはり初デートみたいなものだし、これくらい気合い入れていかないとな。


「ん、おにぃ、どしたの? 友だち結婚した? 」


 声の方にはキャップを被り、サングラスをした妹がいた。妹はアイドルをしているので出かけるときは正体がバレないように、いつもこんな格好だ。


「ちげぇよ、これから女子とデートなの。だから、こう、気合を入れて…… 」


「マジ? その格好でデート? 相手の人、ひくと思うよ…… 」


「うるさいなぁ! 今日会う子はお前と違ってこういう格式高い服が好きなの! 」


「ふぅ〜ん」


 あ、絶対これ納得してないな。


「というかお前も出かけんの? 今日、仕事ないとか言ってなかった? 」


「仕事じゃないよ。ただちょっと人と会うだけ」


「あっそ」


まあ妹のことはどうでもいい。とにかく出かけよう。


「ねぇおにぃ、途中まで一緒に歩いていい? 」


「まあ、別にいいけど…… 」


 俺の返答が終わる前に妹は玄関で靴を履き出す。コイツの靴、ブーツばっかりから履くのに時間かかるんだよな。せめて先に履かせてくれよ…… というかなんで途中まで一緒に歩くんだよ? アイドルって男と一緒に歩くところとか写真で撮られたらヤバいんじゃないの? あ〜、もういい、考えるのが面倒だ。


「おにぃ、何してんの? 早く行くよ」


 お前のせいで今まで靴が履けなかったんだろ! と思ったが、もうそんなことすらどうでもいい。俺は就活用に買っていた革靴を下駄箱から取り出し、靴紐を結ぶ。これで完璧だ。俺は意気揚々、家を飛び出した。



「…… あのさ、いつまでついてくんの? 」


「別に、私もこっちに用があるだけだから」


 こっちと言われても、この方向で人と会える施設なんて俺の待ち合わせ場所であるレストランしかない。もしかしてコイツもそこで人に会うつもりか? ヤバいな、妹がいる店じゃ落ち着いてデートなんてできないぞ……


 そうこうしているうちに目的地のレストランに着いてしまった。妹は俺にくっついたまま、離れない。


「もしかして、お前もこのレストランで人に会うの? 」


「うん、今日ここで待ち合わせ」


 マジかよ。どうしよう。今から待ち合わせ場所を変える様に相手の人に頼もうかな? いや、コイツに店を移ってもらうほうがいいのか?


「じゃ、私先入るね」


「待てよ! 俺も行く」


 いい案が思いつかなかった俺は妹と二人で待ち合わせ相手がいるであろう店に入った。


「いらっしゃいませ! 二名様ですね! 」


「いえ、別々でお願いします。俺は『サダコ』さんと待ち合わせで…… 」


「それでしたら、席番号 十三番になっています。案内に従って席までどうぞ! 」


 あ、この店、店員さんが案内してくれるスタイルじゃないのね。まあ最近は受付も機械化してるし、それに比べたらまだ血が通った感じがするからいっか。


「じゃ、俺行くから」


「ちょっと待って! 」


 妹が大声で俺のことを静止する。いつもボソボソ喋る妹がこんな大声をだすなんてちょっと驚きだ。店員さんは「あの、お客様? どうされました? 」と困惑している。そりゃ、いきなりサングラスの女が大きな声出したら驚くよな。


「えっと、あの、私もその人と一緒です」


 …… は?


「ご予約の『サダコ』様ですか? 」


「はい、『サダコ』です」


「そうしましたら十三番の席ですね。案内に従って奥へどうぞ」


「ありがとうございます。いこ、おにぃ」


 俺は妹に手を引かれ、店の奥へと連れて行かれる。えっ、ちょっと待って。ナニコレ? 今日、俺はマッチングアプリで知り合った人と待ち合わせてるんだよ? なんで妹が待ち合わせしてる人と同じハンドルネーム使ってるの? 俺、マッチングアプリで妹とマッチングしたの? というかなんでコイツはこんなに積極的なの? もうわけがわからないよ……


 「ごゆっくりどうぞ〜」


 店員さんは笑顔で俺たちのことを見つめている。初々しいカップルか何かと勘違いしてるのだろうか? ちょっとムカついたが、店員さんは俺の司会からすぐに消え、代わりに十三番の席が現れた。


「ふふっ、まさかおにぃとマッチングなんてね」


 妹は俺を連れてくるやいなやすぐに席につき、妹はニコニコしながら話し始めた。


「ねね、早速なんだけどさ。プレイの話していい? 」


「! バカ!お前そういうこと、公共の場で…… 」


 妹は本当に警戒心がゼロだ。もし『兄妹でプレイ』なんて会話を週刊誌の記者に聞かれていたら、アイドルの妹にとっては大きなスキャンダルだ。俺も『アイドルの妹に手を出したクズ兄貴』という汚名を着せられ、大学にいられなくなるかもしれない。


「大丈夫だよ。この席、真後ろの席じゃないと会話が聞こえないし。というか、だからこの席選んだんだよ? 」


「お前、そういうこと考えてたんだな…… 」


「一応、アイドルだし」


 それなら兄とマッチングしたという特大のスキャンダルの芽を早く摘み取って欲しい。そう思ったが、妹は楽しそうにニヤニヤするだけで、一向に俺との会話を止めようとしない。


「で、プレイの話なんだけどね。私、やりたいシチュがあるの。これなんだけど…… 」


 そういって妹はショルダーバッグから一枚の紙を取り出した。紙にはパソコンで打ち出された文字がびっしりとプリントされている。これ、全部プレイのシチュエーションか。こんなに詳細だと、ちょっと怖いな。


 とりあえず渡された紙を読む。え〜となになに『トイレに行こうとしたところで殺人鬼に見つかって、あわててロッカーに隠れたけどおしっこが我慢できなくなって、結局見つかっちゃって恐怖でおもらし』だぁ? なんだコレ?


「ね、どうかな? やれそう? 」


 妹の目はいつになくキラキラしている。そんなにやりたいのか、コレ?


「まあ、場所は俺がいつも使わせてもらってる廃倉庫を使えばなんとかなるし、こんだけシーンの詳細が決まってんなら不可能ではないな」


「ホント! やった! じゃ、早くやろ! 」


「…… あのさ、そんなにやりたいの、コレ? 」


 俺の一言に妹は顔をしかめて黙り込んだ。なんか俺、地雷踏んだかな? しばしの沈黙のあと、妹はポツポツと話しだした。


「…… うん、やりたい。小学生の頃からずっと、やりたかった」


 妹は顔を赤らめ、俯いてしまった。待てよ? 小学生の頃…… あっ!


「! そっか、小学生のとき、学校の映画見て、やりたいって言ってたの、このシーンか」


「うん、あの映画はお化けだったけど、私は襲われるなら殺人鬼がいいの。なんかリアルな人のほうが『殺されちゃう…… 』って感じがあって、いいの」


 そういって妹はフフッとはにかむ。クソッ、コイツやっぱり可愛いな。話だけだと正直理解不能な性癖だがこんな可愛い笑顔には逆らえない。あーあ、俺はホントに甘々お兄ちゃんだ。


「…… まあ、昔からやりたいシーンならいいよ。俺、ちょっと道具用意するから、お前は今からメッセージで送る住所に先に行っといてくれ」


「え〜、ヤダ。おにぃと一緒に準備したい」


 なんてわがままなのだろう。というかコイツ今日ずっとついてくるな。そんなにお兄ちゃんと一緒にいたいのかね?


「はぁ、じゃあ一回帰るぞ」


 何も注文していないのでお店に申し訳ないとは思ったが、俺達は席を立ち、プレイの準備をするため家へと帰った。帰り道でも妹は俺にずっとくっついていた。できれば離れてほしかったが、言っても聞いてくれないので、とにかく俺は週刊誌を警戒しながら帰るは目になった。クソ、アイドルと一つ屋根の下なんて、いいこと何もないじゃないか……



「おぉ、これが倉庫。おっきいね」


 俺と二つ下の妹は『トイレに行く途中で殺人鬼に見つかっちゃって恐怖でおもらし! (妹考案)』というプレイをするために、俺が貸してもらっている廃倉庫に来ていた。


 ホント、倉庫の管理人さんには申し訳ない。俺の卒業制作の映画を撮るために倉庫を貸してくれたのに、俺は今からここで妹をおもらしするまで追い詰めるのだから…… 後で、管理人さんにお菓子でも持っていこうかな?


「でさ、これがおにぃの用意した道具? 」


 妹は車の後部に乗せていた工具箱を指さす。


「そうだよ。他にも撮影用の道具がいっぱい入ってる。今回は殺人鬼の凶器として電ノコとか使おっかなと思って」


 そういいながら俺は工具箱を車から下ろして、広げる。中にはガムテやナイフやロープが入っている。


「おにぃ、ロープって何に使うの? まさか緊縛プレイ? 」


「ちげぇよ! その、縛られてる演技してもらうためであって、断じてプレイのためでは…… 」


「でも役者さん縛るんだ…… 」


「だから〜! そういうシーンなんだって! 」


 妹は若干ひいている。そんな、俺、全然悪いことしてないのに…… いや落ち込んでいる場合じゃない。俺は気を取り直して、工具箱から今回の凶器である電ノコを取り出した。


「じゃ、これで襲うから」


「それ、大丈夫なの? 私一応アイドルだから傷はちょっと…… 」


「大丈夫だよ。これ、音はするし光沢もあるけど、プラスチックだから。触ってみ? 」


「ホント〜? あ、ホントだ、金属じゃない」


「だろ? で、お前の方はどうなの? 準備できた? 」


「う〜ん、まぁまぁかな? 」


 妹はお腹をさすりながらそう言った。妹作の脚本では『おしっこを我慢してトイレを目指している途中で殺人鬼に会う』というシチュエーションなので、妹はリアルにおしっこがたまるように努力している。


 俺が家で小道具を準備している間、妹は冷蔵庫にあった二リットルの紅茶を一気飲みして、その後も緑茶をちびちび飲んでいたらしい。


 妹には「映画とかのおもらしシーンって本当に漏らしてるわけじゃないぞ」とは言ったけど、「うん、知ってる。でも、私はリアルにしたいの」と言って聞かなかった。そのため、車には妹の着替えとバスタオルが積んである。兄としてはおもらしに備えるより、その思考をなんとかしてほしいのだが、言ったところで聞かないのはこの二十年くらいで学習済みだ。


「じゃあ、限界になったら言えよ。あ、そうだ。殺人鬼から逃げ回るつもりなら、一回倉庫の中見てこいよ」


「うん」


「じゃ、俺、車で寝てるから」


「え、おにぃ一緒に行ってくれないの? 」


「当然だろ? お前がどこに隠れようとしてるかわかったらリアルな演技にならないじゃん」


「おにぃって変なこだわりあるよね」


 おもらしするために、紅茶を二リットル飲むお前には言われたくない。


「ま、そういうことならいいや。じゃあ行ってくるね」


 そういって妹は倉庫に向かって歩く。俺は車に戻り、準備をする。寝る準備ではない。妹を本気で怖がらせる準備だ。


 まず、倉庫で妹に会っても気づかれないように、銀行強盗の衣装に着替える。目出し帽まで揃っているので、顔でバレる心配もない。そういえばあの映画編集終わったかな? 俺の「動くなぁ! 」のシーン、カットされてないといいけど……


 さて頭を妹とのプレイの方に切り替え、次に凶器を用意する。さっきの電ノコではない。ロープを切ったナイフだ。もちろん銀メッキが張ってあるだけの偽物だが、妹はこのナイフのことを知らない。だから、本物か偽物か判断できないはずだ。


 さて、準備万端整ったので、俺は倉庫に妹を探しに行く。きっとアイツは逃げ場所や隠れ場所を探しているだろう。今から知らない男に襲われるとも知らずに。フッ、アイツの怖がる顔を見るのが楽しみだ。



 いた、妹だ。どうやら妹は今、隠れ場所となるロッカーを確認しているみたいだ。何度も開閉を繰り返し、隠れるのに最適なロッカーを選別している。どうやら三つ並んだ真ん中のロッカーがお気に入りのようだ。多分、本番はあそこに隠れる気なのだろう。まあ、本番は永遠にこないのだが。


 よく見ると妹はさっきからずっと足踏みをしている。他にも脚をクロスさせたり、手でスカートの端を伸ばしたり、どう見てもおしっこを我慢している。あの感じだと、ちょっとでも驚いたらすべて漏らしてしまうのではないだろうか?


 まあ、そんなことどうでもいいか。俺は妹が部屋を出ようとするタイミングを見計らって、足元に転がっていた一斗缶を思いっ切り蹴った。


ガァン


 大きな音が倉庫に響いた。妹はビクッと身を震わし、音のした方をゆっくり見る。妹の視線の先には目出し帽を被って、ギラギラ光るナイフを持った俺がいた。妹と目が合う。


「えっ、誰、おにぃ? 」


 俺は質問に答えずツカツカと妹に近づく。妹は何が起きているか飲み込めていないようで「おにぃでしょ? ねぇ、おにぃ、答えてよ…… 」と震えた声で聞いてくる。


 当然、俺は答えない。幽霊にせよ、殺人鬼にせよ、ホラー映画の脅かし役は意思疎通が出来ないから怖いのだ。俺はその基本通りに役を演じ、妹の目の前まで歩を進める。


「おにぃ、だよね? 何、まだ私、準備…… 」


 俺は一切答えず、妹の鼻先でナイフを横にふるった。


ヒュッ


 ナイフは空を切る。調整したのだから当然だが、妹はそう思っていない。妹は後ろにのけぞり、バランスを崩して、尻もちをつく。妹の瞳がサングラスの向こうで恐怖に揺れる。


「え…… あ…… 」


 妹はズリッと後ずさりはするが、立ち上がって逃げようとはしない。腰が抜けてしまったようだ。はぁ、ロッカーまで逃げるのは無理か。仕方ない。ここで終わらせよう。そう思い、ナイフを振り上げて……


ブンッ


 妹の顔めがけて振り下ろした。


「ヒャ…… 」


ピチャチャ……


 小さな悲鳴の後、妹の足元から水音がした。死の恐怖でたまっていたおしっこが出始めたようだ。


ビチャチャチャチャチャ


 妹から発せられる水音は段々と大きくなる。妹の体は完全に脱力しており、逃げることもおしっこを止めることも諦めているみたいだ。


 よほど怖かったんだろうな。なんだかそこまで怖がってもらえると、演出家としてはとても嬉しい。さて、そろそろネタバラシかな。俺はナイフを引っ込め、目出し帽を取る。


「わっ! どうだ、びっくりしただろ? まあ、お前の脚本でも悪くはなかったんだけど、全部ネタバレしてると怖くないかなと思って、こっちで脚色させてもらったよ」


「ほぇ…… おにぃ? 」


「そ、俺。最初っからぜーんぶ俺の演出ってわけ。いや〜、これほどの演出が出来る人、芸能界にも…… 」


ポロリ


 妹の目から涙がこぼれた。ありゃりゃ、ちょっとやりすぎたかな?


「おにぃ〜、怖かったよぉ、ホントに、し、死んじゃうかと思ったよぉ〜」


 妹は本格的に泣き出した。おしっこの水たまりに妹の涙が追加され、水たまりの面積を広げる手伝いをする。


ショロロロロ……


 しばらくして妹はおしっこを出し切ったようだ。


「ほら、もう気が済んだか? 早く帰るぞ」


「待って、おにぃ、私、腰が…… 」


「わかってるよ。ほら、手」


 妹は力なく手を差し伸べる、俺はその手を取り、妹の身体を引っ張り上げた。妹はなんとか立ち上がったが、足元がおぼつかない様子だ。仕方がないので、俺は妹に肩を貸してやった。


「じゃあ、車戻るぞ。そんで車で着替えて、家に帰って、今日はおしまいだ」


「うん…… 」


 俺と妹は一緒に車まで戻る。途中で妹が「おにぃ、またしようね」といった気がするが、多分気のせいだろう。


 というか気のせいであってくれ。アイドルの妹とおもらしプレイなんて知られたら、俺は社会的に死んでしまう…… それは、とてつもなく、怖い。


 もしかしたら、どんなホラー映画よりも妹の要求のほうがホラーかもしれない。


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