第2話 異世界の山の上にて

 *典型的な文章書きなれてない人間の考えた事全部書き出したような長文だったので構成し直しました。それでもまだ端折ってもいい部分がある気がする。必要な事だけ、大事な事だけうまく書いていけないのがもどかしいものですね。


 

 強い光にさらされて思わず閉じていた目を開けると、そこは見下ろす限りほぼ木が生い茂っている森に囲まれた高い山の頂上からさらに少し上の空であった。森に真っすぐな切れ目があり目を凝らしてその切れ目をたどっていくと丸太の壁に囲まれている場所が遠目に見える。

 

 星が見えてる事からこっちの時間も夜で、丸太の壁の辺りは明かりがついてる事からおそらく人間の町であろう場所だろう。長い道の先、かなり遠くが見えることに少し驚き、こちらに来て何か身体に変化が起きたのかと思った。山の上に居る割には息苦しさはともかく寒さなどを感じない。むしろ空に浮いているようなのでまだここは家の居間だった場所で体験した不思議空間の続きなんだろうな。もしや不思議空間だから遠くまで見えるようになってるのかな。


「ちょっと待ってろよ、直ぐにこの山の神が来るだろうからよ」

 馬のぬいぐるみから響いたのと同じ声に、そちらを見ると友人宅で見たことがある、ハスキー犬のような姿の灰色と白の毛並みの犬がそこにお座りのポーズで待機している。山神さまの声がその犬の方から聞こえるが、その犬は最近自分の領域で共に暮らしている犬なんだそうな。

 なんでもどこぞから迷い込んできた元人間の飼い犬らしいが、(友人宅で見た犬より痩せていた)飼い主の所に戻りたくなさそうなので山神さまの領域で一緒に暮らしてるらしい。昔から岩山の洞穴には熊やら狼が巣穴を作ることがあって、今はそんな洞穴の一つに住んでいるんだとか。

「すまんな、この領域でも直接お前さんと会ってしまうとこれから過ごすこの世界で色々影響が出そうでな。依り代越しでのやり取りになる」

「そうね、こっちの世界にあなたの力の残滓が強く残ったりすると魔物とはまた別の問題が起きそうだしね」

 女性の声がしたのでハスキー犬から目線を上げてみると、そこには見上げるような大きさの狼が居た。良く撫でつけられて整えられている毛並みはふわふわやモフモフより、サラサラしてそうだった。だがあまりにもデカすぎる。いくら自分が小柄とはいえ、見上げないと顔も見えないような巨体だ。


「遅いぞ樹海山じゅかいざん

「ごめんねみなちゃん」

「その呼び方はやめろ」

「でもみなみいわやまなんてのも可愛くない呼び名じゃない?」

「しょうがないんだ。もう決められちまったことだしな。それに樹海山なんて見たまんまの名前だって可愛くないだろうに」

 大きさがあまりに違う犬同士やまがみどうしのやり取りを現実感の薄い光景だなぁなんて思っていると


「この子が手助けの子?人型でまだ若い子、5年も借りちゃっていいの?」

「色々事情があるんだよ、話しただろ?」

「自分の領域のギリギリ境界線に新しく出来た道で起きた事故で両親が亡くなっちゃた子、でしょう」

「5年もたっていたらしい。時が過ぎるのは早いな」

「で、5年も過ぎちゃったから同じ時間かけてゆっくりと世界を修正するからこっちの助けに回してくれると。こっちの世界は万年人手不足だから助けてくれるなら大歓迎よ」

「あ、はい。なんでも霊力・・・?地脈に満ちているエネルギーを食い荒らされて困っているとか」

「そうよ~。この世界は大きさこそあなたの来た世界の星、地球と同じくらいだけど地中から湧き出ている霊力の量が段違いでね。他の世界の神様ともやり取りする余裕がある位なのよ。たまにそのエネルギーが漏れ出て別世界へとつながるようなゲートが開いちゃったりして、そこからそれを食い物にする奴が迷い込んでくるのよ。そういう奴らがエネルギーが溢れてるのを嗅ぎつけて無理やりこっちに来たりね、今増えてる奴は黒い半透明のスライムみたいな奴で、知能はあまりないみたいでひたすらエネルギーを吸っては大きくなって半分に分裂、分裂すると黒い半透明の別の姿をとって、他にエネルギーが豊富な場所を求めて移動したり、吸収を邪魔しに来る奴らと戦うために獣みたいな姿に変化するのよ。まあ、よその世界の強欲な神様がエネルギー独り占めしようとかして眷属とか送り込んでくるのよりは対処しやすいわよ」

 本能だけで食って増えて~ってタイプか。攻撃しても血とかで無さそうだし殺したとしても害虫潰した感じで済むかな。近くの農家で出たデカいネズミを追いかけて踏み殺した経験くらいしか何かを退治したり殺した経験無いからな。あまりそういうこと悩まないで対処できそうなのはとても助かる。


 この世界の霊力的なエネルギーは目に見えて、触れるほどの塊に結晶化するほど満ち溢れているらしい。なので文明もそれから力を取り出したりするような方向へ進化してきたとか。それって霊力というより魔力?よくある異世界物の魔力とか魔石ではないだろうか!これまでたしなんできた数々の作品を思い浮かべてしまう。

「ああ、この世界の人間も魔法を使うのに必要な物だからかそう呼ぶし」

 目の前のでかい狼の事を忘れて少しテンションが上がってしまった。貸してもらえるらしい山神さまの力の他に、自力で魔法とか使えるようになるんだろうか。魔法が出てくる作品を知っている人は大抵、その中の何かしらの魔法を使ってみたいと思うだろう。智幸もその例にもれず、魔法とか大好きだった。RPGで主人公のタイプを選べる時は物理攻撃が得意な肉弾戦タイプより魔法を使えるキャラを選ぶ感じだ。


「あー、楽しみにしてるとこ、水を差して悪いがその世界の魔法、めちゃくちゃ燃費悪いぞ」

 山神さまいわく、どんな軽い魔法を使うにも魔石を消費して使わなければないらしく、起こしたい現象に合わせてその属性を宿した魔石が要るので、幅広い属性の魔法を使いたいなら全身のあちこちに魔石をつけていないといけなくなるとか。強い魔法を使いたいなら魔石も相応の大きさか純度が必要になるのでほとんどの魔法使いたちは一つの属性に絞って習熟していくのだとか。空気中を漂う魔力を取り込んで魔法を使うなんてことは余程魔力が濃い場所でないと無理だし、そういう場所だと今度は魔法が強く反応したりそういう場所には豊富にある魔石に連鎖して諸共一帯がぶっ飛んだりするとか。

「まあ、俺が貸した力で魔物退治すれば自然と魔石はたまっていくんだがな。それで魔法使いたけりゃ誰かおしえてくれるやつがいるだろうさ」

 得意げな顔で胸を逸らして得意げにするハスキー、もとい山神さま。

「俺の力で飛ばした石には俺の力が乗る。んで、それが魔物に触れると魔物の身体を構築してる食い荒らした霊力に反応してな。俺の力と反応するとそれらは凝縮されて力の塊の結晶、魔石になっちまうのさ」

 相手を即死させたうえで魔石化させるなんて某大作RPGシリーズのラスボスみたいなことできるんですね。

「あーうぴーじー?らすぼす?」

 首をこてん、とかしげる山神さまは可愛かった。犬の姿なら大抵のしぐさが可愛くなってしまうだろうが。


「早速働いて欲しい所だけど、流石にいきなり実戦は厳しいでしょ。少しここで練習して行くといいわ。実際どんな感じか確かめないと。特にみなちゃんの力を込めたい石の操作とかしっかり覚えてね。霊力だまりに直接みなちゃんの力がこもったものが突っ込んじゃったりしたらそれが凝縮されてとんでもない大きさの結晶になったりしちゃいそうだわ。そうなったら私たちの力を維持する分が足りなくなったり、大きな結晶に引かれてまた別の魔物がやって来たりしちゃいそうだし。霊力だまりの付近で魔物退治をする場合は気を付けてね。まあ戦ったこともなさそうなあなたが、そういう危険な場所に早々たどり着けるとは思わないけれど覚えといてね。さ、じゃあ練習して見ましょうか」

 樹海山さまがそう言うと山の途中の開けた場所へと移された。土と石と周りに生えた植物しかない広場で頭に使い方を叩き込まれた山神さまの力を行使してみる。石や岩に対して動けと念じれば思った方向に動いてくれる。飛んで行けと思えばぶつけられたら大怪我するであろう程のスピードでぶっ飛んで行った。サイズの違う石でも、一抱えもある岩でも同じ事が出来た。魔物以外もあっさり倒せそうな威力に少しビビってしまう。だがまあ、借り物の力だ。魔物狩り以外に悪用しようとしたりすると恐らく使えなくなったりしてしまうだろう。そんな事をするつもりはないけど弁えて魔物を狩り尽くすことに集中しないとな。後は石や岩の形も少し変えられるようだ。石をとがらせてみたり、岩の方を剣のような形にしてみたり。ただし、重さは変わらないので自分の手で持って振るうのは無理そうだ。


「土操作の方は良いの?」

 樹海山さまが僕に訊いてくる。そういえば土操作なんて力もあるんだった。試してみることにしよう。

「う~ん」

 山神さまのお力である土操作は発動までが遅いゆっくりとしたものだった。動かせる範囲こそ広いものの一度に大量に動かそうとするとその分更に動きが遅くなってしまう。突然土の塊を前に出して壁にしたりといった使い方は出来なさそうである。塊にして飛ばしてみても、発動までの時間も飛んでいくスピードも遅く、当たったとしても顔に当てて目くらましに使うとかそんな感じぐらいにしか使えなさそうだった。だが、山神さまから、土操作を意識して使うと魔物がいる方向が嫌な感じとして伝わってくる。と魔物限定ではあるが索敵に使えると教えてもらった。土で索敵、石で討伐。その流れで行こう。魔物相手に借りた力を乗せた何かを触れさせるだけ良いなら土をばら撒いて触れさせてもいい気がしたがあんまり細かい状態で触れても効果は出ないらしい。あとやっぱり石とか岩の方が力のノリが良いとのこと。

 これで後は実際に魔物と戦うだけだ、早速退治に行かせてくださいと言うと

「ごめんなさい、この世界には魔物退治に沢山の助っ人が来てくれるんで、外の世界からの玄関口みたいな場所が出来ていてね。あの麓の道の先の町にもあるのだけど。呼び出された助っ人はそこからこの世界へ現れることになっているのよ。ついでに色々登録して、どんな活動をどこでしているかが大体わかるようになっているわ。そうしないと借りた力で暴走したりする子もいるのよねぇ。人型の子はハマると凄い活躍をしてくれる子が多いんだけど、途中から余計な事しだしたりして迷惑かける子もいるのよ。だから、人型の子の助けはいらない!って拒否してる神様もいるわ。君は大丈夫よね?」

「仕送りのためにも魔物退治に専念します」

「仕送り?」首をかしげる樹海山さま(サイズのせいで可愛くは見えなかった)にたいして山神さまが「あー智幸は今一緒に暮らしている事故の後育ててくれた祖父母への恩返しを強く願っているんだ。だからやる気を高めてもらうためにこっちで魔物退治頑張ってくれるなら、紹介料と活躍に応じて俺の取り分になる報酬を分けて元の世界の爺さんたちに与えてやれるって話をしてな」と説明をしてくれる

「それってすんごい手間増えちゃわない?異世界で過ごす期間が延びることになっちゃっても知らないわよ」

「こういうイレギュラーな事に本来は対処する知り合いがいてな。ちょーっと勝手な事言ってきたから力でわからせてこの事に関する無茶は多少の事なら押し通せるんだ」

 自慢げな声色に少しあきれたような感じにため息を吐いた樹海山さまが、また怒られるようなことにならないようにね。と釘を刺した。なんでも南岩山の内部には様々な鉱石が眠っており金などもあるそうな。田舎の行き来し辛い所にあるので長年発見されていないんだとか。山の所有者が昔からのこのあたりの大名?豪族?の子孫らしく、負け戦で逃げている時にこの山の洞穴に身を隠して追ってから逃れた昔話があって、それ以来この山に命を助けられたと言って麓に社を立てて拝んでいるそうな。だから金があるとわかったとしても鉱山になったとは限らないらしい。

 そんな山に勝手に入ってエロ本捨ててった奴がいるのか・・・バレたらめっちゃ怒られそうだな。


「それじゃ町に行きますか。言葉は通じるから大丈夫よ。他にもこっちのことの細かい事とかは行った先で教えてもらえるわ」

 沢山人なりなんなりを呼んでいるならそれに対するマニュアルでも作られているんだろうなぁ。

 ふわふわと浮かびながら何かに引っ張られる感じで山を下り、そのまま森の上を飛んでいる。結構距離がありそうだったが、森の上を一直線に向かえるなら小一時間でつくだろう。一瞬で移動できるのは山の中だけで、人の町にまでは行けないとのことなので、このまま行くしかないだろう。

 山から歩いて行けと言われなかっただけマシであろう。山の範囲から抜けたあたりで急に五感が復活したように一気に色々な事が感じ取れた。不思議空間が終わったのだろう。まずは森の中から響いてくる虫や動物の立てる音、鳴き声。元居た田舎よりも強く感じる森の臭い。緑の香りとでもいうのだろうか。上から見下ろしていても茂った枝葉に遮られて森の中は全然見えない。

 夜だから鳥も飛んでいないし。視覚での変化はたまに吹く風で葉っぱが揺れ動くくらい。これ、歩いて行けって言われてたら朝になるまで待ってから動いてただろうな。上からではなく、この鬱蒼とした森の中を徒歩で移動するならせめて少しでも明るくないと。昼でも暗そうなのに夜歩きはちょっと色んな意味で無理かも。田舎で過ごしていたとはいえ、夜に街灯がまばらな道を歩いてても怖いと思うし、それがちょっとした森林や小山の脇だったりすると、なんとなくそっちから何か出てきそうなんて考えちゃうものだったし。いや、でも魔物退治なら昼夜問わずやらなきゃダメなのかな。夜の方が活発に動くから狩りやすいとか言われたら、腹を括って頑張ろう。


 恩返しのためにと軽く決断してしまったが、いざ異世界に来てみると色々な現実が見えてしまった。諦めるつもりは全くないが。こんな森と山しかない所で5年過ごすのか。爺ちゃんたちの昔の家に引き取られていたらもう少し夜の森とかにも耐性つけられたかな。

 いざ目の当たりにしたどこまでも広がる真っ暗な森の様子にビビりながら神様たちに連れられて移動している。お二方は雑談しながら前を行っており、あの巨体が町へと近づくのは大丈夫なんだろうかという心配が浮かび上がってくる。新手の魔物なんて騒がれないだろうか。

「魔物の基準は霊力、魔力と言った方が分かりやすいのだっけ?まあ、その魔力が変質した体を持つもの。だからそういう存在だったら近づくとわかるような仕掛けが人の町にはあるから、それが警報とか出すだろうし私達には反応しないから直接見られなきゃ大丈夫よ。私たちの身体も魔力の塊と言えばそうなのだけどね。夜更けに森に入るような人もあまりいないでしょうし。人からすればやっぱり怖いもんね」

 さっき怖がってたのもばっちり気付かれていたんだな。当然か。

「どうする?無理そうならやっぱり俺の所で5年のんびりするか?」

「いえ、ありがたい申し出ではあるのですが、がんばってみます。こっちで頑張れば爺ちゃん婆ちゃんと一緒に居られる時間が少しでも長くなるチャンスがあるんですし」

「なぁに、随分気にしてあげるじゃない。この子に惚れた?」

「何でもすぐそっちに結び付けるのはやめろ。境遇に少し同情しちまったし、今時珍しいくらいに仲良く一緒に暮らしてる家族だったしな。それが5年も離されるのは可哀そうとも思うし」

「人間のお年寄りとの5年だものね。それは私もそう思うわ。本来なら0だったのが5年も一緒に居られたのに、ちゃんと修正しないと全部なかったことにされちゃうんでしょう、そんなの残酷すぎるわ」

 上位の神様が何を基準に決めてるかはどこもわからないけれど、世に嫌な事故事件は沢山溢れているし、全部に何かしら意味があるのかどうかもわからないものだしね。考えてもどうしようもない事よ。樹海山さまも色々思ってくれているようだ。

「でもおかげでこっちの世界に来れましたし、頑張って稼げばその5年で二人の寿命がもっと伸びたり、痛む体を治したりできる可能性があるんですよね」

 それが分かってるから頑張ろうって気持ちは枯れることなく湧き出て来るだろう。


「話してる間にかなり街に近づいたなこの辺からなら行けるか?」

「あの場所はいつ来るかわからない異世界からの助っ人待ちのために誰かしらはいるはずだから。ここから今、送っても大丈夫よ」

「よっし、んじゃ智幸、こっからお前を街中へ飛ばす。玄関口みたいなものと言ったな。俺みたいなよその世界の神とかが助っ人送りやすいように目印がある建物があるんだ。そこに居る奴に異世界からの助っ人だと告げればいい」

「その格好なら見ただけでわかりそうだけどね」

 家でくつろいでいた時の恰好のままなので下は少しもこもこしてて温かいスウェット、上は長袖のTシャツに同じく冬用のトレーナー(ただし祖父母チョイスで恐らく猫であろうちょっと不細工にデフォルメされた絵がでかでかと付いている)後は普通の下着を着用している。そういや着替えとかはこっちで買うしかないんだろうなぁ。

「心配すんな、向こうに残しといてもお前さんの痕跡として世界の修正の際に消されちまうってんで持ち物一式全部詰めてある。5年間置いとくよりは消しちまった方が修正楽らしいからな」

 山神さまが前足を振ると、僕の左手首に石でできた、一つだけ宝石みたいな赤い石はまっている腕輪のようなものが付けられた。

 「その赤い奴に触れながら中身を取り出したいと思えば取り出せるようになる。ただし向こうの世界の私物だけだぞ。こっちの世界の物は入れられない」

 それは残念。こっちの物にでも使えるならとても便利だったろうに。

「じゃあこっちの物の出し入れに使えるように私も少し手を貸してあげるわ」

 でかい狼が迫力ある前足を振り回す。するとどこからともなく緑の細い蔦が伸びてきて腕輪に巻き付いて赤い宝石のような部分の周りに模様のような形を作って溶け込んだ。

「これでこっちの世界の物も仕舞えるわ。なにか私達に捧げたいものとかあったら遠慮なく入れてね。その時にお供えしますとか思いながら入れてくれたら私たちの所へ来るから」

 ストレージゲットだぜ!やっぱりこういうのが無いと異世界で過ごせる気がしないね。特に時間が止まったりする機能は無いようだけど大量にこちらの戦利品である魔石とかを運ぶ際に苦労しなくなりそうだ。

「とても助かります!ありがとうございます!」

 感謝を込めて深く頭を下げる。

「やる気があるみたいだからサービスよ。先行投資ね」

 ここまでしてくれたんだ、きちんと5年、やり遂げて見せよう。

「よし、じゃあ飛ばすぞ。しっかりやって見せろよ」


山神さまの声とともにふっと一瞬意識がぶれるような、目が回るような感じになり、気が付くと暖炉が一つあるだけの大きな魔法陣のようなカーペットらしきものが敷かれている屋内に居た。


「新しい助っ人、来た」

声がする方には大きな岩人形?みたいなのが立っていた。ゴーレムとかかな?

「ようこそ助っ人。私はこの世界の岩石人。岩食い種族の戦士、ロッカ。ともに魔物と戦う存在を歓迎する」

「あ、どうも。僕は山宿智幸と言います」

 本当に言葉が通じたことに安心したけど目の前の喋るストーンゴーレムめいた存在のでかさにビビる。高さは2メートル半くらいで僕と丁度1メートルくらい差がある。幅も厚みも凄いのでとても重そうな身体だ。普通の家じゃ床抜けちゃうんじゃないかな?なんて思ってしまう。この部屋は石づくりみたいだから大丈夫そうだけど。

「夜も遅いが助っ人が来たらすぐにこの町の責任者である人間に顔合わせする必要がある。そのためにもまずはこれを」

 デカい手にチョンと小さく乗せられたのは一枚の紙だった。大きさは学校とかで配られる縦長のプリントと同じ位だろうか?複雑な文様と字のようなものでびっしり覆われたそれに手のひらを当てるらしい。ちょっとだけ切って、血を流しながら。ほんの少しだけだ、と言いながらロッカさんが石のナイフ(僕からすればデカい包丁に見える)を僕の指さきへ走らせる。あまり痛みもなくじんわりと血がにじんできた。知らないうちに紙で指先が切れてた時のことを思い出しちゃって少し嫌な気分になる。そのまま手を紙に押し当てたら、流れ出る血が薄く広がり手のひらの形となって紙に焼き付いた。じゅうって肉が焼けるような音がしたが、特に熱いわけでも紙が燃えたわけでもなく、指先の傷跡が少しムズムズしたと思ったら傷がふさがり血も止まり痛みもなくなっていた。


「助っ人がどんな能力を持っているかとか、名前とか、色々浮き出てくる紙だ。その際ごく弱い治療の効果も発揮させて血も止める物なのだ」

 昔、ちょっとした傷だったのになかなか血が止まらずそのまま体調を崩してしまった助っ人が居たそうで。それから傷を治す効果も一緒に発動させるこの鑑定紙を作るようになったとか。

 色々と字が浮き出た用紙を持ってロッカさんが部屋から出て行こうとする。

「あの、僕はどうすれば?」

「少し待て。すぐ戻る」

そう短く答えるロッカさんは手のひらに紙を握り込んだかと思うと石の壁に溶け込むように入っていき、壁の向こう側へと抜けてしまったようだ。


「ドアも無いからどう出入りするのかと思っていたら・・・」

 流石異世界、自分の常識じゃ理解できない事が起きるな。重い足音が遠ざかっていき、やがて何も聞こえなくなったので気になってさっきロッカさんが抜けた石の壁をペタペタ触ってみる。何も起きない。ちょっと意識して山神さまの力を向けてみるこれなら動かせそうだ。良かった、自力で出ることは出来るらしい。放置されたり忘れられることなんてないとは思うが念のため。いざとなったら脱出できるとわかったら、出口も窓もない部屋で感じる息苦しさも減ったような気がする。てか、こんな密室に暖炉しかないって何なんだ?暖炉に火をつけてたら酸欠で大変なことになるだろうし。


座る椅子もないのでぼーっと突っ立っていると3分もしないうちにまた重い足音が近づいてきた。壁の前まで来たかと思うとさっきとは違い、その壁が左右に分かれるように動いていった。そこに居たのはロッカさんと耳のとがった小さな黒髪の少女だった。




*雑談

つたない作品ですが読んでくださってありがとうございます。読みづらそうとか自分で思ってても上手く省略出来ず文章書くのってやっぱり難しいですね。何度も書いては消し直してはまた読み返して修正したくなる。毎日投稿できる人は書き溜めしてないというならきっと文章を書くために産まれてきた人なんでしょう。

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