第8話 協力関係
ラフティはリリアナ姫の救出に向かう決意を固め、城下町の出口に向かっていた。辺りには崩れた建物や焼けた家々が並び、生き残りの影はほとんど見当たらない。彼は短剣を腰に収めながらも、常に警戒を怠らなかった。リリアナ姫を救うため、一刻も早く町を出発しなければならないと焦りが募っていた。
「おい少年、どこへ行くんだ?」
その声が聞こえた瞬間、ラフティは反射的に身構えた。振り返ると、そこには先ほど自分を救ってくれた女剣士が立っていた。赤いミディアムヘアが風に揺れ、フード付きの軽装の上に片手剣を持つその姿は、戦いの緊張感がまだ彼女を包んでいるようだった。
「あんたはさっきの……」ラフティは驚きの表情を浮かべながらも、少し安心した様子で言葉を返す。「どうしてあんたがここに?」
「あんたがどこに行くのか少し気になってね。私は、これから魔物に攫われた従妹のリリアナを救出しに水の神殿へ行くつもりだ。あんたもそのつもりなんだろ?」
ラフティは頷いた。「ああ、俺もリリアナ姫を助けに行く。魔物に連れ去られたんだろう?」
「その通りだ」女剣士は一瞬の沈黙の後、しっかりとした目でラフティを見据えた。「お互い、リリアナを救いたいという気持ちは同じだ。それなら一時的に協力しないか?」
ラフティはその提案に少し戸惑った。彼女の強さをよく知っているが故に、自分が彼女の足を引っ張ってしまう心配が頭をよぎった。しかし、彼女がリリアナ姫の従姉妹だと知ってから、彼は思い直した。「わかった。姫を救うためにあんたの力が必要だ」
「ありがとう。」女剣士は微かに笑みを浮かべた。「ところで、自己紹介をしておこうか。私の名前はミリア。リリアナとは従姉妹で、彼女を訪ねるために旅の途中でここに寄った。だが、まさかこんな事になるとは……」
「ミリアか。俺はラフティ、ただの盗賊だよ。誰かを助けたいって思ってるだけの、ちっぽけなやつだ」
ミリアは少し意外そうな表情を浮かべたが、すぐに真剣な目で言った。「盗賊でも、今は関係ない。大事なのは目的が同じということだ」
ラフティは彼女の言葉に同意し、改めて握手を交わした。そして、早く北に向かおうと足を踏み出そうとしたが、ミリアが彼を止めた。
「待て、ラフティ」彼女の声は冷静で、しかしその中には強い意志がこもっていた。「あんたは疲れている。先の戦いで体力を相当消耗しているだろう?今ここで無理に進めば、次の戦闘で確実に命を落とすことになる」
「でも、リリアナ姫が……!」ラフティは焦りを隠せず、眉を寄せた。
「それは私も同じ気持ちだ。だが、考えてもみろ。もしお前がこのまま無茶をして倒れたら、リリアナを助けられるのか?ここは冷静に判断して、最低でも一晩この場所に留まり体力を回復させてから出発すべきだ」
ラフティはその言葉に反論しようとしたが、彼女の正論に口を閉ざした。彼女の言う通り、疲弊したまま魔物との戦いに臨めば、命を落とす事は容易に想像できた。それに何よりミリアの足だけは引っ張りたくないという強い思いが彼の心を落ち着かせた。
「……わかったよ」ラフティは渋々とした様子でうなずいた。「一晩休んでから出発しよう。でも明日の朝一番には出発だ」
「もちろん。そうしよう」ミリアは安堵の表情を浮かべた。
二人は廃墟となった城下町の中で、夜を明かすための場所を探し始めた。
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