第十一集:霊力花
ついに
「
「今のは」
「
話しつつも、互いに抜刀し、次々と悪鬼羅刹を斬り伏せる。
「梅園、攻撃態勢」
白梅は刀で薙ぎ払い、紅梅は弓で遠距離から沈め、青梅は黒い刃の二刀流で悪鬼羅刹の首を斬り落としていく。
まとめて浮かせれば、白梅が一刀で首を斬り落とす。
青梅は
時折、地鳴りと共に何かが弾け飛ばされているような轟音が響き渡る。
「
「あ」
「ありがとう、
何か重いものが地面へと落下した音がする。
「紅梅に射手を始末させた方が良い」
「わかった」
紅梅は弓に何本もの矢を番え、木の上に隠れている射手を撃ち落し始めた。
とにかく、一体でも多く倒して目標討伐数を早くこなさなければ。
「一度休もう。夜に備える必要がある」
「うん。すぐに準備する」
「
仄かに翡翠色に光る大きな四角い結界が張られた。
「白梅は負傷者の治療を。紅梅は食事の準備。青梅は索敵。紅梅の守りを破れそうな奴が来たらすぐに処理して」
梅園は「かしこまりました」と
「これは……。霊力が回復していく」
「私の
「そんなことをして、身体は大丈夫なのか」
「そんな、一日目で倒れるほど弱くないよ。治療では、患者自身の霊力を使って自己治癒能力を高めさせなきゃいけない。それだと、せっかく傷や病が治っても立ち上がれないでしょう? だからこうして霊力を補充する必要があるの」
しっかりと休憩をとった二人は、深手を負っている負傷者はこのまま紅梅が張った結界の中に残し、近くで戦うことにした。
血の臭いにひきつけられ、すでに多くの悪鬼や妖邪が集まってきている。
「
結界を包囲していたものから片付け、北を
休むことなく戦い、気付けば微かに朝陽が昇ってきたことがわかる。
「少し寝よう、
「わかった。怪我は、体調は、気分は」
「大丈夫大丈夫」
正直、疲弊はしている。
身体に関して言えば、白梅は
それでも、精神が安定している。
心が「まだまだ戦える」と言っている。
「じゃぁ、少しの間おやすみなさい」
三時間後、目を覚ました二人は門下生達と簡単な食事を済ませ、また梅園と共に戦場へ出た。
「今日も頑張ろう」
過酷な日々を過ごし、一週間が経った頃。
「何かおかしい」
いくら広大な土地だとはいえ、ここまで七代
「これ、引き離されているんじゃ……」
「私もそう思う」
二人は顔を見合わせ頷くと、一番わかりやすいであろう
「……こっちから轟音がする」
「行こう」
駆け寄っていくと、まるで壁のように大きな悪鬼が現れた。
「どう考えても偶然じゃないよ」
「協力できないよう、妖邪を操っているのか」
「今のうちに!」
すると、二人の声に気付いたのか、
「
「梅園、守備体勢!」
紅梅が
「白梅、重傷者から順に全員の治療を」
「どうやってここに? 私も二人を探していたんだよ。何かおかしいよね?」
「
「これ、もしかして、私達をこの山に足止めしているとか……?」
三人の頭に、それぞれの家族や街のことがよぎった。
「この隙に各
「
「でも三人じゃ……」
その時、
「良かった。やっと合流出来た」
「早く陣の中へ! 三人とも怪我が酷い。私が治療する」
「三人はどうやってここまで来たの?」
「
「そんなものがあったのか」
「
「そこのも壊しておいたよ」
三人の治療を終え、
「それはかなりまずい状況だぞ。
「でもどこにあるのか」
「大丈夫。紅梅、感知して」
紅梅がその場に座り込み、感覚を広げた。
「ここから北東へ。しかし、新たな結界を張るには相当量の霊力が必要です」
「
三人の腕に
「今のは何?」
「私の
「さあ、行こう」
比較的怪我が軽度の
「大型
北東へ近付くにつれて悪鬼羅刹の強さが増し、その大きさや素早さも格段に上がっている。
「三人は先を行け! 必ず追いつく」
「二人とも、とにかく駆け抜けよう。矢くらい、私達なら
「見えた! ……え、あ、あれは」
嘘だと思いたかった。
見間違いだと、強く願った。
でもそれは近付くほどに視界に鮮明に映り、絶望に変わる。
「り、
その両腕の袖は裂かれ、腕に
血が流れ、もう泣くことすら出来ないほど憔悴していた。
「やっぱり来たか」
木々の後ろから現れたのは、
「気付かれるかもとは思ったが、こうも早いとは。悪いが、お前達を山から出すわけにはいかない」
「門に再び結界を張るには、我が妹の命を奪うしかありません。そんなこと、あなたに出来ますか?
同時に、心が割れる音がした。
「おっと、
「たった三人だと?
「こちらも精鋭だ」
「満身創痍のお前らに何が出来る」
一歩前へ出た
「兵士たち、命は奪わず、動けなくなる程度に痛めつけろ。私達の刀傷や剣の傷跡が残ると他の
六百人の兵士たちが襲い掛かってきた。
「言っておくが、我々の兵が向かったのは何も
しかし、普段は綺麗な翡翠色のそれに、黒い稲妻が混ざる。
「青梅、私の求めに応じ、今一度、
青梅の周囲に黒い靄が出現。
それは彼の身体を包み、次の瞬間、霧散した。
「兵士を全員殺せ」
瞬きほどの、刹那。
黒い刃の閃光だけが皆の視界を横切った。
首が百、地面に転がり落ちる。
また百、百。
三百の頭部が身体に別れを告げた。
「かはっ」
「
「
血が止まらない。
青梅は従者の姿に戻り、
「ふ、二人は、みん、な、を、援護、する、の」
白梅と青梅は足が固まったように動かない。
「こ、これは、つよ、い、命令、よ」
白梅と青梅の瞳に杏色の光が流れた。
二人は悲しい顔をしながら戦闘へ戻っていった。
「
「なか、ない、で」
身体を
「まだ、大丈夫」
「
二人は頷き、戦いの中へ。
「
「すぐに行く!」
すでに
二人で
崩れ落ちる身体を、
「
「私の全ての霊力を、
「何を言っているの! あなたはその身体を、命を、生成される霊力の半分を使って生きているのよ。もし全霊力を失えば、確実に」
「それしかないもの。それに、私には
「間に合わないのはわかっているでしょう。体内で
「でも! そうしなければ、
「霊力を失い、それと同時に意識も失った状態で、
「ふ、ふたり、とも」
「
掠れた声。
もう意識を保つことで精いっぱいなのだろう。
霊力も、底をつき始めている。
「わたし、は、もう、だめ。だ、から、せめて、と、友達、の、手で、死に、たい」
「そんなこと言わないで」
「お、ねが、い」
その時だった。
白い閃光が、兵士を突きながらこちらへ向かってきた。
「
「
「遅れてごめん。
「義兄上、私は戦場へ」
「うん。気を付けてね」
「私は霊力が多い。
「でも」
「
「これなら、救える」
「じゃぁ、二人とも。お願いします」
すると、どういうわけか
(まさか……、神器なの? でも、今はそんなことどうだっていい)
「
「もう痛くないよ。大丈夫」
血が止まり、刻み込まれた文字がゆっくりと消えていく。
「あ……、み、みんな!」
「よかった……。もうあんなこと言わないで」
「うん、うん!」
「そのために来たのだから」
「これに関しては霊力を使うしかない。見逃してね、
早くしなければ、死んだ兵士の血の臭いにつられて次々と悪鬼や妖邪が集まってきている。
「いくよ、兄さん」
「頑張る」
「紅梅、結界を書いて!」と、
紅梅はすぐに飛んできた。
自身の中に記憶している結界の中から一番強力なものを出現させ、それを両手で門へと貼り付けた。
「今です、
「加勢する」
「あんまり残ってないけどね」
兵士を片付け終えた
光が強くなっていく。
「私の力も持っていけ」
結界は回転し、火花を散らして門に焼き付いた。
「で、出来た」
ちょうど戦いも終わり、その場にいる全員が地面に倒れ込んだ。
「みんな、私の近くに」
「駄目だ」
「もう
「みんな、疲れているとは思うが、なんとしても
「二人の共通の親友としてお祝いの言葉を考えなきゃならないのに。忙しいね」
「私も行く。無事でいてくれ」
「
「もちろん。任せて」
「私たちも行くよ」
梅園を伴い、
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