第16話 サキュバスとの戦い2

ラフティとミリアは、リリアナの猛攻を必死に凌ぎながら、少しずつ彼女を追い詰めていた。サキュバスとして覚醒したリリアナは、圧倒的な力を持って二人を翻弄していたが、彼らの強い決意と連携が光っていた。


「くっ……!」ミリアは、剣を振るうたびに体力が削られていくのを感じながらも、リリアナに向かって最後の力を振り絞った。その一撃はリリアナに届いたかに見えたが、彼女の翼が再び硬化し、ミリアの剣を弾き返した。


「お姉様、もう無理しなくていいのよ」リリアナは甘くささやくように言いながら、鋭い爪を振り下ろした。


その爪がミリアの体に深々と食い込み、彼女は崩れ落ちた。「ミリア!」ラフティは叫びながら駆け寄るが、リリアナが邪悪な微笑を浮かべたまま、彼の前に立ちはだかる。


「貴方達を魅惑の世界に引き摺り込んであげるわ」


リリアナの瞳が妖しく光る。次の瞬間、ラフティとミリアの意識は暗闇に包まれ、彼らはそれぞれ別の幻覚の中へと引きずり込まれた。


1.ミリアの幻覚


彼女の前に広がる光景は、子供の頃のリリアナとの懐かしい思い出だった。緑の草原に咲き誇る花々の中で、幼いリリアナが無邪気に笑いながら駆け寄ってくる。


「お姉様!お姉様!」リリアナは手を広げて、子供の頃のミリアに飛び込む。ミリアも小さな体で、リリアナをしっかりと抱きしめた。


「どうしたの、リリアナ?」幼いミリアは優しい声で問いかける。


リリアナは少し照れくさそうにしながら、「ねぇ、お姉様、私ね…将来お姉様と結婚するの!」と大きな笑顔で言い放った。


ミリアは一瞬驚き、可笑しそうに笑った。「リリアナ、結婚は男の子と女の子がするものだから、女の子同士じゃできないのよ」


しかし、リリアナは唇を尖らせて駄々をこねる。「それでも!お姉様と結婚したいもん!お姉様じゃなきゃ嫌だよ!」


ミリアは困ったようにリリアナを見つめたが、最終的に溜め息をつきながら「わかったわ、大人になったらね」と優しく微笑んで了承した。


リリアナの顔がぱっと明るくなり、「本当!?約束だよ!」と言いながら、ポケットから小さな指輪を取り出した。


「これ、お姉様にあげる。ずっとずっと一緒にいてね」リリアナは真剣な表情で、指輪をミリアの指に滑り込ませた。ミリアはその時、笑顔で指輪を受け取ったものの、幼いリリアナの純粋な願いがどこか切なく感じられた。


2.ラフティの幻覚


彼はどこか夢のような世界に立っていた。目の前には、美しく優雅な姿をした王女リリアナが現れる。人間の頃の彼女は、輝くような美しさを纏いながら、誘惑的に微笑んでいた。


言葉はなかった。ただ彼女の存在感、そして魅惑的な雰囲気が、ラフティの意識を強く引き寄せる。リリアナはゆっくりと近づき、柔らかく彼の手を取る。指先が触れ合う瞬間、ラフティの心は奇妙なほど安らぎを感じた。


リリアナは静かに、ラフティの耳元で囁くように微笑む。そして、彼女の手がラフティの胸元に触れ、軽く押し進めるように、彼を優しく押し倒した。二人は自然に、何の抵抗もなく深い抱擁へと沈み込んでいく。快楽が彼の意識を塗り潰し、現実が遠のいていく。


同時に、サキュバスとしてのリリアナの姿がラフティに重なる。彼女の黒い翼が広がり、冷たくも熱い視線が彼に突き刺さる。リリアナの肌は滑らかで、彼女の手がラフティの肌にそっと触れるたび、痺れるような感覚が体を駆け巡る。


現実と幻覚が混じり合い、リリアナの唇がラフティに重なる瞬間、彼の心はさらなる快楽に沈み込んでいった。彼の周りの世界は消え去り、彼女だけがすべてだった。


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