第4話 (過去話)クソガキの嫉妬

ったくこのクソガキ。

そう考えながら俺は一緒にカブトムシとかを捕まえて帰る。

湊は凄く嬉しそうに虫籠を持って網を持ち陽気である。

俺はその姿を見ながら苦笑して歩く。

夏だな...日差しが痛い。


「あれ?湘南くん」


歩いていると部活帰り?っぽいマドンナ。

佐渡実奈(さわたりみな)が声をかけてきた。

クラスメイトだ。

俺はその姿に返事をする。


「おう。どうした」

「こんな所で会うなんて奇遇だね」

「そうだな」

「?...この子は?」

「この子は俺の近所付き合いの湊。才羽湊ちゃんだ。湊。挨拶しろ」

「...」

「...湊?」


湊はジト目で不愉快そうな顔をする。

それから俺の背後に隠れてしまう。

オイコラさっきまでの威勢はどうした。

そう考えながら俺は湊を見る。

すると佐渡は苦笑した。


「懐いているね」

「まあ見てわかる通りだ」

「そっか」

「佐渡は今は部活帰りか?」

「うん。まあね。見てわかる通りだけど」


佐渡は部活をしている。

その部活とは文芸部。

本を読んだり編み物をしたりして活動する。

詳しくは知らないけど楽しそうな活動をしているのでまあこれといってツッコミは無い。


「佐渡はこれからどっか行くのか?」

「これから帰宅するよ。あ、もしかして来たい?」

「馬鹿野郎。そんな訳あるか」

「お茶菓子だすよ?」

「子供か!」


湊がお茶菓子と聞いて一瞬だけ反応した。

それから直ぐにまた不愉快そうに後ろに潜る。

俺は苦笑いを浮かべてから佐渡に話した。


「気持ちは有難いが止めとくよ。どうもコイツが受け付けない様だし」

「そっか。残念だけど仕方がないね」

「また寄らせてくれ」

「うん。また寄って。是非是非」


それから俺達はそのまま佐渡と別れた。

そして俺は湊と一緒に歩く。

すると湊はまだ不愉快そうな感じを見せる。

何だよ一体。


「おい。湊。良い加減に機嫌を直せよ。どうしたんだ」

「お兄はあんなおっぱいが大きい人が好きなの?」

「は?」

「私より仲が良かった気がする。手下の癖に」


俺にそう言いながら不愉快そうな顔をしまくる湊さん。

あのなぁ。

そう考えながら湊を見る。

湊の髪の毛をグッシャグシャにした。


「一丁前に嫉妬しやがって。お前はクソガキなんだからな。そういうのは良くない」

「クソガキじゃないもん」

「あー、はいはい」


湊も大人になっていくんだな。

そう考えながら俺は湊を見つめる。

湊は俺の視線に気が付いて抱き着いて来た。

それから見上げてくる。


「お兄は私の手下だ。どこにも行かないよね」

「行かないよ。少なくともお前を残して何処かに行ける感じはしない」

「だ、だよね!私の手下だからな!」

「つーか嫉妬しすぎだろ」

「嫉妬じゃないもん」


子供じゃん完璧に。

そう考えながら無い胸を張る湊。

俺は苦笑しながら虫籠を見る。

中ではカブトムシがゆっくり移動をしていた。



「お兄。お兄の部屋に上がりたい」

「あ?何でだよ」


翌日だがクソガキはまた家に来た。

賄いのカツ丼をしっかり食べながら俺を見る。

因みに言い損ねていたがうちは食事処だ。

つまりはまあ定食屋と言える。


「全くお前はいきなり来たと思ったら何を言ってんだか」

「手下の様子を確認するのも仕事だからな」

「待ってくれるか。昨日も見たが汚いんだよ。俺の部屋って」

「別に良いじゃねーか。汚くても」


そういう訳にはいかん。

汚かったら非常に問題がある。

何故ならあの部屋にはエロ本があるから。

だから問題がある。


「手下の部屋は捜査するのが私の役目だから」

「認めてない。そもそも捜索するなら捜査令状が要るぞ」

「?...何それ?」

「つまり認めないという事だ。だから俺の部屋に入るのは今は駄目だ」

「...」

「湊?」

「何で?どうせあのお姉ちゃんは直ぐに入れているんでしょ?ねぇ何で!」


何だコイツの慌てようは。

そう考えながら湊を見てみる。

湊は俺をジッと見てから頬を膨らませる。

それからプイッと横を向いた。

一体何だってんだよ。


「湊。怒るなって。今は駄目なだけ。だから後から入れば良いんだって。だから」

「今入るの!やー!」

「お前なぁ。何で赤ちゃん帰りしてんだ。赤ちゃんか?大人にならないと」

「なまいきだぞ!手下の癖に!」


何処で覚えたんだそんな言葉。

俺は盛大に溜息を吐きながら湊を見る。

そんな湊に俺は注意する。


「湊。大人にならないと駄目だ。人は成長するから大人なんだ。学校で笑われたく無いだろう?」

「...うん」

「だったら成長しないと。な?」

「...うん」


俺の言葉に素直に頷く湊。

その言葉に俺は頷きながら湊を見る。

湊はジッと俺を見る。


「直ぐに戻ってから。...入る」

「ああ。分かってる分かってる。だから安心しな」


結論から言ってエロ本がバレる事は無かった。

危なかった。

だけど何でこんなにコイツはこだわっているんだ?

よく分からないな子供ってのはやはり。

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