第52話

腹の底にまで響く轟音。

 既に人が住んでいない外周部分は跡形もなくなり、あと一時間ほどでソルとシンが激しくぶつかり合うアクセサリウス都市部までもが消えてしまうだろう。

「逃げてるだけでいいのかい?」

 ソルの右手から、黒いエネルギー弾が連続で放たれる。シンは横方向の移動で回避。なんてことないようにしているが、ソルの全ての攻撃は人間の四肢を簡単に吹き飛ばすほどの威力を有する。

「何を迷っているんだい。戦うんだろう?」

「ちぃっ!?」

 紋章(クレスト)の恩恵によりシンは常人以上の素早さで移動しているが、ソルを相手にするには不足している。

「読めてるよ……君の動きも、感情も――ね!」

 徐々に焦点を合わせていき、遂にシンを捉えた。エネルギー弾は右足を打ち抜くと、バランスを崩したシンの腹、両肩と連続で射貫く。

「これで終わりだね」

 友達という関係性は、命のやり取りに持ち込まない。ソルの冷酷な一面が勝負を決めた。というのに、頭の片隅にある僅かな疑問が未だ晴れずにいる。

(……おかしい。何かがおかしい。……この人形を相手にしているような……ロザリアの契約者がこんな――)

 ソルは発見した、明らかな異常を。

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