第二十一集:羽化
「二人とも、こいつを殺して」
「
「だよね? 二人にとって、
「じゃぁ、まずは
「そんな……」
「次は
全員が
「
「頼む。やめてくれ」
「嫌なら、蝶を使うまで」
「君なら
槍の穂先が
「わかった」
「……かはっ」
「
抱きしめてくれる
「わあ、大変そう。次は
白い蝶が
身体を解放された
「このままではみんな風邪をひいてしまうね。さあ、中へ入ろう」
中に入ると、そこには
「ろ、ろうそ、く」
「蝋燭? 何に使うのさ」
「火、の、つい、た、ろう、そく」
「……いいよ。ほら」
すると、
「
「なんてことしているの!」
「い、意識、を、たもた、な、くて、は」
右腕に咲いていた
「
「正義感が強い奴ってさ、誘導しやすいんだよ。だって、こっちが悪いことをすればいいんだもの」
高笑いが響く。
「私に依存させられている可哀そうな
「君はいったい誰なんだ」
作り笑いが張り付いていた顔に、怒りと悲壮、そして嘲笑が混じる。
「
「無理もないか。我が父は賢王であったのに、邪な人間たちのせいで廃位に追い詰められ、死を賜ったのだから」
千年前、不誠実な先帝が招いた国内の混乱を鎮め、善政を敷き、国中から愛されていた皇帝がいた。
しかし、甘い汁を吸えずにくすぶっていた官僚たちによってあらぬ疑いをかけられ、偽の艶聞に端を発する事案に関する噂は津波のように国内へ広まっていった。
そのせいで血族は全員殺され、最後、牢に収監された廃帝だけが残った。
「でも私は肺の病を患っていてね。療養のためにここで暮らしていたから助かったのだ。皇弟であった叔父上が修行をしていた、ここで」
廃帝の弟は兄の無念を晴らすために、皇宮へ忍び込んだ。
そして兄が収監されている牢へ行き、「私が祥王を守ります」と告げると、廃帝は言った。
「朕の……、私の足を持って行け。それで
そして、「他にもいくつか使えそうな神器がある。私の遺体は
皇弟は
「いつか私の思いも口伝では伝えきれなくなる。だが、この血は絶えない。必ずお前を支え続けるだろう。
祥王は永き命を使い、父の遺体が葬られた
姿かたちを偽りながら、
「
「私は第七皇子だから七色の
不気味な笑み。
「私はね、
「夫婦の愛は麗しいね。反吐が出る」
「何が可笑しいのかな、
「哀れ、だね」
「今の君よりも?」
「も、ちろ、ん」
それを
「わた、し、には」
宙に浮くそれは繭のように
「私には、愛している人達がいて、そして、愛してくれる人達がいる。誰を信じ、誰のために戦うのか。自分で決められる」
立ち上がった
「
「まだ霊力に変換できた
「よかった」
あたたかな体温が、苦しんだ身体を温めてくれる。
二人は
「私達を人質にとって何をするつもりなの」
「父を陥れた官僚たちが持ち上げた男の皇統を根絶やしにするに決まっているじゃない。私の話、ちゃんと聞いていたの?」
三人は
「何を取り出そうとしているの」
「父上の頭蓋骨だよ。一緒に皇宮へ行くんだ」
冷たい雨を伴った風が開け放たれた扉から入り、足元を濡らす。
「おっと、
「まず、
その時、門弟の一人が声を上げた。
「見つかりました!」
それを祭壇に置き、蓋を開ける。
「ああ……、父上」
慎重に取り出し、抱きしめようとしたそれを、
「今度はあなたの父親が人質。私達を解放して」
「無駄だよ。だって、ほら」
「
白い光が
赤煙は地面へとそのつま先をつけると、霧散し、中から罪人用の服を着た男性が現れた。
「父上!」
男がゆっくりと目を開ける。
「……祥王か」
「そうです! ずっと、ずっとこの日を待っておりました」
「よくやった。我が息子よ」
三人の脳が警告を発している。
あまりに危険なものが出現してしまった。
「父上、こちらをお
「その鎧を
廃帝は頷くと、鎧の上に乗っている剣を手に取った。
「その者達は? 何故生かしている」
廃帝の目が三人を見た。
こちらを見つめる男は、あまりに邪気が強い。
足元を這う
「皇宮へ攻め入る際、盾となる者達です。彼らがいれば、誰も手出しは出来ないでしょう」
「それはお前がつけていなさい。私には必要ないからな」
霊力は怨念と結びつき、さらにその力を強めている。
雨脚が強まった。
天が、赤く染まろうとしている。
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