第9話 (過去話)幸せなる日々
最近のクソガキの趣向は分かったものでは無いなぁ。
そう考えながら俺はそのまま準備運動をする。
すると子供達が一斉に並んだ。
所謂、体育大会の様な並びである。
そんな並びをする必要は無いんだが。
そう思いながら子供達を見る。
すると赤間ちゃん。
丸メガネをしている女の子が切り出した。
「あの!優勝者に何かごほうびみたいなのがあったら嬉しいです!」
「ああ。じゃあ最後まで残って優勝した奴にはアイスを提示する!」
「わー!」
赤間ちゃんもそうだがみんなはしゃぎはじめながら笑顔になる。
顔を見合わせてからうずうず。
だから子供は可愛いんだろうけど。
同級生だったら舐めてんのか的になるかもしれないが。
「ね、ねぇ。赤間ちゃん」
芳次くんが赤間ちゃんに話しかけた。
その芳次君は満面の笑顔である。
俺は?を浮かべて芳次くんの顔を見る。
細い顔をしている少年。
赤面しており...。
成程と思った。
「なーに?芳次くん」
「も、もし鬼役になったら僕が引き受けるからね」
「え?」
「と、とにかく。僕が引き受けるから」
彼は恋をしているんだな、と思う。
勿論、嘘か本当か分からないから何も言わないけど。
そう思いながら俺は2人を見る。
それから俺はみんなに声を掛けた。
「んじゃまあ整列してみっか?」
「はーい」
素直過ぎる。
そう考えながら苦笑いを浮かべる。
それから俺はそのまま子供達を整列させてからそのまま鬼ごっこの為の鬼役とかを決める。
☆
湊と芳次くんが最初の鬼役になった。
俺は正直、足は早い方だけど今回は遅めにしようと思う。
何故かっていえば可哀想だし子供相手に本気を出すとか大人げない。
「絶対に捕まえるぞ!」
という感じで湊は意気込んでいる。
俺はそんな湊を見ながら苦笑いを浮かべる。
それから俺達は散り散りに逃げる。
で、遊んだ。
すると湊が何だか口をへの字にしていた。
何だよ。
「湊?」
「お兄。本気を出してないな?」
「...いや?そんな馬鹿な」
「あ、それ私も思いました」
「の、紀子ちゃん。俺はガチにやっていたよ?」
「そんな馬鹿な。だってお兄の走る速度が私達と同じなんて考えられない」
「だよねー」
湊はジト目で俺を見ている。
俺はその姿に苦笑いを浮かべながら溜息を吐きつつ湊を見た。
すると湊は俺を見てくる。
「...お兄。本気を出しなされ」
「湊。本気を出したら全部反則になる」
俺はそう言いながら湊の頭を撫でる。
それから苦笑しながら湊の髪の毛をぐしゃぐしゃにした。
すると如月ちゃんが気の利く事を言った。
ツインテールの女の子。
「私的にお兄さんは私達に対して優しさを表していますよね?」
「そうだな。俺はお前らに優しくしたいから加減している。だから今、俺はお前らにこうやって接しているんだ」
「そうなのか?」
「反則プレーなんぞ楽しくも無いしな」
それから如月ちゃんを見据える。
如月ちゃんはえっへん的な顔をしている。
子供って良いよな。
こうしていたら信じるし。
実際は違うんだが。
「あれ?」
そうしているとその様な声がした。
其方に向くと実奈が居る。
部活動終わりっぽい姿である。
俺は目を丸くした。
「よお。実奈」
「こ、子供が増えたね」
「ああ。それじゃみんな挨拶してくれ。俺の同級生なんだ」
すると湊以外は挨拶をした。
俺は湊に向く。
湊は怒った様にそっぽを向く。
全くコイツは。
「オイ。湊。キチンと挨拶しろ」
「...こんにちは」
「あはは。こんにちは。湊ちゃん。やっと初めましてだね」
笑顔になる実奈。
それから膝を曲げて湊を見るのを止めて俺達をそれぞれ見る。
「で?何をしていたの?湘南くん」
「鬼ごっこだな」
「え?何それ楽そうだね」
「ああ。お前はスカートだから無理だな」
「?...平気だよ?下はスパッツだし」
「え?!」
俺はスカートを捲る実奈を見る。
そして慌てた。
すると実奈はニヤニヤした。
「ふーん。子供の前で最低だね」
「揶揄うな」
「あはは。ごめんごめん。でもさ。鬼ごっこできるよ?私」
「でもお前...疲れているんじゃ?」
「ううん。湊ちゃんと君とみんなを見たら元気とやる気が出た」
湊の頭を撫でてから立ち上がる実奈。
それからニコッとしてから髪の毛をヘアピンでそのまま留めた。
そしてストレッチをしてから俺を見る。
「でもさ。もし良かったら鬼ごっこより缶蹴りしない?走りまくるには十分楽しいと思うし」
「は?このクソ暑いのにか?!」
「なーにだらけてんの。湘南くん。だって私達だって15歳だよ?もー。そんなんじゃ成長止まるよ?」
すると子供達がワクワクな感じを見せた。
期待に染まっている顔である。
それから実奈は周りを見渡して鞄から空き缶を取り出した。
ニヤッとしながら缶を公園の地面に置く。
それから実奈はパッカーンと快音を響かせた。
体操服の上着を腰に回して縛る。
それから子供達を見ながら、どうよ、と言わんばかりの顔をした。
「すっげー!ねーちゃん!」
「めちゃくちゃ凄い!」
子供達は目をまるでダイヤモンドの様にキラキラさせて大興奮。
それから思いっきり駆け出して行く実奈。
まるで彼女も小学生だ。
苦笑しながら俺は手を広げて、やれやれ、としながらそのまま実奈を湊と一緒に追った。
思ったのは。
これが子供との接し方なんだな、と考えた。
そして何というかこの幸せが続いたら良いな、とか思ってしまった。
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