第17話 二重人格
☆
「姉に壊された」
そう言いながら美歩と話していた。
それから俺は電話を切る。
そして目元をマッサージする。
考え込む。
「...姉、ねぇ」
美歩はそう言うが完全に齟齬があった。
何故なら美歩のお姉さんは良い人だ。
一体何故そんな事を。
もしかして。
そう思いながら俺は考え込む。
答えは見つからない。
俺は考えながらそのまま部屋に戻る。
「十色お兄ちゃん...その」
「...ああ。どうしたんだ」
「...今まで聞いた事で調べたんだけど」
「調べたってのはさっき話した美歩の事か」
「...もしかして悪い方の多重人格障害なの?」
そう言われてから俺は湊を見る。
湊は静かに俺を見据えながら「...」となっている。
凄いなコイツ。
僅かな情報でよくそこまで行き着いたものだ。
「...その通りと言えるかもな。...アイツにはお姉さんは居るけどその人はかなり良い人なんだ。親を殺した、洗脳したのはアイツ自身だが。作り話が多い」
「じゃあ今までの話って」
「全てアイツが悪い。俺はあくまで分かった様に話を聞いてやっただけだ」
「今の人格は」
「...加奈子っていう性格だ。自らの妹を名乗っている」
加奈子は彼女の。
つまり美歩の中に居る妹とされる。
因みに現実に居るお姉さんの名前は代美子(よみこ)という。
代美子さんは色々と美歩の面倒を見ていたが。
最終的には代美子さんもダメージを受けたので一次的に遠くに逃げている。
「...何でそんな人と付き合っていたの?十色お兄ちゃんは」
「...変わると思っていたんだ。ただ全てが甘かったんだ」
「十色お兄ちゃん...」
「...行政、施設の判断は早かった。...彼女、つまり美歩を保護したが。逃げられたんだ」
「...」
「彼女はもう落ちたと思う。...多分、救いようがない」
「...そうなんだね」
「ああ。...せっかく優しく接していたがもう無理だな」
そして俺は胡坐をかいて座る。
それから寝転がって天井を見上げた。
目を閉じるがろくなことが浮かばないな。
俺はそう思いながらそのまま起き上がってから湊を見る。
「湊。もう忘れよう」
「...うん。十色お兄ちゃんがそう言うなら」
「俺はアイツの事なんぞ考えてもしゃーないって思い始めた。だから忘れる」
「そうだね。十色お兄ちゃんが言うなら」
だが忘れたとしても恐らくアイツは。
奴は俺達を忘れない。
だからこそ危険はまだあるが。
というか...恐らく。
☆
私はある1つの答えに行き着いた。
それは美歩という人間が多重人格である事。
病院に言ってないらしいから状態が悪化している事。
家族を...虫けら程度にしか思って無い事。
「...」
夜になってから私は横になって天井を見上げていた。
横からは微かな寝息が聞こえる。
つまり十色お兄ちゃんは寝ているのだろう。
私は独り寂しく天井を見上げる。
そして十色お兄ちゃんの寝顔を見る。
「ウフフ。凄い可愛い」
私はそう呟きながら十色お兄ちゃんを見てからまた横になる。
それからまた天井を見上げていた。
お金が幾らあっても勝てないものがあるのに佐渡美歩という奴は。
そう思いながら私は小さく欠伸をする。
そして横になってから目を閉じた。
☆
翌日の朝に起きてから私は十色お兄ちゃんの邪魔にならない程度に外を歩く。
それから伸びをしながら河川敷をゆっくり冒険したりする。
すると前から犬を連れた中年ぐらいの女性が歩いてきた。
私はそんな女性に会釈をしてから更に歩いた。
そうしていると前からまた女性がまた歩いて来たが今度は会釈をしなかった。
何故かといえば。
「...アンタ...」
「あれ?湊ちゃんだっけ」
「...」
目の前の美歩は何事も無い様に微笑んでいる。
私はその姿に冷や汗が出る。
この女は本当に二重人格なのか?
だけど確かめようが無いが。
本当にそうだとしたら相当に恐ろしい事になる。
「....佐渡美歩。貴方は今、何処に行こうとしていたの」
「何って。会いに行こうとしたんだよね。加奈子、会いに行こうとしていた」
「...佐渡美歩じゃないの」
「佐渡美歩は私の姉だよね」
「何なの。貴方」
「私は私だよ」
話が通じない。
しかも何だか話が歪んでいる。
これ以上話したら吐き気がしてくる。
そう思い去ろうとした時。
「ねえ。湊ちゃんだっけ」
「...はい」
「...私の事、怖い?」
「...怖いとかじゃ無い。ただ最低だって思う。貴方の存在の全てが」
「...私が最低だって?どうしてそんな事を言うの?」
「貴方は全てを破壊する。悪魔の様な存在だよ。間違いなく。悔い改めるべきだと思う」
そして私は佐渡美歩を見る。
佐渡美歩はニヤニヤしながら私を見る。
私は唇を噛んだ。
それから私は睨んだ。
「死んだ方が良いんじゃない?貴方は」
「...あはは。私はお姉ちゃんと一緒で死なないよ。そういう人間だから」
そして佐渡美歩は手を振った。
それから踵を返してから薄笑いで私に向く。
「私は私だから」
「...本当に地に落ちると思う。貴方は」
「お姉ちゃんも諸共だけど地には落ちないよ。絶対にね」
佐渡美歩は。
それだけ言ってから。
私に手をまた振ってこう言った。
「出直す」
と言ってから去って行った。
屑野郎め。
そう考えながら私は確かに反対側に行った佐渡美歩を見ながら。
不快な気持ちで歩いた。
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