第12話 漆黒の戦い
1.村人達の変貌
村での平和な仮面が剥がれた瞬間、ラフティとミリアの周囲は恐怖と混乱に包まれた。村人達の優しげな表情はすっかり消え失せ、その身体は獣人のような不気味な存在に変わり果てていた。ラフティは目を見張り、言葉を失った。さっきまで微笑んでいた子供達さえ、今は鋭い牙をむき出しにし、獲物を狙う目つきでこちらを見つめていた。
「どうする、ミリア?」ラフティは焦りながらも剣を構えた。
ミリアは落ち着いた声で答えた。「まずは退路を確保しよう。私達二人だけでここに留まるのは危険だ」
しかし、退路はすでに獣人達によって塞がれ逃げ道はない。それに気づいたラフティは覚悟を決めた。「逃げられないなら戦うしかないな……!」
獣人に変わった村人達は、一斉に襲いかかってきた。ラフティはその数に圧倒されながらも、必死で応戦する。彼の動きは俊敏で、まるで踊るかのように短剣を振るい、獣人達を切り倒していった。しかし、次から次へと現れる獣人に徐々に追い詰められていく。
一方で、ミリアはその赤髪を風になびかせながら、炎を宿した剣で獣人達を斬り伏せていく。彼女の剣は一瞬にして炎の刃となり、周囲を焼き尽くすかのように舞う。獣人達はその炎の力に怯み、次々と倒れていくが、その数は衰えることなく続いていた。
「ここで一体何が起こっているんだ!」ラフティは息を切らしながら叫んだ。
「村全体が魔族に支配されていたんだわ…最初から、この歓迎も罠だったのよ!」ラフティとミリアはお互いの背後を守るように獣人達を次々と斬り倒していく。
しかし、その最中、村長の姿をしていた獣人が現れ、二人に向かって叫んだ。「お前達はここで死ぬのだ!」
ミリアが前に出て、ラフティを守るように立ちはだかった。「いいえ、こんなところで私達の旅は終わらせないわ!」
戦いは熾烈を極め、獣人達の猛攻に二人は苦戦していたが、何とか最後の一匹を打ち倒すと、ようやく静けさが戻ってきた。
村は静寂に包まれ、獣人達の姿も消えていった。しかし、その余韻は二人の心に深く刻まれていた。
2.魔族の村との決着後
獣人達を倒した後、ラフティとミリアは崩れた家々の間をゆっくりと歩いていた。かつて人々が笑顔で迎えてくれた村は、もうすっかり静まり返り、死の影が漂っている。倒された獣人の身体が消え去った後も、辺りには彼らの残していった痕跡が鮮明に残っていた。焦げた匂いや、崩れ落ちた家々、そして瓦礫の下から時折見える村人達の遺品が、ラフティの心に重くのしかかる。
ミリアは疲労の色を隠せず、軽く溜息をついた。彼女は何度も自らを奮い立たせ、剣を握りしめる手が震えないよう努めていた。しかし、その強がりがラフティの目に映った時、彼女の心の中にも深い傷が刻まれていることを察することができた。
「……もう行きましょう」ミリアが先に口を開いた。
「そうだな……ここにいても、できる事は何もない」ラフティは頷き、周囲を見渡す。彼の手には、戦いの中で偶然見つけた古びた鎖が握られていた。心の鎖と呼ばれていたが、今の彼にはその意味も、その価値もわからない。ただ戦利品として持ち帰ろうとしただけだ。
「それは何?」ミリアが不思議そうにラフティの手元を見つめた。
「ただの鎖さ。村長の家に祀られていたけど、使えるかどうかもわからないし、別に気にしなくてもいい」ラフティは軽く肩をすくめて答えた。
ミリアはその答えに特に興味を示すこともなく、疲れた顔でただ頷くと、再び北を見据えた。
「リリアナを助けるには、まだまだ道のりは長い。ここで立ち止まっているわけにはいかないわ」彼女の声には決意がこもっていた。
ラフティもまた、同じ方向を見つめながら力強く頷く。「ああ、行こう。リリアナ姫を取り戻すために」
こうして二人は、魔族の村を背にして再び旅路を歩み始めた。
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