第4話 最後の確認

 学園祭前日、放課後の教室はにぎやかな活気に包まれていた。各クラスメイトがそれぞれの担当をこなすために忙しなく動き回っており、教室には色とりどりの装飾が並び、明日の学園祭に向けた最終準備が進められていた。クラスメイトたちの中で、ひときわ目立つ存在、それが三浦亮太だった。


「おい、あっちの装飾もう少し右に寄せて! そっちは花飾りを増やして派手にしたほうがいいんじゃないか?」


 三浦はクラスメイトに次々と指示を飛ばし、誰もが彼の言葉に従って動いていた。彼は自信たっぷりにクラスをまとめ、的確な指示を出すその姿は、まるでリーダーそのものだった。すでに演劇のリハーサルを何度も繰り返しており、彼自身も自分の主役としての役割に完全に自信を持っていた。


「明日は大丈夫だな、俺が主役だし、絶対に成功する」


 三浦は胸を張って言い放ち、クラスメイトたちも「そうだね、三浦くんがいれば問題ないよ!」と笑顔で答える。誰もが彼の成功を疑わなかった。彼が失敗するという可能性すら考えられないほど、三浦はクラスメイトたちから信頼されていた。


「みんな、明日頑張ろうな。俺が中心になって最高の舞台を作るから、期待しててくれよ!」


 三浦の自信に満ちた言葉にクラスメイトたちは頷き、教室は明日への期待と希望で満ちていた。だが、その一方で教室の片隅で静かに作業を続ける一人の存在があった。日向悠真だ。彼はいつも通り、クラスの中心から外れた位置で、自分の仕事を黙々とこなしていた。誰も彼に注目していないし、彼もまた自分から目立とうとはしなかった。


 しかし、悠真の心の中では静かに計画が進行していた。リリスの力を使い、三浦を舞台の上で陥れるための準備はすでに整っている。三浦が自信満々に主役としての役をこなそうとしていること、そしてその裏で彼が気づかぬうちに仕込まれた罠に引っかかる瞬間を悠真は冷静に見守っていた。


「これで、明日は完全に彼の転落が始まる」


 悠真は心の中でそう呟き、リリスの力に感謝していた。リリスがいなければ、自分がこんな計画を立てることも、ましてや実行に移すこともできなかっただろう。リリスの存在は、悠真にとっての「逆転の力」だった。


「どう? 準備は順調?」


 悠真の心の中に、リリスの甘い囁きが響いた。彼女はいつも悠真を見守り、助言を与えてくれる存在だ。その声は柔らかくも鋭く、彼の内なる欲望をさらに掻き立てる。


「順調だよ。明日、あいつはどん底に落ちる。俺はその瞬間を見逃さない」


 悠真は小さく笑みを浮かべた。自分がかつては恐れていた存在――三浦亮太が、明日自分の目の前で破滅する瞬間を考えると、胸の中に抑えきれない高揚感が広がっていく。今までの悠真なら、決してこんな風に三浦に立ち向かうことはできなかっただろう。しかし、リリスの力を手に入れた今、彼には確かな自信があった。


「よくやったわ、悠真。明日が楽しみね」


 リリスは微笑むように語りかけ、悠真の中にある復讐心をさらに煽った。悠真はその声に応えるように小さく頷き、三浦の姿をもう一度見つめた。彼が主役として、どれほどの自信を持っているか、その姿を見れば見るほど、明日の転落がどれほど痛ましいものになるのかがわかる。

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