第48話

『よかったのですか?』

 アクセサリウスへの道中、ヘッドライトの上に止まるフェニックスが問いかける。

「……殺される覚悟はしてる」

『その前に、アクセサリウスを元に戻すと?』

「……絶対に」

『そうですか。私としては、シンが後悔しないのならそれが一番ですので』

「……なんか棘のある言い方だな」

 含みのある言い方に、シンは籠った声で不満を返す。

『そんなことありませんとも。えぇ、シンはメンタル不安定ですからね。そう思ってしまうのもしょうがありません。私はそれも受け止めて見せましょうとも』

「……悪かったな。オレには、こうするしかないと思ったんだよ」

『大切な人たちとの縁を切り、孤独になることで彼らを守ろうとした。酷く不器用。そして、謝るのは私ではないでしょう?』

「……わってるよ」

 シンの胸中を占めているのは、マリアへの罪悪感だった。

 王都へ連れ出してくれたこと。騎士団員として生活させて貰ったこと。世界の広さを教えてくれたこと。シンは、これまでの数日間を思い出していた。

「……どこまで行っても、オレは……オレのまま。やっぱり、間違い続ける……」

(シンの選択の時は、もう直ぐですか……)

 ”今度こそ、正しい選択を”。

 シンがそう強く願うようになったのは、十年前の出来事が起因している。

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