第10話 戦国と現代
取り急ぎ俺が確認したいのは三つ·····
───まず一つ目が時間軸ついて。
これは結論から言うと繋がっているらしい。
つまり昨日、俺が
また
この法則を見つけるのに親父と謙信は数年かかったらしい····。お疲れ様でしたっ!
───2つ目に聞いたのは『物の持ち運び』について
夢の自室にある俺の推し部屋で俺の写真等を見たところ、転移するにあたって、物を持ち運ぶことが出来ると確信はしていた。
詰めたいポイントは量と持ち運び方。
量に関しては頑張れば何処まででも····らしい。
ただこれに関しては、謙信が日本の歴史を変えることに消極的な為、現世から持ち運ぶ物は慎重に選んでいるそうな····。
そして持ち運び方だが····
これには二人とも色々と試したようだが、手に持っている物、携帯している物、背負ったり掛けたり、携行している物は持っていける、とのこと。
物の状態も、そのままで持ち運び出来る。
試しに熱々のシチューを持って転移した場合、移動先の時代に着いても、熱々の状態になっている·····ということ。
服については勿論、着たまま。·····そりゃーそうだわな。ラッキー助平なことは起こらないそうです。
·····べ、べつに残念とか、思ってないからっ!
───そして最後に
「夢について····かい?」
二、三歩先を歩く謙信から確認を取られる。
俺は頷きながら、謙信について歩く。
何故、謙信の部屋で最後まで話を聞かずに、
謙信曰く、太陽の位置的に現在午前10時くらいだという。つまり今、
転移した場合、転移した
昨夜、プラモデルの箱を開けたのが18時ごろだから、16時間ほど留守にしている。
今まさに婆ちゃんが俺を探しているかもしれない。そう考えるとあまり気分が良いものではない。
「
北家の家庭事情を知っている謙信は俺に問いかける。
「はい。····まさかこんなこんな事になるとは予想できないですから····」
今度転移する時は考えておかないと。ましてや
····泊まれる程の中の良い友達って限られるなぁと考えながら、謙信と共に城の階段を足早に降りていく。
広間や夢の部屋がある最上階と、その一つ下の謙信の自室がある階のみ、廊下に日光が良く差し込む造りになっているため、城の半分は暗く、何処か不気味だ。
これからは何回も行き来するであろう城の構造を頭に入れながら、俺は話を主題に戻す。
「それで····その娘さんについてなんですが·····」
ああ、そうだったね、と謙信は続ける。
「聞きたい事とは?」
「····俺が知っている歴史···『改史』で謙信さんに娘は存在していないんです」
「····」
謙信は無言だった。俺に続きを促しているようにみえた。
本丸を出て、城門に向かう途中は日が差している。夏の暑さを全身に感じる。
「俺の勝手な推測です。····間違ってたら言って下さい····。娘さんは·····謙信さんの娘さんとしてこの城に置いてないですよね?」
「····流石だね」
城門を抜けた時、見晴らしの良い所に出た。城自体が山の上であるため、ここからの景色も良い。
景色を眺めながら俺は謙信の説明を待つ。
「····私の娘にしてしまうと、色々と厄介でね。····元から私は夢に家を継いでもらうつもりはなかったから。そのため養子をとったのに·····。養子がいるのに、
夏の風に髪を揺らしながら謙信は続ける。低音ボイスのいい声が風を切り裂き、隣りにいる俺の鼓膜を刺激する。·····親子揃っていい声してるなぁ。
「···だから、周りには、······夢は春吉の娘ってことになっている」
「なっ!」
「····おや?····これは想像してなかったかな?」
「本当のこと知っているのは私と夢、一部の家臣と、数人の侍女だけだよ。」
「····なぜ親父の連れ子にしたんですか?····こういう事·····あまり言いたくないですが····戦国時代って戦ばかりだから孤児が数多くいましたよね?·····孤児ってことにしようとは考えなかったんですか?」
謙信は顎を擦りながら応えてくれた。その横顔は少し笑っている。
「だって····
「·····」
確かに。謙信と夢本人が平成寄りって言うだけあって夢は
「初めは夢を城下町に住まわせようと思ったんたが···春吉があまり部下から好かれてなくてね。····昨晩、広間にいた部下が春吉の事悪く言ってた事、聞いていたかい?仕返しだの、俺が先にやらせろーだの」
「·····そういや言ってましたね」
あの物騒な事を言っていた家臣に対してもイタズラばかりしていたからだろう····。本当にご迷惑をおかけしております。
「だから夢を城下町に置いちゃうと、春吉を良く思わない部下から酷い目にあわされるんじゃないかと思って城に住まわせてるんだよ。一人でも基本的に外をあるかせない、いや、歩かせられないからね····。別に夢は悪くないのに···」
「····親父が本当にごめんなさい」
何回子供に謝らせるんだ。あの親父は。しかも夢にまで迷惑かけて····。
「かまわん。····ただ、春吉のせいで夢に迷惑かけて申し訳ないと思うのなら、春吉の子供である君が、代わりに責任をとって夢を嫁にしてくれても構わないんだよ。····私はもちろん大賛成だが」
····なんか上手く誘導された気がする。
俺は、できれば責任なんて感情で結婚はしたくないものだと唸っていると、謙信は太陽を見て目を細めた。
「いかんな。急いでいるというのに、話し込んでしまった。····地蔵はすぐ近くだ。····早く行こうか」
俺は額の汗を拭いながら先を行く謙信について行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます