第2話

「ルイ!隣の村で狩りしに行くぞ!」

「うげぇっ!」アブソルの声が遠くの方でうっすらと聞こえたかと思うと、急に俺の体にとてつもない重さを感じ、思わず声を出してしまった。

「ルイ!いつまで寝てるんだよ!太陽はもうとっくに顔を出してるぞ!」

アブソルは力づくで俺を部屋から引きずり出す。

 よくわからないまま連れられ、いつの間にか隣村の前にいた。

「ルイ、どっちが金貨を多く盗れるか勝負な!俺はこっち方面行く。」

ルイは頷き、アブソルと反対方面へと走り出した。

 走りながら短剣を取り出し、構える。良さげな家を見つけたらドアを蹴破り、中に人がいたら短剣を突きつけ「死にたくなかったら金目のものを出せ」と脅迫するだけの簡単な狩り。


 やはり今回も順調に狩りを成功させることができた。集合場所の村の前で盗った金貨の数を数える。

勝負に勝ったのは俺だった。


「さすが世紀の大盗賊と謳われるルイ様だな!でも!俺の方が銀貨の数は多かったからな!」

アブソルがイタズラっぽく言う。

アジトへと続く森はとても静かで、俺たちが草を踏み潰す音と、アブソルが今盗ってきた金貨を指で弾いて遊ぶ音が聞こえるだけ。まともに光が通らないこの深い森の奥まで進むと、俺たちカラ盗賊団のアジトがある。


 アジトに近づくにつれ、段々と人の声が聞こえてきた。しかも、いつも以上に騒がしく。ただ、勝利を喜ぶような声ではない。不穏な思いでアジトのドアを開けると、傷だらけで倒れた人に群がる仲間の姿が見えた。

 また、人が死んだのか。


周りの人からは落胆と屈辱の声が聞こえる。

群がる人の間から、死んだ人の傷ついた後ろ姿が見える。

隣のアブソルがはっと息を吸い、体を強張らせる。

ここからは顔が見えないから一体誰が死んだのかわからない。俺は群れにゆっくりと近づく。

 後ろからコインの落ちる音が聞こえ、アブソルが走って俺を通り過ぎ、群れをかき分けて死体のもとへ行く。アブソルの泣く声が聞こえる。


死んだのはセラータだった。


 死体に群れていた仲間たちももう飽きたのか、いつも通りの狩りに戻ったりくだらない世間話をしている。

死んだセラータの元にいるのはアブソルだけになった。

 正直俺も、アブソルのように涙が出るほど悲しくなることはなかった。確かにセラータは俺が小さい頃から構ってくれたが、人は死ぬものだ。特に盗賊をやってれば人の死なんて日常茶飯事だ。今更悲しむことはない。家族愛ってやつか?それともここにきてからまだ日が浅いから人の死に慣れていないだけ?アブソルとセラータは俺が八歳ぐらいの時にアジトにやってきた。生まれてすぐこのアジトに捨てられた俺には家族愛なんてものはわからないし、人の死なんてもうとっくのとうに見慣れている。

 深い悲しみに満ちた相棒に話しかけるつもりはない。


まあきっと、明日になればいつも通りになってるだろう。

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