第4話
パーティーの背後を追うこと数十分。
ファンタジー世界ではよくある石畳の道にレンガや石の屋根の街並みが見えてくる。
「ほんとテンプレって言うか・・・・・・」
流石は異世界、と言うところか。中世ヨーロッパ風の街というと本格ファンタジー作家達に槍を刺されそうだが、確かに脳内イメージ通りな光景だ。
どうせ転生するなら自創作が良いな。でもそれはそれで最初でパニクって死にそう。
街まで続く街道はあぜ道になっていて、こいつを来たままだと流石に目立つ。
「ギリーは捨ててくか。まぁ草の中ならバレないか」
頭から被っていたギリースーツを脱ぐ。
ギリーとは草を模した紐を無数に括り付けた偽装服のことだ。FPSなんかでは『モリゾー』なんて呼ばれてたりもする。
あの森では最適な装備だと考えてスキルで作成したのだが、思った以上に効果があった。
逃したことがよほど惜しかったのか何度も背後を確認していたが気づかれることはなかった。
「ここからは適当に人混みに紛れて・・・・・・」
と思い、遠くの方で通行人の波に乗った。
異世界最初の街『ルルス』の中心地へは二十分弱で到着した。
その道のりで一つ分かったことがある。
「邪魔だ転生者!」
「チッ、また来やがったのかよ」
「ほんと迷惑な連中よね」
「ままー、あの人へんなかっこー」「見ちゃだめよ!」
引きこもっていたからか、半年分くらいの辱めをこの数十分で受けた気がする。
どうやらこの街は転生者を憎んでいるようだ。
不特定多数から罵られたり辱められることは慣れていた。だが面と向かって言われるのは、少しばかり心に来る。
一体どうなってんだよこの異世界。
(落ち着け。俺の目的は魔王討伐、世界を救うことだ)
どんなに蔑まされようとも、俺は俺の使命を果たすだけだ。そう言い聞かせて心の平静を保った。
しかし魔王軍と戦おうにも街の外で味方撃ちに合うのはまずい。
ひとまず奴らパーティーの蛮行を誰かに伝えなければ。そう思い立ち、再び他の冒険者の後をつけて冒険者ギルドに辿り着いた。
入った瞬間、併設の酒場が静まり、受付のお姉さんの顔が強張った。
「今日はどんなご用で」
「街の外で冒険者パーティーに襲われたんでその告発と、後は冒険者になりに来た」
「襲われましたかー、まぁ仕方ないんじゃないですか?」 まるで襲われて当然という言い草だ。俺は両手を机の上に叩きつける。
「全くここの冒険者はどうなってんだ? あんたらギルドは人を殺さないって基本道徳もないんですか?」
「あのギルドで大きい声出さないでもらえます? きったないツバが飛ぶんで」
「はぁ?」
「貴方、転生者ですよね? この世界で転生者がしたこと、知らないんですか?」
「あぁ知らないさ。さっき来たばっかりだからな」
「この悪魔が!」
頬にビンタが直撃した。
「何するんだ」
「お前達転生者がこの世界でどれだけ人を殺したか・・・・・・幸い街での殺しは禁止されてるから生き延びられてるゴミ共が」
おいおい一体何がどうなってるんだ。疑問符が頭を駆け巡る中、いつの間にか俺を取り囲むように冒険者達が迫っていた。
ひょろい俺に対してガチムチの冒険者が五人。俺は何がなんだか分からないまま、受付から引き離されていく。
「おい離せよ!」
藻掻くが腕は剥がれない。
「はぁ・・・・・・ほんと転生者を見てるだけで吐き気がする。あ、冒険者になりたいって言ったわよね。ならステータス見てあげるわよ。ほら、鑑定」
パラメーターが彼女に渡り、そして腹をよじるように笑った。
「あははは。こいつ転生者の癖にゴミステータスだわ! ランクG・・・・・・どんなに弱くてもBはあるのに・・・・・・ぷぷぷ!」
酒場全体にわっと笑いの渦が起こる。そして煽るように受付嬢が、
「はーい皆さん。新しいサンドバックが入ってきましたよー!」
俺は連れて行かれながら思った。嫌われているでは足りないくらい、この世界では転生者への憎悪が深い。
パラメーターを暴かれ、弱いことを晒された俺のその後は悲惨だった。冒険者ギルドの裏手、人の気配がない場所で彼等が満足いくまで殴られ、蹴られ、そして捨てられた。
底辺WEB作家異世界転生――人気=ステータスの異世界で設定無双したい 宵更カシ @Yofkash
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