第5話 新たな脅威
1.ラフティの覚悟
ラフティは町に到着後すぐに、町を襲うゴブリン達を次々と倒していったが、彼の体力は既に限界を迎え、僅かに残る気力だけで戦っていた。街を包む炎と、逃げ惑う人々の叫びが、彼の耳に響いていた。
「くそっ……このままじゃ……」
汗が額を流れ、息が荒くなってきた。彼の身体は俊敏に動いてはいたが、終わりの見えない戦いに心が折れそうになっていた。
そのとき、重い地響きが彼の耳に届いた。振り向いた瞬間、彼の目に飛び込んできたのは、巨大な影だった。
「な、なんだ……?」
そこに立っていたのは、ミノタウロスだった。筋肉の塊のような体に、巨大な斧を振りかざし、街の一角を蹂躙していた。彼が振るう一撃で、市民達は次々と無惨に斬り殺され、血の匂いがあたり一面の空気を重くしていた。
「まさか、あんな奴が……!」
気力も体力も既に限界だったが、ラフティは短剣を握り直し、立ち向かう事を決意した。しかし、その恐るべき巨体に圧倒され、足がすくむ感覚を覚えた。だが、ここで逃げるわけにはいかない。彼は村を守れなかった後悔を背負い、再び立ち上がった。
「俺が……止めるしかない!」
ラフティは力を振り絞ってミノタウロスに向かって突撃した。だが、その巨体は予想以上に強大で、彼の攻撃はほとんど効いていないかのようだった。ミノタウロスの斧が振り下ろされ、ラフティは寸前でかわしたものの、斧が地面にめり込んだ衝撃でバランスを崩した。
「くっ……!」
素早く身を起こそうとした瞬間、ミノタウロスの巨大な足がラフティの体を蹴り上げ、彼の体は宙に舞った。
「ぐっ……!」
体中に激痛が走り、動けなくなったラフティの目の前に、ミノタウロスが立ちふさがる。斧が再び振り上げられ、彼の目の前に死が迫っていた。
「……ここで終わりなのか?」
その瞬間、風を切る音が響いた。鋭い一撃がミノタウロスの斧を弾き、軌道がわずかにずれた。
「なんだ……?」
ラフティが目を開けると、そこにはフードを被り顔を隠した一人の女剣士が立っていた。片手剣を軽々と扱い、ミノタウロスの注意を引き付けている。
「こいつはあんたじゃ手に負えないわ。私にまかせなさい!」
彼女は軽くラフティを見やりながらも、視線をミノタウロスから外さなかった。ラフティはその一言に安心し、体の力が抜けて地面に倒れ込んだ。
「助かった……」
女剣士は鋭い動きでミノタウロスの攻撃をかわし、片手剣を器用に操りながら反撃を開始した。彼女の剣技は無駄がなく、力強く、まるでダンスを踊るかのように軽やかだった。
2.炎の剣士の登場
女剣士は軽やかなステップでミノタウロスの斧をかわしながら、一瞬だけ目を閉じた。次の瞬間、彼女の剣が炎に包まれた。
「この一撃で……終わらせる!」
彼女の声は冷静だったが、その瞳には決意が宿っていた。剣に宿る炎がミノタウロスの巨体を赤く照らし、その姿はさらに恐ろしいものに映った。ミノタウロスは怒り狂ったかのように斧を振り回し、街の建物を破壊しながら女剣士に迫った。
彼女は冷静に間合いを保ちつつ、鋭くミノタウロスに向かって突き進んだ。だが、彼女が剣を振るう瞬間、ミノタウロスの斧がすさまじい速度で振り下ろされた。斧の刃が地面にめり込み、地面が激しく割れた。その衝撃で女剣士の足元が揺れ、わずかにバランスを崩した。
「……っ!」
その隙を逃さないとばかりに、ミノタウロスの斧が、彼女を狙って再び振りかざされる。だが、彼女はすぐさま体を捻り、なんとか斧の軌道から外れることに成功した。
「焦りは禁物ね……」
女剣士は自分に言い聞かせるように深く息を吸い込むと、ミノタウロスに向かって再び炎の剣を振りかざした。剣と斧が激しくぶつかる度に、炎は斧越しにミノタウロスの厚い皮膚を焦がしていく。しかし、ミノタウロスに痛みを感じる様子はなく、何度も斧を振り上げた。
「こいつは、厄介ね……」
彼女は炎の剣を一瞬見つめ、飛び道具としては使えない自分の魔法に限界を感じていた。近づいて攻撃するしかないが、ミノタウロスの斧を避け続けるのは至難の業だ。彼女は攻撃の隙を伺いながらも、鋭い斧の一撃をかわし続けていた。
その時、ミノタウロスが再び大きく斧を振りかざし、地面に深く突き刺さった瞬間、彼女はその一瞬の隙を逃さずに猛然と突進した。
「今だ……!」
炎の剣が一閃し、ミノタウロスの胸元を深く切り裂いた。炎は瞬く間にミノタウロスの体を焦がし、その巨体が後ずさる。しかし、それでもミノタウロスはまだ倒れない。最後の力を振り絞り、彼女に向かって斧を振り下ろそうとした。
「くっ……!」
彼女は斧の一撃をかわすが、その動きがわずかに遅れた。彼女の肩に斧がかすり、鋭い痛みが走る。それでも彼女は踏みとどまり、片手剣をしっかりと握りしめた。
「これで終わりよ!」
彼女は炎をさらに強く剣に宿らせ、力強くミノタウロスの心臓に突き刺した。剣は一瞬でその体を貫き、全身は炎に包まれ、苦しげに咆哮を上げながら、ミノタウロスはついに地面に崩れ落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます