第13話 水の神殿
ディアナ村を出てから更に北へと進み続けて2日後、ようやく水の神殿にたどり着いたラフティとミリア。そこに広がっていたのは、彼らが予想していた光景とはまるで異なるものだった。
神殿の入り口に一歩足を踏み入れると、目に飛び込んできたのは、無数の半魚人達の無惨な死体だった。神殿を守護しているはずの彼らが、まるで何かに蹂躙されたかのように、血まみれで倒れている。床や壁は鮮血に染まり、静かだった筈の神殿内部には重苦しい空気が漂っている。
「……何が、あったんだ?」ラフティの声は震えていた。これほどの惨状を目にしたのは初めてだった。戦い慣れた彼ですら、目の前の光景には恐怖を感じずにはいられなかった。手にした短剣が、わずかに震えている。
ミリアもまた、目を見張って立ち尽くしていた。彼女の鋭い瞳は一瞬だけ揺れたが、すぐに決意に満ちた光を取り戻す。「何者かが、彼らを一掃した。リリアナを連れ去った者かもしれない……」
「こんなに強い敵が……果たして俺達だけで、勝てるのか……?」
ラフティは思わず口にした。これまでの戦いでも、危険な敵と戦ってきた。しかし、今回の敵は何かが違う。無数の魔族達を一瞬にして葬り去る圧倒的な力。彼の心に重くのしかかる不安は、次第に自分の無力さへの恐れとなって胸を締め付ける。
「怖いのはわかるわ。でも、この惨状が意味するのは一つよ。リリアナが囚われている場所は、この先だってこと」ミリアは毅然とした表情でラフティに言い放った。「あきらめる? それとも、進む?」
ラフティは深く息を吸い込み、彼女の言葉に意を決した。逃げ出すことなどできない。リリアナを救う為にここまでやってきたのだ、この先にどんな脅威が待ち構えていようが立ち向かわなければならない。それに、ミリアが隣にいる限り、彼は負けられない。
「進むさ。俺達で、リリアナ姫を取り戻すんだ」ラフティは力強く答えた。短剣を握り直し、血まみれの神殿の中をさらに奥へと進む決意を固めた。
神殿の奥には、さらなる脅威が待ち受けている。それでも、ラフティとミリアの心には、共に戦い抜くという決意が芽生えていた。二人は黙って頷き合い、静まり返った血の海の中を踏みしめながら進んでいくのだった。
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