第2話:マッチングアプリで会った弟を縛ってたら新たな性癖に目覚めた話

「ハァハァハァ…… 」


 浴室に男の子の吐息が響く。男の子には私の用意した縄がグルグルと巻かれ、浴槽の中に横になって苦しそうにしている。


「なぁ、ホント…… すぐ戻ってくるから、一回、縄解いてくれよ」


 浴槽の縁に座る私に、男の子は上目遣いで懇願してきた。すごい、ゾクゾクする。


「だ〜め〜、解いたら逃げちゃうでしょ〜? 」


「逃げねぇって、約束するから少しだけ…… 」


 ふ〜んと言って男の子を見る。男の子はさっきから体をモゾモゾ動かしている。頑張って縄を解こうとしているのかな? それとも別の理由かな?


 気になって男の子のお腹を、えいっと蹴ってみた。男の子は「ヒウッ……」と聞いたことのない悲鳴を上げて体を丸めた。どうやらモゾモゾしてたのは縄を解こうと頑張ってたわけじゃないみたいだ。


「ホント、もう、限界なんだよ…… 頼むって…… 」


 男の子は目をウルウルさせてお願いをしてくる。そんな顔されたら、もっといじめたくなっちゃうじゃん…… 男の子はセリフの最後に小さな声でこう呟いた。


「頼むって姉ちゃん、漏れちゃうよ……」


――――


「ふふ〜ん♪」


 鼻歌を歌いながら私は出かける準備をしていた。今日は特別な日だ。なんたって理想の男性と会えるのだから。


 私は今日マッチングアプリで知り合った男性と会う。私が使ったアプリは『性癖マッチングアプリ』といって普通のアプリが顔写真や趣味からパートナーを探すのとは違い、性癖からパートナーを探すアプリだ。


 私の性癖は「可愛い男の子を縛る」というなかなか人に共感してもらいづらいものだったけど、アプリのおかげで縛られたいM系男子を見事ゲットすることが出来た。


 彼のプロフィール写真の目元は隠されていたけど、丸みを帯びた顎のラインやそこまで目立たない喉仏から、私の好みの顔であろうことは予想できた。これから会うのが楽しみだ。


コンコン


 部屋の扉がノックされる。動くのはちょっと面倒なので「は〜い! な〜に〜!」と大きな声で用件を聞く。


「姉ちゃん、俺出かけるから」


 扉の向こうにいたのは高校三年生の弟だった。どこに行くんだろう。友達と勉強合宿かな? それとも彼女と一晩過ごすのかな?


 興味は尽きなかったが断る理由もないので「おっけ〜」と答えた。答えた後、バタンという玄関を閉めた音が聞こえたので、もう弟は出かけたようだ。


(あ、そんなことより早く行かないと…… )


 弟のことは気になるが、私にも予定がある。私は姿見の前に立ち服装の最終チェックを行う。


 いつものギャル系ファッションと違い、ピンクと白を基調としたロリータ系ファッションだ。こんなにフリルの付いた服を着て出かけたことはない。でも、プロフィール写真をこの格好で撮ってしまったので仕方がない。


 ウィッグがずれていないか念入りに確認した後で、私は待ち合わせ場所になっているファミレスへと向かった。


――――


「あの、二人で予約している『みにゅ』なんですけどぉ…… 」


「『みにゅ』様ですね。お連れ様、お待ちですよ。十一番の席へどうぞ」


 私は店員さんに案内された席へと歩を進める。彼はもう来ているらしい。待ち合わせ場所に早めにつくとは、好感が持てる。あぁ、そんな真面目な彼を早く縛りたい。どうやって縛ってくれよう……


 彼をどう縛ろうか妄想しているうちに十一番の席へ着いた。席には可愛い男の子が座っていた。


 服はオーバーサイズの白Tシャツに黒のカーゴパンツ、黒のブーツで男の子っぽくまとめている。でも、髪型がマッシュ系で顔が丸くてとっても可愛い。服もなんか背伸びしてカッコよく見せようとしている感じがとてもいい。スマホをいじっていて顔はちゃんと見えないけど、すっごい好みの見た目だ。


 私が彼を観察していると、視線に気づいた彼がこちらに視線を向けた。目があった瞬間、私は固まった。私の目の前にいたのは、さっき家を出た弟だった。


「えっ、姉ちゃん? 何してんの? そんな格好で…… つーかなんで髪、ピンク? 」


「えっと、私待ち合わせしててぇ…… 愛糸あいとくんは〜? 」


「俺も待ち合わせ。姉ちゃん、席、間違ってるんじゃない? 」


 「そうかな? 」と思いつつ、席番号を確認する。席番号は間違いなく十一番だった。


「私は間違ってないよ〜。愛糸くんが間違ってるんじゃな〜い? 」


「俺はぜってぇ間違ってねぇよ。店員さんに『みにゅさんが予約した席はこちらです』って言われたんだから」


 「あっ、『みにゅさん』は俺の待ち合わせ相手ね。ネットで知り合って今日初めて会うけど」と弟は言っていた気がするが、正直よく聞き取れなかった。だって、その『みにゅ』とは私のことなのだから。


「そっか。えっと、ネットってことは〜、愛糸くんもハンドルネームでやり取りしてたの〜? 」


「そうだよ。俺は『らぶすれ』。愛と糸をそれぞれ英語にして頭の二文字だけ使ったんだ。てか、それがどしたの? 」


「そっか〜、『らぶすれ』ってそういう意味だったんだ〜」


「? そういう意味ってどういうことだよ? 」


 私は弟に『らぶすれ』さんとやり取りしたメッセージの履歴を見せた。履歴を見た弟はみるみる青ざめる。


「は? え? 姉ちゃんが『みにゅ』さん? 」


「うん、ほら私の名前、美紐 《みにゅう》じゃん。だから頭文字だけ使って…… 」


 そこまで言って私は口をつぐむ。弟も言葉を発しようとしない。こんなことあるのだろうか。深夜あんなに『縛りたい』『縛られたい』とメッセージを交わしていた相手が身内だなんて……


「…… とりま、なんか食べよっか」


「…… あぁ」


 私は席につき、弟と一緒に昼食をいただく。はたから見れば家族でお昼だが、真相はそうではない。私達は終始無言のまま、料理が運ばれるのを待ち、来た料理を口に運んだ。


――――


「ありがとうございましたー」


 店員さんのあいさつを背に私と弟はお店を出た。互いに掛ける言葉が見つからず、しばらく無言のままお店の前に立っていた。


「えっとさ〜、この後どうする〜?…… やるー? 」


「や、やんねえよ、バカ! 大体、相手が姉ちゃんだってわかってたら、まず会ってねえし! 」


「そっか〜、ざんね〜ん……」


「あんた、実の弟に対してやる気だったのかよ…… 」


 弟は顔をひきつらせた。気持ちはよく分かる。身内で緊縛プレイなんてなかなか賛同を得られないだろう。でも、わたしはしたい。だから、この気持ちだけはと思い、弟に言葉をかける。


「う〜ん、私は相手が愛糸くんでも全然いいけどねぇ。むしろ、愛糸くんだからしたいまである」


「おまっ、マジか…… 」


「うん。私、愛糸くん大好きだも〜ん。大好きな愛糸くんを縛れるなんて最高だよ〜。でも、愛糸くんがイヤって言うなら、勝手に縛ったりはしないよ〜」


 弟はちょっと俯いて、はぁとため息をついた。


「わかったよ、姉ちゃんがやりたいなら縛ってくれ。…… 俺も、姉ちゃんに縛られたいし…… 」


「ホント! 」


「でも、今回だけだかんな! 今後、俺を縛るのは禁止な! 」


「うんうん、いいよ〜、一回でも愛糸くん縛れるならいいよ〜」


 「ありがと〜」と言って抱きつこうとする私を弟は払いのけた。お姉ちゃんにハグされるのが恥ずかしいのかな? これからもっと恥ずかしい事するのに、可愛い。


「ほら、早く行くぞ! 」


「ん? どこ行くの〜? 」


「ホテルだよ! あんたはここで俺を縛る気か?! 」


 愛糸くんの言い分は最もだ。でも『ホテル』とか『縛る』ってあんまり大きな声で言わないでほしいな。みんながこっち見てるじゃん。それに……


「えっ、ホテルなんて行く必要なくない? うちでやろ〜よ〜」


「…… は? 」


「ほら早く帰ろ〜」


 私は放心している弟の手を取り、自宅へ向かった。弟は何が起こっているのかまだ処理できていないようで、手を引かれるまま自宅に連行されていた。


――――


「はい、じゅんびかんりょ〜。じゃ、縛るねぇ」


「ちょっと待てって! 質問に答えろよ! なんでうちの風呂場で縛るんだよ! 」


 弟の言う通り私達は服を着たまま、お風呂場に来ていた。


「だってホテルだとお金かかっちゃうじゃん? あと、愛糸くん『縛られて狭い所閉じ込められるの好き』ってメッセで言ってたから、縛った後、浴槽に入れちゃおうかと思って〜」


「…… あんた猟奇的だな」


「やめとくー? 」


「…… やめない。浴槽の中で縛って、そんで転がしといて…… 」


 弟は自ら進んで浴槽の中へと入る。何だかんだと言っているけど、縛られたいんだね。


「じゃさ、正座して後ろに手ぇ回して。手首と足首とつなげて縛って上げるから〜」


 弟は黙って私の言う通りにした。私は弟の手首と足首にタオルを巻いてその上から縄で弟の手を縛る。ギュッと縄を引っ張ったとき弟から「…… ん」と押し殺したような声が聞こえた。多分、気持ちよくて声が漏れちゃったのだろう。


「ん、縛れたよ〜。どんな感じ〜? 」


「…… いい」


「そっか〜、よかった〜。じゃあ寝かせちゃうね」


 そういって私は弟を浴槽の中に寝かせた。さすがに正座のままでは横できなかったので、海老反りに近い状態にしてから寝かせた。弟はちょっと息を荒くしている。興奮してるのかな?


「ね〜、お風呂のふた、閉めてもい〜い? 」


「うん、お願い…… 開けてっていうまでそのままにしといて」


「うん、おっけー」


 私は浴槽にふたをする。狭い場所で縛られたいって言ってたし、多分こっちのほうが興奮するんだよね。縛られてる姿が見られないのがちょっと残念だけど、それは後で堪能すればいい。今は弟の欲求を満たしてあげよう。


 浴槽の中からは「はぁ、せまくて暗くて…… さいこぉ」という呟きが聞こえる。喜んでくれて何よりだ。ちょっと縛るのに疲れていた私は浴槽に腰掛け目を閉じる。弟が満足するまでちょっとだけ寝ちゃおう。そう思い、眠りについた。


――――


「おい!姉ちゃん!聞こえてんのかよ! 早く開けてくれって! 」


 弟の必死そうな叫び声で目が覚めた。どうやら予想よりも深く眠ってしまったようだ。手足を縛られ、浴槽に閉じ込められた弟は見捨てられたと思い、慌てているのだろう。早く出してやらねば。私は浴槽から立ち上がり、浴槽のふたを取った。


「姉ちゃん! 何してたんだよ! 開けてって頼んだら開けろって言っただろ! 」


「ごめ〜ん、ちょっと寝ちゃって〜 」


「プレイ中に寝るとか正気か!? 」


 「へへへ」と笑う私とは対称的に弟は切羽詰まった感じだ。閉じ込められて怖かったのかな?


「早くここから出せよ! 後、縄も解け! 」


「え〜、私、愛糸くんが縛られるとこ、ちゃんと見てないんだけど〜」


「いいから! 」


 弟はとてもあわてている。どうしたんだろう? 閉じ込められて怖がっていたなら、もう怖がる必要はないはずだ。それにさっきまであんなに縛られたがってたのに、縄を解けなんてちょっとおかしい。


 おかしいと思って見ると色んなものが見えてくる。弟はさっきからはぁはぁと肩で息をしているし、太ももをすり合わせているようにも見える。それと頬がほんのり赤く染まっていて、とてもそそる…… なんか全体的にトイレを我慢しているみたいな動きだ。ホントにそうなのかな? 興味本位で弟に聞いてみる。


「愛糸くん。もしかしてトイレ、行きたいの〜? 」


 弟の動きが一瞬止まる。その表情からは「バレた!?」と思っているのがミエミエだ。そっか、おもらししそうだから慌てて縄を解こうとしてたんだ。それはこう、なんか、いい。


「…… そうだよ、トイレ行きたいんだよ。正直ファミレスのときからちょっと我慢してて。で、姉ちゃんがなかなか出してくれねえから、もう限界近いんだよ…… 」


 弟は恥ずかしそうに告白する。私の中で何かのスイッチが入った。


「ふ〜ん、そっか〜。トイレ行きたいんだ〜、ふ〜ん」


「…… だからそうだって言ってんだろ。なあ、早く解いてくれよ」


「でもさ〜、愛糸くん、一回しか縛っちゃダメってファミレス前で言ってたじゃん。だから、もうちょっと愛糸くんが縛られてるの見たいな〜」


 弟の顔からサァーと血の気が引く。うん、その絶望した顔、いい。


「ざっけんなよ! とっとと解けって! 」


「でも、二度と縛れないんじゃな〜」


「クソッ…… じゃあ一旦、ちょっとだけ自由にしてくれ! トイレ済ませたら戻ってくるから」


「う〜ん、信じられないなぁ。逃げちゃうかもだし、もうちょっと縛ってようかな〜」


 「よいしょ」と言って私は浴槽に腰掛ける。足元には可愛い弟が縄で縛られて転がっている。弟は私を親の仇みたいに睨んでる。ふふっ、かわいい顔で凄んでも全然怖くないよ〜だ。私はしばらく転がっている弟を観察して楽しんだ。


――――


「なぁ、ホント…… すぐ戻ってくるから、一回、縄解いてくれよ」


 弟は浴槽の縁に座る私に上目遣いで懇願してきた。すごい、ゾクゾクする。


「だ〜め〜、解いたら逃げちゃうでしょ〜? 」


「逃げねぇって、約束するから少しだけ…… 」


 ふ〜んと言って弟を見る。弟はさっきから体をモゾモゾ動かしている。頑張って縄を解こうとしているのかな? それとも別の理由かな?


  気になって弟のお腹を、えいっと蹴ってみた。弟は「ヒウッ……」と聞いたことのない悲鳴を上げて体を丸めた。どうやらモゾモゾしていたのは、縄を解こうと頑張ってたわけじゃないみたいだ。


「ホント、もう、限界なんだよ…… 頼むって姉ちゃん、漏れちゃうよ…… 」


 弟は目をウルウルさせてお願いをしてくる。そんな顔されたら、もっといじめたくなっちゃうじゃん…… そうだ。


 私はシャワーを手に取る。弟は私が何をしているのか理解できないようで、ポカンと私を見ている。


「私聞いたことあんだけど〜、水がチョロチョロ流れる音聞くと、おしっこって我慢できなくなるらしいよー? 」


「何言ってだよ姉ちゃん…… ん、今そんな事、あっ、どうでもいいだろ……」


「いや、ホントかな〜って思ってさ。今から確かめてみるね〜」


 そう言って私は風呂場の床に向けてシャワーの水を出した。シャワーから出た水はお風呂場の床にぶつかり、ビチャチャチャチャチャチャと音を立てた。


「あ! あっ、あ! 姉ちゃん、それ、やめて…… 」


 浴槽の中で弟がビクンと跳ねた。どうやら噂は本当らしい。弟はもうおしっこが我慢できないみたいだ。


「え〜、な〜に〜? シャワーの音がうるさくて聞こえないよ〜 」


「だから、ん、それ、シャワー、とめ…… あっ!」


 セリフの途中で弟は黙ってしまった。どうしたのだろうと一旦シャワーを止め、浴槽を覗き込む。


 弟は体を丸めて、歯を食いしばり必死におしっこを我慢しているようだ。よくよく見ると弟のカーゴパンツの股あたりの布が不自然に盛り上がっている。そういえば男の人はおしっこを我慢してるとちんちんがおっきく固くなるんだっけ。


 どれくらい固くなってるのかな? 素朴な疑問を解決するため、私は弟のちんちんに触れる。


「ヒャッ……! おい! 何考えてんだ! 」


 ふ〜ん、こんな感じなんだ。固いと言ってもこんなもんなんだね。あれ? なんか一番上のほうどんどん濡れてきてる?


「おい! 手ぇ離せって! お前頭おかしいのかよ! 」


 もう、うるさいなぁ。弟を黙らせるためにお腹に手を当てちょっとだけ押し込む。パンパンに膨れたお腹を押された弟は「ウアッ……」と言って黙ってしまった。その間も弟のカーゴパンツは濡れ続けていた。これは多分……


「ねぇ、愛糸くん、もしかして、おもらし始まっちゃった〜? 」


「バカ…… そんなこと、ん、ありえねぇ…… 」


「でも愛糸くんのズボン濡れてるよ〜? 正直に言いなさ〜い。言ったら、縄解いてあげるよ〜」


 『縄解いてあげるよ〜』の一言を聞いてから弟の表情が変わった。多分あれは迷っている。おもらしを認めて開放されるか、おもらしを認めず我慢を続けるのか、弟は迷っているのだ。そしてフゥ息を吐いてから弟は言った。


「…… そうだよ。もう、出始めてるよ…… ほら正直に言ったろ。早く縄を解いてくれよ…… 」


 弟は耳まで真っ赤にしておもらしを認めた。その姿を見て私は、もう我慢できなかった。


「うんうんう〜ん! 偉いね、ちゃんとおもらししちゃったって言えて! ご褒美に縄を解いてあげる! でも、先にやらなきゃいけないことがあるよねー?」


 そういって私は再びシャワーを手に取った。弟は相変わらず私のしていることが予想できないようだ。


「…… おい、姉ちゃん? なんでシャワーなんて持ってんだよ? 早く縄を…… 」


 弟のセリフを全部聞く前に私は行動に出た。


「ズボンがおしっこで汚れてるから洗わなきゃだね〜! 」


 セリフと同時に私はシャワーから水を出し弟の股間に冷水を浴びせた。ビシャシャシャシャと凄い音がして、弟のズボンはどんどん濡れていった。


「! わ、てめぇ、あっ、く、あぁ…… 」


 そして、いきなり冷水を浴びせられ、びっくりした弟のダムは決壊した。


 さっきまで苦しそうにしていた弟の表情が安らかなものへと変わる。私は急いでシャワーを止め、弟から出る水流を観察する。


 弟は私など気にせず「フゥ〜」と気持ちよさそうな吐息を漏らしている。もうシャワーは止まっているはずなのに弟からはピチャチャチャチャと控えめな水音が響いていた。弟の周りの水は段々黄色く色を変え始めている。これはもう言い逃れできないおもらしの証拠だね。


「……んっ」


 しばらくすると弟から発せられる水音はピタッと止まった。全部出し終えたのだろう。それにしても気持ちよさそうな表情だ。


「どーお? おしっこできて気持ちよかったー? 」


 浴槽で横たわる弟に問いかける。どうせ「ざっけんなよ! お前のせいで漏らしたじゃんか! 」とか食って掛かってくるのだろう。


「ヒッグ、グズッ」


「! どうしたの!? 」


罵声が返ってくるだろう思っていたが、返ってきたのは予想外の嗚咽だった。


「だってぇ、おれ、ねえちゃんのまえで、しばられて、おもらしして、こんなの、かっこわるいからぁ…… 」


 弟の目からは涙がポタポタ流れていた。


 そういえば弟は昔から「姉ちゃんは俺が守るから! 」と言って私の前でカッコつけてたっけ。私にカッコ悪い所を見せるのが泣くほど嫌だったのか…… 申し訳なくなって弟に謝る。


「ごめんねぇ、私、愛糸くんが大好きだからいじめたくなっちゃったの…… ねぇ、嫌いにならないでぇ」


「…… グスッ、縄、解いてくれたら嫌いにならないでやる…… 」


「わかったわかった、すぐ解くから待っててぇ」


 私はすぐに結び目を解き、弟を自由にする。久しぶりに手足を自由に動かせるようになった弟は立ち上がって、手足をグルグル回し、体の感覚を確認していた。


「じゃあさ、俺このまま風呂入るから。姉ちゃん出てって」


「うん…… あの、ホントにゴメン…… 」


 完全にやりすぎた。いくら可愛かったとは言え、弟におもらしをさせてしまった。口では『嫌わない』と言ってるけど、多分今までのようには接してくれないだろう。私はトボトボと浴室の外へ向かう。扉を出る直前、弟が大きな声でこう言った。


「姉ちゃん! その、俺、マジで姉ちゃんのこと嫌いにならないから…… あと、縛られるの気持ちよかったから、その、また縛ってくれると嬉しいかも…… 」


 最後の方はモゴモゴしていたが、弟はどうやら今回の件を水に流してくれるようだ。そして、また私と緊縛プレイをしてくれるらしい。


「ホント! わぁ、ありがと〜。次はどこでどんな縛り方しよっかな〜」


「あっ、でも一つだけ約束な! 縛る前に俺をトイレに行かせること! これを守んないともう縛られてやんないから! 」


「もちろんだよ〜」


 ここは一度、弟の要求を飲んでおく。でも、多分弟の思ったとおりにはならないだろう。


 私は今回のことで完全に『縛った相手をおもらしさせる』快感に目覚めてしまった。もう普通の緊縛じゃ満足できない。だから、弟にはなんとしても、おもらししてもらう。


(さて、どうやって、おもらししてもらおうかなー)


 弟はまだ私の悪巧みに気づいていない。


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