第34話 愛しくなる感覚

「覚悟ほんとバフ力上がったよなぁ

戦闘も強くなったし。あー俺も力が欲しいぃ」

「それで魔王からの 力がほしいか に欲しいって言っちゃうんだから物語なら闇落ちしまくり倒さまくりの踏み台系勇者だよなぁ」

「うるせぇな一番に闇落ちした僧侶」

残敵がないか探りながらでかい声で罵り合う

いつもの事だ

存在アピールして害獣や弱い敵を遠ざける

次のパーティでの呑みか…

ラプリエール大丈夫かな


残敵処理から裏にあった組織の割り出しに時間がかかり3日以上屋敷を空けた

ラプリエール怒ってないかな?

花屋で花束を吟味してかわいいお菓子を買って家路を急ぐ。

イーリアーにとアクセサリーを買う覚悟に付いて入った店でかわいいペンダントも買った

喜ぶかなぁ…


ちょっと緊張しながら屋敷に入る

「ただいま、ラプリエール」

俺の帰還を聞いてホールに来るラプリエールを見つけた


「おかえりなさいませ」

柔らかな笑顔で迎えられる

良かった。怒ってない

「ただいま。3日も空けていてごめん。これ…好きかわからないんだけど…」

あーかっこ悪ぃ

演技してた日はかっこよく花束わたせたのになぁ

チラッとラプリエールを見ると

パァっと嬉しそうに笑ってお土産を抱きしめるようにかかえる

「嬉しいわ。アンドリダ、全部大好きよ」


左の肺から顎辺りに重いものでもあったかの様にトンと中から押された様な感覚が広がる

瞳孔がラプリエールしかとらえてないような…ピントがそこにしか合わない変な感覚がする

なんだろうこれ…

よくわからないけど左手でラプリエールを捕らえて

口づけていた

ラプリエールがキラキラしていて美しかったんだ…


唇を離して自分でもどうしていいかわからなくて

ラプリエールを見つめていたけどラプリエールも動かないし

ごめんって謝るのもなんだか違う気がして、ラプリエールの手からペンダントの箱を奪って開けて着け…なんだこれ難しいな。外れないな。

カチャカチャやっていると腕の中でラプリエールがフフッと笑う

「笑うなよ…」

「だって…フフッ」

「あぁ、よし取れた。きっとよく似合うから首出して。」

外せたからはめかたはわかる

「うん。よく似合う。綺麗だよ」

きっちりはめてちょっと得意気になっていると

ラプリエールが照れた。なんで?


手を取って自室まで歩く。綺麗にして着替えなきゃ

ついラプリエールを抱きしめてしまったけど3日も出かけていたし水あらいした服を着替えたり水を浴びたりはしたけどドロドロだし臭かったかも知れない。

大丈夫だったかな?とソッと覗き見ると

目があってにっこりと返された

途端に顔が熱くなる

なんだこれ…

「ラプリエール…今度パーティで集まる時一緒に来ないか?みんなを紹介したいんだ」

勝手に口が動く


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アンドリダがやっと帰ってきたと聞いて急いで出迎える準備をする

今までは気にもしないで部屋にいたまま出迎えて部屋に逃げていく前に文句の1つでも言ってやろうと待ち構えていたけど

何故かしら今日はこんな格好で出迎えたくなんかないわ

「お願い。身だしなみを綺麗に整えるのを手伝って。アンドリダがホールに来ちゃうわ」

侍女を急かして美しく整えてもらう

よし。完璧ね。急がなきゃ


ホールに着くとアンドリダがもう帰ってきてる

はしたなくも小走りをする姿を見つけられて先に声をかけられてしまった


少し呼吸が落ち着いてから「おかえりなさいませ」と言う。うまく笑えたかしら


3日以上、きっと大変な戦いをしてきたであろうアンドリダは汚れはあるものの精悍さがあってとても美しく見惚れてしまう。まるで高貴な騎士様みたいだわ

そのアンドリダから

「ただいま。3日も空けていてごめん。これ…好きかわからないんだけど…」とお土産を受け取る

まぁ…大変な任務の後なのにこんなにワタクシを思いながら買い物をしてくれたのかしら

途端に胸がきゅーっとしてアンドリダが愛しくなる

「嬉しいわ。アンドリダ、全部大好きよ」

そう言うとアンドリダに抱きしめられて口づけられた

唇を離しても見つめてくるアンドリダからは男の子らしい匂いがして目が離せないまま見つめ返していたらプレゼントの箱を取られた

まぁ。中身はかわいらしいペンダントなのね。

アンドリダが着けてくれるらしくドキドキしながら首元を伸ばす

カチャカチャしながら小さく あれ?違うな…え?はずれないな…ってつぶやく声が聞こえてくる

アンドリダかわいいわ。つい笑ってしまったら

「笑うなよ…」って恥ずかしそうにつぶやくからもっと愛しくなるじゃない

幸せだわって噛み締めていたら

「うん。よく似合う。綺麗だよ」って言われて

ワタクシ…勇者に報酬の【品】として出されて絶望していたのが嘘みたいに


幸せだわ


自室に戻るというアンドリダが何故かワタクシの手を引くからついていくと、不意に

「ラプリエール…今度パーティで集まる時一緒に来ないか?みんなを紹介したいんだ」

と言われる

ワタクシ王宮での一部の人とこの屋敷…あと少しの高級なお店の方しか知らないけれど

パーティの…市井の方とうまくお話できるかしら…

不安に思いつつも、アンドリダの世界が知りたくて

そちら側のアンドリダも知りたくて

もしもそちら側に行くのなら連れて行って欲しくて

「はい。是非」

と答えた

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