第10話 (過去話)学ぶクソガキ

「そういやお前さ、確か養子を入れんだってな?迎え入れるっつーか」

「あ、そうそう。私、養子の関係で一応、お姉ちゃんになるんだよ!」

「また何で?」


俺は汗だくになっている座りに来た実奈を見てみる。

すると実奈は苦笑しながら肩をすくめる。


「精子と卵子がうまく結合出来なかったみたい。なんか毎日頑張っていたみたいだけど。だから預かる事にしたの」

「ああ、そういう事か。だからまあその...っていうか女子が精子とか卵子言うなよ!?」

「うん。分かってる。だけど大切な話だよ。真面目にね。下手すれば失敗するらしい。精子と卵子の事もそうだけど養子も気を配らないと」


実奈はスポドレを一気に飲み干した。

それからニカッとする。

八重歯が見えて赤面する。

濡れ濡れ女子の柑橘の香りが。

クラクラだ。


「実奈。熱中症にはマジに気を付けろよ。マジに。んで子供達もな!」


それから俺は立ち上がって虫取りとかを頑張っている湊達を呼ぶ。

そしてぱんぱんと手を叩いた。


「ホイホイ。じゃあ水分補給してなー」

「あーい!」

「今日楽しいね。如月ちゃん」

「そうだね。赤間ちゃん」


みんな各々で楽しんでいる。

まあこれは良かったと思う感じだ。

そう考えながら俺は冷たいクーラーボックスの中にさっき買ったヒェヒェのドリンクを5本を渡した。


「気がきくね。湘南くん」

「あったりめぇよ。気絶とかしてもらったらたまらんわ」

「まあ確かにね。それは親御さんに迷惑がかかるだろうしね」

「今の責任者は俺達だ。だから絶対に何かしらあったら困るんだわな」

「カッコいいね。君」

「はは。冗談でも嬉しいよ」

「冗談、か。でも本気な面も有るんだけどなぁ。ペルソナとか気にしない素の感じを惰出せるのって君だけだし」


何でそんな勘違いしそうな事ばかり言うんだコイツはよ。全く。

俺は思いながら周りを見渡す。

すると何故か湊が居ない。

俺は数秒考えそのまま顎が落ちた。


「お前ら!湊を見なかったか!?」


持っていたものをベンチに置いた。

すると子供達は考えてから周りを見渡す。

それから首を降ってから子供が探す中を探す。

ったくあのクソ野郎!


「湊!どこ行った!居るなら返事してくれ!」

「湊ちゃーん!」

「湊ぉ!」


ヤバいな。

返事がないわ。

そうなると警察か?

そう思っていた矢先。

公園の奥の立ち入り禁止区域、貯水槽の周辺あたりから湊が出てきた。


「あ、お兄。実はすっげーでかいカブトムシが...お兄?」


俺は激昂した。

それから頭に強めにチョップする。

すると湊はまさかの俺の行動だったのだろう。

涙をブワッと浮かべた。


「当分俺から離れるの禁止な。お前、俺がどんだけ心配したと思ってんだ!!!!!」

「お、に、お兄...」

「貯水槽とか下手すりゃ落ちて死ぬんだぞ!」


マジにマジにマジに。

湊が誘拐されたんじゃ無いかって。

池に落ちたんじゃないかって。

肝を冷やした。

そう考えながら俺は号泣して嗚咽を漏らしはじめた湊。


「おに、お兄ちゃんに見せたかった。本当に大きなカブトムシだった、から!ウワーン!」

「頼むからお前の...命を大切にしてくれ。湊。本当に俺はお前が大切なんだよ。分かるか?俺だって本当はお前にチョップなんかしたく無いんだけど!」


すると実奈がやって来る。

それから膝を曲げて湊に視線を合わせる。

そして真剣な顔をした。


「湊ちゃん。湘南くんの言っている事。真剣に分かる?」

「分かります...」

「本当に危なかったんだから。まだ貴方は子供。1人でそんなに動き回らない。行動しない。溺れたら大変だよ?」

「...はい」

「...よし。これは湘南くん、私とのお約束ね?」

「はい」


そして実奈は俺を見る。

それからニコッとしてから実奈は湊の手を握る。


「分かったのなら宜しいぞ。...じゃあ行こうか。湊ちゃん。湘南くん」

「ああ。有難うな。実奈」

「うん。今回は危ないって思ったから」


こうして湊の居なくなった事件は終わった。

それから俺達は公園に戻ってからドッジボールをする。

そして汗を流した。



「そろそろ帰ろうか」

「そうだな」


結論から言って大会で優勝したのは...実奈だった。

だけど実奈は辞退してから俺達にアイスを配る。

それから笑顔で帰って行った。

俺はみんなを送り届けてから湊を見る。


「湊」

「...うん」

「...今日、有難うな」

「私、何もしてない」

「...いや。カブトムシを取りに行った時。...俺は嬉しかった」


すると湊は顔を上げた。

それからうりゅっと涙目になる。

その姿に膝を曲げて湊の手を握る。

そして苦笑した。


「今日は悪い事をお前はした。だけどそれは明日に活かしていければ良い」

「...あしたにいかす?」

「そう。学ぶって事だ」

「...うん」

「悪い子になりたく無いだろう?」

「...なりたくない」

「じゃあ学ばないとな」


そして俺は湊の手を握って帰る。

その際に湊は赤くなっていた。

だけどこれは夕日のせいだろうと俺は何も思わなかった。

それから湊を送り届けてから俺も帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る