第15話 サキュバスとの戦い1

ラフティとミリアは、サキュバスと化したリリアナの前で剣を構えた。薄暗い地下空間は、ミリアの剣から放たれる炎の光が唯一の光源だった。リリアナは妖艶な微笑みを浮かべながら、二人を見下ろしていた。


「さあ、勇者様とお姉様、私を倒せるかしら?」


その声には挑発と余裕が漂い、リリアナの黒い翼がゆっくりと広がる。闇の中で、彼女の目が赤く光った瞬間、ラフティとミリアの間に鋭い爪が突如として飛んできた。


「避けろ!」ラフティは瞬時に身を翻し、かろうじてその攻撃を避けた。だが、その一撃が地面に叩きつけられると、床が粉々に砕けるほどの威力だった。


「こんな力を……!」ラフティは息を呑んだ。


「気をつけて!彼女の動きは魔物そのものよ!」ミリアが叫び、剣を握り直す。リリアナのスピードと力は、かつて姉妹であった頃の彼女とは全くの別物だった。彼女は今やサキュバス、悪魔の力を宿していた。


リリアナは冷笑を浮かべ、空中にふわりと舞い上がった。彼女の動きは滑らかで、まるで空そのものと一体化しているかのようだった。彼女は鋭い爪を振り下ろし、地面に魔法陣を描くように高速で飛び回った。


「ラフティ、援護する!」ミリアが前へと踏み出し、炎の剣を一閃させた。リリアナはその一撃を優雅にかわし、逆に爪を振り下ろす。


「遅いわ、お姉様」リリアナの声が低く響いた。ミリアの攻撃は無駄に終わり、彼女の剣がリリアナの髪を掠めただけだった。


「このっ……!」ミリアは焦りを感じながらも、さらに攻撃を続けた。しかしリリアナは舞うようにその攻撃をすべて避け、逆にミリアの隙を突いて攻撃を仕掛けてくる。


「そんな調子じゃ、この私には勝てないわ。サキュバスの力を見せてあげる……!」


リリアナは両腕を広げると、暗闇の中から無数の黒いエネルギーの塊を召喚し、ラフティとミリアへ向けて放った。ラフティはその瞬間、地面に飛び込み、素早く回避するが、その一撃は後ろの壁に衝突し、轟音と共に神殿の一部が崩れ落ちた。


「くそっ、あんな力まで……!」ラフティは叫びながら、リリアナの動きを凝視した。


「ラフティ、連携よ!彼女は空を利用してるから、二方向から攻めるしかないわ!」ミリアが冷静に指示を飛ばす。


「わかった!」ラフティは即座に反応し、ミリアが右側から攻撃を仕掛ける間、左側からリリアナに向かって駆け出した。


ミリアの炎の剣が再び火を吹き、その一撃がリリアナに向けて放たれたが、彼女はその攻撃を紙一重で避ける。その瞬間、ラフティが背後から鋭い刃でリリアナに斬りかかる。


「今だ!」ラフティが力を込めて叫びながら、リリアナの背中に狙いを定めるが、サキュバスの翼が鋼のように硬くなり、その刃を弾き返した。


「甘いわ」リリアナは背中から翼を振り払い、ラフティを後方へ吹き飛ばした。壁に激突するラフティの身体が重く響く。


「ラフティ!」ミリアが焦って彼に駆け寄るが、リリアナはその瞬間を逃さない。彼女は爪を鋭く突き出し、ミリアを追い詰めようとする。


「お姉様、そんな簡単に私に背を向けていいの?」リリアナの声は嘲笑に満ちていた。彼女の爪がミリアの背中に迫る。


しかし、その瞬間、ミリアは反射的に振り返り、剣を全力で振りかざした。その炎がリリアナの爪に触れると、鋭い金属音と共に火花が散った。リリアナは一瞬、驚きの表情を見せるが、すぐに笑みを浮かべる。


「やるじゃない、でもそれだけじゃ私には勝てないわ」


「私は……リリアナを取り戻すために、絶対に諦めない!」ミリアの炎の剣は、より一層燃え輝き、再びリリアナへと向かっていく。


ラフティもまた、痛みに堪えながら立ち上がった。「あの翼をどうにかしないと……」


リリアナの翼が鉄壁のごとく防御に使われている以上、攻撃を当てるのは至難の業だった。しかし、彼らに退路はない。ラフティはミリアの攻撃に連携するように、再び素早くリリアナの隙を狙い始めた。


「ここで終わらせるわけにはいかない……!」

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