第5話 三浦の自信

 三浦亮太は自信満々だった。明日行われる学園祭の演劇で、彼はクラスの主役を務める。身長が高く、スポーツも得意で、リーダーシップを発揮する姿は、まさにクラスの中心的存在だった。女子生徒からの人気も高く、誰もが三浦の成功を期待していた。


「俺が主役だから、絶対に失敗なんかしないよ」


 クラスメイトたちに向かって、軽く冗談めかして笑う三浦の顔には、不安や緊張の色は一切なかった。彼にとって、舞台に立ち注目を集めることは日常の延長であり、成功することが当然のことのように思えた。


「亮太くん、明日の舞台楽しみにしてるね! 絶対カッコいいだろうな~!」


「私も期待してるよ!」


 女子たちからの声援に、三浦は満足げに頷きながら、得意そうに振る舞っていた。彼の心の中では、明日の演劇は自分をさらに目立たせる絶好のチャンスだと感じていた。これまでも目立ってきたが、今回の演劇でさらに自分の人気と影響力を広げ、学校中の誰よりも目立つ存在になる――それが彼の狙いだった。


「俺が失敗するわけがない」


 誰もが三浦に期待し、彼もまたその期待を裏切ることなく最高のパフォーマンスを見せると信じて疑わなかった。舞台に立てば、全校生徒の注目を一身に集めることができる。その視線を浴びる快感を想像するだけで、三浦の胸は高鳴っていた。


「明日は俺のための舞台だ……」


 彼はその確信を胸に抱き、最後のリハーサルを終えると、満足そうな表情で帰路についた。三浦にとって明日の学園祭は、自分の価値をさらに高めるための絶好の機会であり、彼には何の不安もなかった。それが、彼の最大の誤算になるとは、まだ気づいていなかった。

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