第8話 (過去話)クソガキと同級生クソガキ

「ふぉほっほっほ」

「...湊。何だそれは。いきなり飛び掛かって来るとは。朝なんだぞまだ」

「何を言っているかわからない。けど魔法使いじゃ」

「...朝から嫌なもん見たぜ」


朝、クソガキに腹に乗られた。

起き上がるとクソガキが顎髭をしていた。

というか白いサンタクロースコスプレ用の髭である。

そしてどっからか持ってきた枝の杖を持っている。

何だコイツ。


「魔法使いだぁ?というか何でそこは魔法少女じゃねーんだよ」

「面白みが無いだろ。分かってないな。お兄」

「...お前の様なクソガキにそんな事を言われるとは」

「何度も言うけどクソガキじゃないですぅ」

「何を言ってんだクソガキ」

「またクソガキって言った!」


湊はムッとしながら俺を見る。

俺は肩をすくめてから言う。


「お前は何をしに来たんだ。爺さん」

「よくぞ聞いてくれたな。わしは願い事を叶える」

「はぁ?」

「願い事を叶える」

「二度言う必要は無い。1度で聞き取れたからな。ただそれ魔法使いというよりかはどっちかと言えば木こりの話じゃね?」

「木こりの話...」

「そうだな。湊は読んだ事無いか?」

「聞いた事があるからしている」


ごっちゃになってんぞ。

まあ子供だからなぁ。

そう思いながら俺はベッドから降りる。

それから胸を張っているクソガキを見る。


「まあその。...どういう願い事を叶えてくれるんですか?」

「悩みを話してからじゃ」

「...俺には悩みは無いんですが」

「てすととかあるじゃろ?」

「嫌な事を思い出させてはそれは最早、魔法使いではございませんぞ」

「まあまあ。で。...てすとの勉強で迷っておられはせぬか」

「あー。まあそうですね」


胸を張る湊。

俺はその姿を見ながら苦笑する。

それからノリノリになってから答える。


「まあそうですね。...テストが消えればなって思いますよ」

「ふむ。それは無理じゃが」

「無理ですか...」

「じゃが。一緒に居る券をやろう。私が常に傍に居る券だ」

「お...おまえ。これ作ったのか?」


小さな文字でお手伝い券と書かれた50枚綴りになっている紙を貰った。

違う絵も1枚1枚描かれている。

湊を愕然として見る。

すると湊は頷いた。


「うぉっほん。わしにかかればお手すきよ」

「それは意味が違うけど。...でも何でいきなりこんなもんを?」

「そ、それは...」

「...?」

「い、一緒に居たいから」

「本音が漏れましたな。爺さん」


湊はムッとして怒る。

俺に向いてきた。

それから俺の膝に乗ってくる。


「嬉しいのか嬉しくないのかどっちじゃ」

「嬉しいに決まっているだろ。...何でいきなりこんな事になってしまったのか分からないけどな」

「うぬ。...とにかく。一生懸命に作った、から」


そう言いながら湊は俺を見る。

それから笑顔になる。

爺さんの癖に生意気な。

そう思いながら俺は高い高いをする。


「湊。有難うな」

「お兄。高いよぉ」

「まあお前の一生懸命さは伝わったからな。...湊。有難うな」


そして俺は湊を下ろす。

すると湊は俺を見てから髭を外した。

それから俺に再度向く。


「鬼ごっこがしたい」

「うーぬ。そうなるともう少しだけ人数が要るな」

「知ってる。だから近所の子供を集めたぞ」

「...おう。マジか」

「そうだ」


俺は驚きながら湊を見ていると「こんにちはー!!!!!」と大声がした。

驚愕しながら見下ろす。

するとそこに子供が5人程居た。

湊曰く。

みんなお友達だそうだ。



「よしよし。じゃあ公園で鬼ごっこといこうか」

「ですね」

「だな!」

「そうだな!」


柴宇君、芳次君、如月ちゃん、紀子ちゃん、赤間ちゃん。

それから湊と俺。

その子供6名と俺は公園にやって来た。

俺は子供達に指示をする。


「準備体操をキチンとやれよー」

「はーい」


威勢がいいクソガキで不安だった。

だけどこういう所は指示に従うのな。

そう思いながら俺も準備運動をしていると紀子ちゃんが寄って来た。

ポニテの少女。

生真面目そうな感じの女の子。


「湊ちゃんのお兄さん」

「ああ。呼び辛いだろ?俺の名前は一応、湘南十色だから」

「じゃ、じゃあお兄ちゃん」

「お兄ちゃん!?」

「ふぇ?あ、駄目ですか?」


おに、うーん。

こそばゆいが仕方があるまい。

というか湊にもよくお兄と呼び捨てにされるのに。

何かこうして聞くと新鮮だな。

そう思って居ると湊に蹴られた。


「何すんだコラ!」

「ふーんだ」

「...???」


何でこんなに不愉快そうなんだ。

そう思いながら紀子ちゃんに向いた。


「ところでどうしたの?」

「あ、えっとですね。暑いです。飲み物が尽きて飲み物を買いに行きたい時は?」

「それは俺に言ってくれ。一応、君達よりかは年上だしな」

「分かりました」


そうして紀子ちゃんは笑顔になって戻って行く。

湊を見た。

何か知らないが眉を顰めている。

いじけている。


「湊。どうしたんだ」

「...何でもない」

「何だよそれ。お前な」

「...じゅんびするもん」


そして湊は5人の中に入って行った。

ちょっと意味が分からないんだが。

誰か説明してほしい。

そう思いながら俺は?を浮かべて湊を見送った。

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