第20話 復興
ミリアは自分がリリアナの後継として姫の役割を果たす事に疑問を抱きながらも、アークレインの再建が急務であることを理解していた。彼女はその使命感に胸を張りつつも、時折リリアナを思い出し、心に痛みが走る。ミリアの美しい瞳には悲しみと責任が交錯していた。
ラフティはそんなミリアの横に立ち、新たに彼女を支える決意をする。ラフティは王族ではない。だが、彼の心にはミリアへの深い愛と、彼女を助けたいという強い思いがあった。彼はミリアをアークレイン城の新しい姫として導き、城の再建に必要な手続きを共に行う。各国の使節団や軍勢が訪れ、ラフティはミリアと共に彼らの対応を行いながら、復興の計画を進めていく。
だが、ラフティの心の中には不安が渦巻いていた。城が再建される事で、ミリアは他国との政略結婚を強いられるかもしれないという現実が迫っていたのだ。ラフティはミリアを守りたい一心で、彼女にその事を口にするが、ミリアは微笑んでこう言う。
「ラフティ、私はこの国を守る為に生まれてきたのだと思う。リリアナがいない今、私がその役割を果たさなければならない。だけど、あなたが側にいてくれるだけで、私はどんな困難も乗り越えられるわ」
ラフティはその言葉に答えを見つける事ができなかった。ただ、彼女を失いたくないという思いが胸の中で強くなるばかりだった。
日々の時間は流れ、城と城下町は少しずつではあるが、かつての姿を取り戻しつつあった。ラフティとミリアは労働者達をまとめ、破壊された建物の修復や新しい防衛設備の構築を進めていった。民達は最初こそ絶望的な表情を見せていたが、ミリアとラフティのリーダーシップに触れ、少しづつではあるが、希望を取り戻しつつあった。
しかし、アークレインの再建が進む中で、周辺国からの外交的な圧力が強まっていった。ミリアが姫として成長していくにつれ、彼女に対する結婚の申し込みが相次いだ。特に隣国アゼルバイア王国のユリウス王子は、ミリアとの政略結婚を強く望んでおり、それがアークレインを守る唯一の手段であると主張していた。
ラフティはその事実を知り、心の中で葛藤していた。彼女を手放したくない一方で、ミリア自身が国の未来を守る為に決断する必要があると理解していたのだ。ミリアもまた、王子との結婚の話が現実味を帯びる中で、ラフティとの関係に複雑な感情を抱いていた。
そんな中、ミリアは体に違和感を感じ始める。ある日、疲労がひどく、目の前が霞むような感覚に襲われた。彼女はそれを「仕事の疲れだ」と自分に言い聞かせるが、次第に異変を無視できなくなっていく。ラフティも彼女の変化に気づいてはいたが、無理に問い詰める事はせず、黙って彼女を支え続けた。
数か月が経ち、城と城下町の復興は着実に進んでいたが、ミリアはついに自分が妊娠している事に気づく。彼女の中に新たな命が宿っているという事実は、ミリアにとって驚きと共に大きな責任を感じさせた。ラフティとミリアとリリアナの遺伝子を受け継いだこの子供が、未来にどんな運命を背負うのか、彼女はまだわからない。
ラフティにそのことを告げるべきか、ミリアは迷っていた。彼女はラフティに心を開くことができず、独りで悩み続けた。だが、その時が近づくにつれ、ミリアは再び選択を迫られることになる。
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