第11話 ディアナ村
ラフティとミリアは夜通し山道を進み続け、昼過ぎの太陽が高く昇る中、ようやく小さな村に到着した。
村に入ると、どこかのどかな雰囲気が漂っていた。ラフティとミリアは長旅の疲れから解放されるように、緊張を少しずつ解いていく。村の入口で迎えてくれたディアナ村の村長は年配の男性で、深い皺の間に優しさがにじんでいた。
「ようこそ、旅の方々。ここは小さな村ですが、どうかゆっくりしていってください」
村長の言葉に、ラフティはほっとしたように笑顔を返す。一方、ミリアは少しだけ周囲を警戒しつつも、その場の雰囲気に飲み込まれていく。村は平穏そのもので、鳥のさえずりや子供達の笑い声が耳に響く。誰もが彼らを歓迎しているかのようだった。
村人達は親切で、二人に食事を振る舞い、疲れた身体を休める場所まで用意してくれる。温かな食事を前に、ラフティはすっかり安心しきっていた。
「お二人は旅の途中か?北に向かうということは、水の神殿にでも行くつもりか?」
村長がラフティに問いかけると、ラフティは軽く頷いた。
「そうだよ。ちょっと急いでるんだけど、ありがたい事にここで一晩休ませてもらう事にしたんだ」
「水の神殿には注意することじゃ。最近、あの辺りでは良からぬ噂が立っておるからのぉ……」
村長の言葉に、ミリアは一瞬、目を細めたが、それ以上詮索することはなかった。
村での生活は一見平和そのものだった。ラフティとミリアは歓迎を受け、村の広場では村人達が楽しそうに集まり、子供達は走り回っている。夕食を共にするため、二人は村長の家に招かれる。村長は温かい笑顔を浮かべ、優しい声で「この村は昔から何も変わらない、平和そのものだよ」と語る。しかし、ラフティは何かがおかしいと感じ始めていた。
食卓での会話は普通に思えたが、時折、村人達の目が不自然に光る瞬間があった。ミリアもそれに気づき、目配せをしてラフティに警戒を促す。ラフティはその視線の異様さに胸騒ぎを覚えながらも、ふと村長の家に飾られている不思議な鎖に目が留まる。その鎖は他のものと異なり、まるで光り輝いているかのようで、どこか神秘的な力を秘めているようだった。
「これは何の鎖ですか?」ラフティが尋ねると、村長は少し笑みを浮かべて答える。「それは心の鎖といって、この村を守るために古くから伝わる伝説の遺物じゃ。困難な時には不思議な力を発揮すると言われている」
ラフティはその鎖に強い引力を感じた。まるで自分がその鎖を手に取るべきだと訴えているかのように。
しかし、その夜、事態は急変する。深夜、村の周囲に不穏な気配が漂い始め、月が雲に隠れると同時に村全体に異様な沈黙が訪れる。真夜中、ラフティが目を覚ますと、外から低く唸るような音が聞こえた。外に出ると、村人達の姿が闇に溶け込んでいた。ミリアはすでに剣を手に警戒している。
「村人達の様子がおかしい……何かが起こっている……」ミリアが囁くように言う。
その瞬間、村人達の姿が徐々に変わり始める。穏やかだった笑顔が歪み、彼らの体は獣人のような魔物の形に変わっていく。村人達は、最初からただの人間ではなかったのだ。
「これは罠だった……!」ラフティは声を上げ、ミリアと共に剣を構える。
村の正体が明かされた瞬間、ラフティとミリアはそのまま戦いに巻き込まれることになる。
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