第44話
王都に来てからというもの、シンは度々、悪夢に苦しんでいた。その頻度は、最近になり上がっている。そして、毎日、悪夢を見るようになっていた。
悪夢の内容は決まって、宝石となったアクセサリウスが粉々に砕け散るものだった。シンが準備を怠ったがために住民が死に、怨嗟にまみれた合唱に囲まれたときに夢から覚めるのだ。
汗だくになり飛び起きる度に、自分が王都に来た目的を何度も言い聞かせる。
(別に遊んでいる訳じゃない。……いつになったら……みんなが無事である保証はないんだ)
その言葉を何度も呟く。忘れないように、呪いのように。
シンは、ノルティシア寺院地下墓所での出来事を境に、ゼドについての調査時間を多くとるようになった。
「そんじゃ、お先っす!」
「おう、また明日な……」
騎士団の仕事を早々に切り上げ帰宅をする毎日だ。マリアとの夕食もいつの間にか取らなくなっていた。
「シン君はどうしたんだ? 何か用事か?」
「いんやぁ? マリアは知っているか?」
「……いいえ、知りませんよ――さて、私も訓練があるので失礼します」
マリアもシンに続き、本部を後にした。声に抑揚がなく感情を感じさせないため、氷のように冷たい印象だ。
「二人の関係に暗雲立ち込めるって感じだな。どうするよ先生?」
「見守るしかないだろう。それぞれに優先するものが出来たんだ。友達といっても、いつも一緒という訳ではないだろう」
「だな。永遠にってこともないか」
エマとダミアンが感じた不安は、現実になろうとしていた。
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