第5話 許さない
「という事があったな」
「そ、それは思い返さないで下さい」
「でも本当に成長したよなお前」
過去は過去の事で今は今だ。
クソガキは美少女高校生になってしまった。
何というかそんなクソガキだった湊と一緒にこうして笑い合える日がまた来るとはな...世の中も凄いもんだ。
そう思いながら俺は翌日、朝起きてから湊と話していた。
因みに会社には退職届を提出した。
まあその一方的に文句ばっかりだったが。
俺は知ったこっちゃない。
正常な頭に戻ったが...この事は労働基準監督署に行っても良い様な案件だ。
「十色お兄ちゃんがまともになって良かったよ」
「そうだな。...1日という時間が必要だったけど」
「...じゃあこれで晴れて私と結婚出来ますね」
「待て。そうはならん」
そして俺は迫って来る湊の額を弾く。
それから俺は立ち上がった。
開放感があった。
正直...もうあの職場には戻りたくないな。
「ところで十色お兄ちゃん」
「...ああ。どうした」
「もしかして誰かと付き合っていました?」
「...」
「...」
何でそれを知ってんのよ。
そう思いながら俺は青ざめる。
それから俺は汗を噴き出す。
すると湊はニコッとしながら向いてくる。
「で?彼女さんは?十色お兄ちゃんは分かりやすいですね」
「...訳を話すとな」
そして俺は全てを告白した。
すると湊は「...」という感じで豹変した。
というか氷女の様な寒気を感じた。
俺はゾッとしながら向く。
「み、湊?」
「そうだったんですね。...私、何も知りませんでした」
「あ、ああ」
笑顔に戻る湊。
それから薄ら笑いの様なものを浮かべる。
な、何でしょう?
そう考えながら俺は湊を見る。
「...ああ。お気になさらないで下さいね。十色お兄ちゃん。私は平気です」
「あ、ああ。しかし平気そうに見えない」
「いえいえ。まともです」
「...」
「でもアハハ。そうだったんだ」
「...み、湊?」
湊は暗黒の様な感情を思い浮かべる。
俺はその姿にゾッとした。
な、何を思っている。
☆
そうか...そうだったんだ。
十色お兄ちゃんは相当に...傷付いていたのか。
そう思いながら私は心に刻み込む。
その女を、だ。
○○というその女。
そのうちに全ての悪事が明らかになるだろう。
私は絶対に許さない。
あくまで十色お兄ちゃんは甘いかもだけど私は決して許さない。
「...」
私はそう考えながら十色お兄ちゃんに笑顔を浮かべる。
すると十色お兄ちゃんは気を逸らす様に立ち上がる。
それから私を見てくる。
「と、とにかく。外に出てみないか」
「そうですね。十色お兄ちゃんは仕事から解放されましたしね」
「...何か恐ろしい事を考えてないか」
「いえいえ。私はいつも通りです」
クソアマが。
そう思いながら私はニコッとなる。
どんな性格か知らないけど。
私の十色お兄ちゃんを捨てて浮気?
それは許されざる禁忌を犯した。
あくまで償ってもらわないと。
「行くとするなら何処に行きたい?」
「私?...そうですね。この辺りを巡ってみたいです。取り敢えず」
「つまりはあれか。慣れる為に?」
「そうですね」
立ち上がる。
それから私は準備をしてから十色お兄ちゃんに付いて行く。
十色お兄ちゃんは玄関に鍵を掛けた。
それから私に付いて来る。
「準備は大丈夫か?」
「うん。忘れ物は無いよ。有難う」
「そいつは結構だ。じゃあ行こうか」
そして十色お兄ちゃんは市民プール、博物館、公民館などを巡って行く。
何と楽しいのだろうか。
十色お兄ちゃんと見ると世界は違って見える。
何もかもが違って見える。
だからこそ私は楽しめるのだ。
そう思っていて道を歩いていると声がした。
「あれ...先輩」
十色お兄ちゃんに声を掛けて来た可愛らしい服装のその女。
というか先輩と言っていたので違うとは思うけど。
ショートボブの可愛らしい女性。
私は「...」となりながら観察する。
「豊島?何をしている?」
「私ですか?今日はお休みですからお洋服を買いに」
「...ああ。そうだったっけ」
「...先輩はどうしたんですか?」
「辞めた。会社」
その言葉に豊島さんは目を見開く。
それから私を見てから考え込んでから苦笑する。
「そ、それで彼女さんとデートですか?」
「ああ。この子か。この子は案内しているだけだ。俺のいも...」
「私は7歳年下ですけど彼女です」
「うぉい!!!!!」
私の言葉に十色お兄ちゃんはツッコミを入れる。
だけど私の彼女であることに変わりは無い。
十色お兄ちゃんは彼氏だ。
「え?18歳って事ですか?」
「そうです。でもあくまで18歳でドン引きしてもらっては困ります。民法では18歳で結婚出来ます」
「その解説は要らない!」
「じゃあどうしたら良いんですか。十色お兄ちゃん」
「そもそも俺はお前の彼氏ではない!」
豊島さんの目が右往左往する。
それからグッと握り拳を作る豊島さん。
そして「そ、その」と顔を上げる。
少しだけ朱に染まっている。
「私も...その。お付き合いしても良いですか」
「「え?」」
そして私は豊島さんを見る。
え、しかし。
そう思いながら私は十色お兄ちゃんを期待して見る。
だけど残念ながら十色お兄ちゃんは否定しない。
むぅ。デリカシーのかけらもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます