第18話 戦いの後で

ラフティとミリアは、サキュバスと化したリリアナとの激しい戦いを終え、疲労困憊のまま水の神殿の静けさの中に佇んでいた。戦いの余韻が、まだ二人の心と体を包み込んでいる。


ラフティは、その場に崩れ落ちるように座り込み、胸の奥に重くのしかかる虚しさを感じていた。「俺は……またしても助けられなかった……」彼の頭の中には、幻覚内で見た人間だった頃のリリアナの笑顔と、サキュバスへと変わり果てた彼女の姿が交錯していた。目を閉じると、リリアナの最後の瞬間が鮮明に蘇り、体が強張る。剣で敵を倒す事には慣れていたが、彼女はかつて守るべき存在だった。「俺がもっと早く……」ラフティの心に痛みが走る。


一方、ミリアもリリアナとの戦いで負った心の傷の痛みに耐えながら、じっと空を見上げていた。彼女の心中も、言葉にできないほどの苦悩と後悔が渦巻いていた。リリアナは、自分にとってただの従妹ではなく、幼い頃から大切にしてきた妹のような存在だった。彼女を救う事ができなかった自責の念が、ミリアを蝕んでいた。「リリアナ……私は、貴女を救えなかった……」涙が彼女の頬を伝い、唇を噛みしめる。


「ミリア……」ラフティが声をかけるが、その言葉は喉の奥で途切れる。何を言えばいいのか、どう励ませばいいのか分からなかった。彼もまた、自分の無力さに苛まれていた。


ミリアは、ゆっくりとラフティの方を向き、深呼吸をする。「私達は、ここで終わるわけにはいかないわ、ラフティ」彼女の声は、心の痛みに堪えながらも、決意に満ちていた。「リリアナの為にも、城に戻って、これから何ができるかを考えなければ……」


ラフティは、彼女の言葉に耳を傾けながらも、自分が彼女に追いつけていない事を痛感していた。「アークレインに戻るのか?本当にそれでいいのか……?」心の中で自問しながらも、今はミリアの意志に従うべきだと感じた。


「そうだな……俺達の旅はまだ終わっていない」ラフティは立ち上がり、短剣を鞘に収めると、ミリアに手を差し伸べた。


ミリアはその手を取って、立ち上がる。彼女の目には未だに悲しみが宿っていたが、その瞳の奥には燃えるような覚悟が見えた。「行きましょう、ラフティ。私達には、まだやらなければいけない事があるわ」


こうして、ラフティとミリアはアークレインへ戻る決意を固めた。水の神殿での惨劇を胸に秘め、彼らはこれからの道のりを歩み始めるが、二人の心には、失った物の重さがずっしりと残っていた。それでも、リリアナの想いを背負って、彼らは再び立ち上がった。彼らの旅はこれからも続く。

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