第3話 変わりゆく日常

ある日、純恋は教室で親友の藤田 皐月ふじた さつきと話していた。

皐月は美術部の明るい女の子だ。

「最近寒いよね」純恋はカイロを手で包み込んだ。

皐月はうんうんと頷いた。「雪積もったもんね。2月の初めだから、まだ寒そう」皐月の言葉に、純恋は窓の外を見つめた。

「雪…また降ってる」純恋はポツリと呟いた。

「最近、雪の量多いよね。知ってる?全く雪が積もらない地域があるんだけど、確か何十年ぶりかに雪が積もったんだって」皐月はスマホでニュースを見せた。純恋は少しニュースを読み、目を細めた。

『ここ数年の冬って少し変だよね』

ふと、友人の独り言を思い出した。

友人もこの学校に通っており、現在高校3年生だ。

小学生の時に、公園で1人遊んでいたところを出会ったのだ。

占いかなにかを得意としていると聞き、興味が湧きずっと一緒にいるのだ。

純恋は考えを巡らせボーッとしていた。

皐月はそんな純恋を不思議に思い「どうしたの?」と心配そうに、純恋の顔を覗き込んだ。

純恋は我に返り「なんでもない。」と誤魔化すように微笑んだ。

すると「うわぁ〜寒い。凍えるぅ〜」と隣の席に賢人が、缶コーヒーを手に座った。

「缶コーヒー?」「うん。寒いから」賢人は缶コーヒーを開けると、1口飲んだ。

「自販機に、コンスープとか出たもんね。わたし帰る時、よく買うよ」皐月の言葉に純恋も共感し「そうだよね。コンスープ美味しいよね」と笑いあった。

すると「純恋、これ缶コーヒー」と机に置かれた。

置いた相手は、柊馬だった。

柊馬の片手にも缶コーヒーが握られている。

純恋は呆然としていると「あれ?純恋って甘党だろ?コーヒーも飲めないって言ってたじゃん。兄のお前が知らないの?」と賢人が明るく言った。

純恋はその言葉に我に返り「そうだよ〜。柊馬兄、ごめんね。」と缶コーヒーを柊馬に渡した。

柊馬は表情を変えずに「ごめん。忘れてた」とだけ言い、その場を後にした。

「柊馬って結構ぼーっとしてるところあるよな。」賢人は楽しげに、柊馬の背中を見た。

純恋は「そうだよね〜。」と頷いた。

賢人と皐月は何も違和感を感じていない様子。

純恋は安堵し、腰と同じ長さがある長い髪を耳にかけた。

「あれ、純恋ピアスしてたんだ」賢人は以外そうに、純恋の耳を見つめた。

皐月も驚いたように「そうだよね。ピアス空いてたのは知ってたけど、1個や2個じゃなかった?今、5個以上空いてない?」と聞いた。

純恋は「あ〜。そうなんだよね。兄が2人で姉が1人なんだけど、柊馬兄見てるとわかるように、ピアス空けるの多い人なんだよね。それで、わたしも妹だからって寝てる間とかに…」と慌てて説明した。

賢人は目を輝かし「いいな。俺も2個ピアス空いてるけど、もっと空けようかな。柊馬みたいに唇とか舌とかにも」とスマホでピアスを調べ始めた。

「怖くないの?わたしピアス空けれないんだよね〜」皐月は2人を見て苦笑した。

純恋も笑うと、ふと肩を軽く叩かれた。

純恋は不思議に思い、振り向くと、柊馬が立っていた。

「お、柊馬、いい所に、」賢人に呼ばれ、柊馬は賢人の机に腰掛けた。

「なぁ。舌ピアスとかって痛くねぇの?」賢人の質問に、柊馬はサラリと「俺は痛くなかったけど?」と言うと、純恋に飴を渡した。

「あ、ありがとう。突然だね」純恋は飴を受け取り、咥えた。

「へそピアスも空けたいけど、痛そうだな」賢人はスマホを見つつ呟いた。

「へそピアスなら、俺まだ空けてないけど…」賢人は純恋を見つめた。

純恋は困ったように少し考え「あ、結翔兄なら空けてるよ」と答えた。

「そうなんだ。どんなんか聞いてみてくれないか?」賢人は手を合わせ、純恋にお願いした。「いいよ。」純恋は快く受け入れた。

「純恋、結翔兄の事わかってるからね」結翔が呟いた言葉は誰にも聞かれなかった。

「ねぇ、もしかして純恋ちゃん、舌ピアス空けてる?」皐月はじっと純恋を見つめた。

純恋はびくっとし「あ、空けてないけど?」と慌てて否定した。

「気のせいかな?飴の破片を見間違えたのかな?」皐月はすぐ興味をなくした。

この先の学校生活を平穏に過ごせるのかどうか。



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